起業家の「哲学」を見習え

 先週末の予算委員会での遣り取りが火種になって、
 話題に上っているJAL再建に際して国の優遇扱い。
 第一には、公的資金をつぎ込んで再上場を果たしたものの、
 当面は国に税金を納めなくても良いこと。

 さらに、そんな立場であるのに平然と配当を行なう予定で、
 株主の4割近くが日本人ではないことが問題とされています。
 なおかつ、上場直前に(不可解な)増資を行い、
 引き受け先に再建を主導した稲盛和夫氏の創業した、
 京セラが含まれていることも「陰」の部分とされています。

 「陽」としては、JAL再建時にも大いに活用された、
 京セラの経営学「アメーバ経営」が再評価されています。
 会社が大きくなってくると、「大企業病」というか、
 どんどん個人の役割、重要性が曖昧になり、
 「自分、一人が…しても」というような考え方が強くなります。

 社員が数十人の頃には、みんなが仲間同士で団結していたものが、
 100人そして何百人という規模になると、
 個々の顔も見えず、いくら頑張っても日の目を見ない人も出てきます。

 稲盛氏は、一人ひとりの能力を、十分に発揮してもらえるには
 体制をどうしたらいいのか考えました。
 考えぬいた結果、創業時代に戻ってしまえば良いことに気付いたのです。
 「小さな会社」「周りの事を気遣う」「大家族のような経営」
 創業当時の会社の良い所を生かし、
 社員みんなが「小さな会社の経営者」になるようにしたのです。

 京セラは「小さな会社」の寄せ集まり、
 当然の事ながら自分の会社の利益を上げないといけないのですが、
 メンバー(社員)や他のセクション(仕入先、売上先)
 のことも考えないといけません。
 自分が前面に出すぎると、いずれみんなからそっぽを向かれてしまいます。
 稲盛氏は「利他の心」を持つことを、社員に説いて回ったのです。

 京セラは、「セラミック」を武器にして成長を遂げていきますが、
 いくら良い武器を持っていても、それを使いこなせる「人」がいなくては、
 経営は成り立っていかなかったはずです。
 「アメーバ経営」にも見られるように、
 日本の経営には「家族主義」的な発想が流れています。

 戦後の経営に多大な影響を与えた人物に、安岡正篤(まさひろ)氏がいます。
 安岡氏は、政界、財界を問わず、日本を率いていく人達に、
 いわゆる「帝王学」を叩き込んだのです。
 その教えを請うた人の中には、
 吉田茂、佐藤栄作、田中角栄などの総理大臣経験者や
 平岩外四、牛尾治朗、江戸英雄の名経営者が名前を連ねます。

 「家族主義」のもととなる儒学の考え方に立ち、
 中国の長い歴史に生きた指導者や思想家の生き方、
 考え方から原理原則となる「帝王学」まとめ、
 その時代の解釈を加えて、日本のトップに伝えたのです。

 また、安岡氏の考え方には、中国の儒学者 王陽明(おうようめい)が
 興した哲学が流れていています。
 陽明は、学問であった儒学を、
 実践に対応できるものとして「陽明学」を作り上げます。

 彼は、若くして高級官僚の試験に受かったのですが、
 上司の批判をして、僻地に左遷されてしまいます。
 しかし、彼はこの時期を好機と思い、自らの思考を重ねながら、
 新しい学問「陽明学」を誕生させたのです。

 「陽明学」から「帝王学」、
 このように脈々と連なる「哲学」があったからこそ、
 京セラの「アメーバ経営」が作り上げられたのです。

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