琵琶湖の湖北、滋賀県長浜市に新しい博物館がお目見えしました。
「ヤンマーミュージアム」、その名が表すとおり、ディーゼル発動機、
農業・建設機器、船舶を扱うヤンマーが運営するものです。
昨年、創業100年を迎えた事を記念し、
創業者である山岡孫吉氏が生まれ育ったことから、この地が選ばれたそうです。
人気はミニショベルなど、同社の製品を実際に体験できるコーナーです。
ミニショベルの運転コーナーでは、
建設現場で使われるミニショベルを操作して、ボールすくいが楽しめ。
小型プレジャーボートの体験コーナーでは、
操船の疑似運転が楽しめるようになってるそうです。
長浜市は、地域経済の復興と、後世へ伝統をつなげていくため、
黒壁地区を中心とした観光に力を注いでいます。
当初は、会社の歴史年表の展示しか考えていなかったそうですが、
社内から同地区の観光に役にたてるのではと、声が上がり。
子供たちが楽しめる体験スペースを設けた博物館となりました。
ヤンマーは、山岡氏が幼い頃から丁稚奉公に出る苦労をし、
ガス会社の工事作業員に雇われたことがきっかけで、この道に進むようになります。
時代は、大阪市内にガス管の敷設が進み、工場などはそれまでの蒸気機関から、
ガスへ切り替えが進む最中でした。
蒸気機関は、広い据付場所が必要なうえに、操作も難しいものでした。
便利さから、ガスの普及が進むにつれて、小さな馬力の動力を使っていた町工場や、
豆腐屋までガスに乗り換えるようになりました。
たまたま、工事に出かけた会社の倉庫で、売れ残りのガス用ゴム管の山を目にします。
理由を聞いてみると、海外から輸入されているゴム管が、
輸送途中に劣化してしまい、ガス会社に納品を断られたというのです。
そこで、売れ残りのゴム管を売りさばく手伝いをはじめたところ、
在庫はきれいに処分できたのです。
山岡氏は、その手数料として手にした資金をもとに、
ゴム管の販売とガスレンジの修理業として商売を始めます。
その後、動力用エンジンの販売などを行っていましたが、
商品を右から左へ流すだけの商売には、嫌気がさしてきました。
お客に誇れるような製品を作り、胸を張って値段をつけられるような、
仕事がしたいと考え、発動機の製作を手がけるようになります。
農業用の、もみすり機、動力精米機、水揚げポンプなどを製作して販売を始めます。
ある時、ドイツで初めてディーゼルエンジンを目にし、
あまりに優れた性能に、その虜になってしまいます。
その後は、とりつかれた様にエンジンの研究に没頭していくようになります。
2年がかりで、念願のディーゼルエンジンを完成させ、
現在の礎を築くことになるのです。
ヤンマーは、何処にも引けをとらない製品を作るという精神から、
84年から南極にある昭和基地の発電機用として、
ディーゼルエンジンを送り出しています。
極寒のうえ、絶対に止めることは許されない使命を受ける姿勢は、
その自信の表れといえます。