連日、各地で最高気温が更新されたという話題が賑わしています。
何週間も続く、うだる様な暑さ、いつになったら止むのか、
心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。
ところで、暑いからと言ってクーラーや扇風機に当りつづけていると、
風邪をひいたり、お腹をこわしたりと決して良くありません。
節電することも大事なので、文明の時計を少し巻き戻して、
電化製品に頼り切った生活を見直してみるのもいいものです。
昔ながらの、手軽に暑さを鎮めるものとして、
氷菓やアイスクリームが飛ぶように売れているそうです。
ご存知のとおり、かき氷を掻きこんだ時のように、
こめかみに走る冷たさは一瞬で暑さを吹き飛ばしてくれます。
古代より、人々は氷や雪を食料の保存用に利用していて、
いつしか、氷や雪を貯蔵して夏に食べるようになったそうですが、
現在のようにお菓子としてではなく、兵士の士気を高めるための、
「栄養ドリンク」に近いものだったそうです。
また、どんなに節電が大事と訴えられても、
熱帯夜に全くの冷房なしでは、寝不足になるのが必至です。
そこで、快眠グッズとして重宝されているのが保冷枕です。
後頭部は熱を感じやすいので、その部分を冷やすと涼しさを感じて効果的なのです。
保冷枕「アイスノン」は65年に発売して以来、
半世紀近くのロングセラーとなっています。
長らく、風邪などで熱が出たときに、頭を冷やす道具は、
氷を詰めて使う氷嚢や氷枕が使われていました。
防虫剤や防臭剤メーカーである白元が、「アイスノン」を発売して以来、
頭を冷やす道具として保冷枕は一気に家庭に広がりました。
白元の創業者の鎌田 泉氏は、大戦時に衛生兵として出兵した経験を持っていました。
戦後、取引のある商社マンから、アメリカでは魚を運搬するときの保冷用に、
氷ではなく保冷剤を使っているという話を耳にします。
この話を聞いた鎌田氏は、戦地でゴム製の氷枕に氷を砕いて詰め込み、
患者の熱を冷ましていたことを思い出したのです。
この作業は結構面倒で、もっと簡単にできる方法が、
ないものだろうかと考えていたのでした。
そして、保冷剤を枕に利用することが頭をよぎります。
人が利用するためには、長い時間冷たさを保つ必要があり、
氷のように硬いものでなく柔らかさが求められました。
試行錯誤の後、寒いときに体を温めるときに飲む、葛湯からヒントを得ます。
熱を逃がしにくく熱さが長続きする葛湯のように、
保冷枕の中身をゼリー状にすることにより、
冷たさの持続と柔らかさの両立を実現させたのです
発熱時の保冷枕として売り出したのですが、
発売された65年の夏が猛暑だったことも幸いして、
安眠対策として利用する人や、飲み物の保冷に利用されたのでした。
こうして、予想しないヒットに恵まれ「アイスノン」は、
保冷剤市場をリードしていくのです。
保冷枕が、大ヒットした背景には、電化製品の普及があります。
50年代に入り、家庭に電化製品が揃っていく中で、
洗濯機や炊飯器と並び、冷蔵庫も家庭に浸透していったのです。
氷はお金を出して買ってくるものだったものが、
水を凍らせれば口にすることができる日常的なものになりました。
家庭では、物を凍らせることができなかった時代から、
手軽に冷たさを実感できるようになったのです。
「アイスノン」は、そんな世の中の移り変わりの中から、
生まれてきたものだったのです。