「収入は少なめ、経費は多め」に見積るのが鉄則

 電機メーカー ソニーの迷走が止まりません。
 業績悪化を受け、かつて「VAIO」という一大ブランドを築き上げた、
 パソコン事業からの撤退を発表するなど、
 事業体制の見直しを進めているところでした。

 その中核に据えていた、スマホ事業が見通しどおり進まず、
 モバイル関連の子会社に関する投資の評価が問題になったそうです。
 子会社とする際に、将来の価値増大を期待して支出した金額が、
 その価値を見込めないとして損失処理しなければならなくなったそうです。

 当面は、会社が発展する礎となったオーディオ事業に活路を求め、
 ハイレゾ音源仕様のウォークマンを発売し起死回生を狙っています。
 ポータブル・オーディオに飽き足らないユーザーの受け皿として、
 ニーズを取り込み次のステップへと結び付けたいところです。

 世紀の発明家として称された盛田昭夫氏は、
 テープレコーダやトランジスタラジオを開発し、
 ソニーを世界的な企業に育て上げた創業者の一人です。
 しかし、黎明期には開発費の捻出には随分苦労し、頭を悩まされたのでした。

 研究開発に莫大な支出が必要なことから、
 資金繰りに関しては銀行に頼りきってばかりでした。
 しかし、銀行の方でも貸し出す資金に余裕が無く、
 満足できるような額の借入れが出来ない状態が続いていたのです。 

 創立15周年を前にし、当時副社長であった盛田昭夫氏の耳に入ってきたのは、
 アメリカで株式を発行して資金を調達できるというものでした。
 日本の株式を預託証券という別の形にして、
 アメリカで売買出来るようにする新しい試みだったのです。

 その第一号に選ばれて、喜んでいたのも束の間、
 日本とアメリカの会計処理のギャップに頭を悩まされることになるのです。
 当時の日本では、公開企業でも決算の計算について
 「利益を平準化」することを、抵抗なく行っていました。
 つまり、業績がなだらかな右肩上がりになるように、
 経費にする金額を多くしたり少なくしたりする調整を行っていたのです。

 ところが、アメリカの会計基準に合わせようとすると、
 そういうことは一切認められなくなるし、将来発生する見込みのあるものは、
 経費として全額計上しなくてはならないと言うのです。
 また、連結決算という概念を聞いたのもその時が始めてでした。

 このことは、今回の損失処理にも関連する、
 「投資」という支出に対する考え方の違いです。
 研究に携わる側にとってみれば、将来、何十倍、何百倍という、
 膨大な利益をもたらしてくれる、価値ある資産のはずです。

 一方、投資家の立場からすると、海のものとも山のものともわからない、
 成功しなければ、只のお金の無駄遣い。
 運良く成功まで辿りつけても、こちらより安い金額で同業が提供してしまえば、
 こちらには利益が残る確証はないのです。

 「一発屋」的な発想でビジネスを行うならともかく、
 そうでなくても着実に経営を続けられるようにするには、
 資金の回収をどのようにするか頭に描いておかなければいけません。
 こんな時、たとえ少なくても、毎日欠かさず入ってくる
 「日銭」が経営のカギとなります。

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