小売店の店先に並ぶ商品には、手の込んだ細工やアイテムの多さなど、
それなりに高い利潤があるからこそ実現している品揃えがあります。
ところが、大量販売を前提として、桁違いの低価格商品が登場してくると、
そのような商品は店先から姿を消すことになってしまいます。
一時期は、一本○○万円といった値段を競い合う「ビンテージもの」や
刺繍が施された「プレミアムジーンズ」も登場して、
人気が過熱していたジーンズ人気は、景気の後退とともに、
リーズナブルで着まわしの効くアイテムに移ってしまいました。
さらに、ユニクロが格安ジーンズを発売したことが発端となって、
総合スーパーなどもこぞってプライベートブランドを品揃え、
お祭りのような安売り合戦になった時から流れが変わってしまったのです。
その間、繊維大手が岡山県のデニム糸工場を閉鎖し、
メーカーのリーバイスは、10年ぶりに赤字の決算に陥るなど
ジーンズ業界には、暗雲が垂れ込めていましたが、11年にはボブソンが倒産し、
12年にはエドウインが不正経理をしていたことが公表になりました。
各社とも、価格競争の中に飲み込まれている状況から逃れようと、
方向転換をはじめています。
リーバイスは、スーパー向けの商品の取り扱いを止め、
1万円以上の商品に品揃えを絞り込むことにしています。
ジーンズ業界が急激に悪くなった原因はブームの陰りのほか、
甘い取引方法にあったのではないかといわれています。
メーカーは、商品を納品すると同時に、
小売店に販売するのを原則としていました。
ジーンズの人気が高くなるにつれて、メーカー同士の売上競争、
売り場の取り合いが始まります。
やがて、少しでも良い場所、品揃えを増やそうと、
小売店の仕入れ能力以上に商品を納めるようになります。
その分については、小売店が販売できた分だけ、
メーカーから仕入れることになりますが、
売れ残った分は返品となりメーカーに返されてきます。
販売時期を逸して戻ってきた商品は、
定価では売ることができなくなり、バーゲン販売することになってしまうのです。
ファッション業界であれば、売れ残りはシーズンごとに値引き販売を行いますし、
食品、飲食業界であれば、販売期限ごとに商品の廃棄損が生じます。
それぞれ、納品した商品を定価で完売することは、現実には不可能なので、
ある程度の見切りや廃棄を見込んでおかなければなりません。
値引きは利益を薄くすることになりますし、
原価を割り込んだ値引きや、廃棄損は、
定価販売した分の利益を削るのと同じことになります。
このように、在庫には必ずロスというものが生じるということを、
肝に銘じておかなければなりません。