返品、売れ残りを克服してビジネスにつなげる

 景気の回復の波は、一進一退を続けている模様で、
 年末年始にお会いする方々との会話もこの話題から始まります。
 いいお話といえば、百貨店の年末商戦は軒並み好調で、
 時計や貴金属は、消費税の駆け込み需要を上回る水準だったそうです。

 海を隔てたアメリカでは、小売業界のクリスマス期間を含めた年末商戦は、
 こちらとは比べ物にならないくらい激しいものです。
 そして、峠を越え期待を上回った売上にほっと一息ついたのも束の間、
 次に待ち受けているのは、購入品を返品しにきた人の列なのです。

 アメリカの小売業界では、各社とも返品に対する基準は低く、
 特価品などは、とりあえず手に入れておいて、
 気に入らなければ返品するというのは普通の事らしいのです。

 返品の額は年間売り上げのほぼ1カ月分に相当し、
 12月から1月に集中するというのですから、その作業も馬鹿にはなりません。
 こうした長年の習慣に対応し、大手では返品専用の自社センターなどを持ち、
 戻ってきた商品の物流も、上手く商品管理に組み込んでいるそうです。
 
 なんの変哲もない店構えでありながら、
 着実に利益を貯められることを強みとしているのが、
 衣料品チェーンストアの「しまむら」です。
 郊外に多くの店舗を構えることにより生じるコスト高を、
 他には決してマネできない仕組みを完成させ解消しているのです。

 しまむらは創業者の島村恒俊氏が、呉服を中心に既製服や
 オーダー服を取り扱っていた呉服店が始まりとしています。
 品揃えを日常衣料品中心に切り替えたのと同時期から
 多店舗展開することを考え始め、そして、チェーン化に力を発揮したのが、
 後の社長となる藤原秀次郎氏だったのです。

 店舗をチェーン化するに当たって問題となるのが、
 衣料品特有の色違い、柄違い、サイズ違いなど種類の多い商品の管理と
 売れ残りが出ないよう、店舗間で商品を行き来させる物流を、
 どのように効率よくするかということでした。

 低価格を売り物にしている、しまむらでは仕入れる商品はすべて買い取りです。
 スーパーのように売れ残ったからといって、メーカーへ返品することはできません、
 よって、シーズン内に売り切れないということは、
 その分の在庫がコストになってしまうということなのです。

 加えて、婦人ファッションの宿命ともいえる品揃えの多さがあります。
 標準的な大きさの店舗では、4~5万アイテムを展開していますが、
 売れ残りを出さないためには、商品の売れ行きを常に管理して、
 絶えず売れる店舗へ商品を移動して消化させているのです。

 しまむらでは、チェーン化を進めた早い段階で、
 コンピュータによる在庫管理システムを導入しました。
 本部で商品の売れ行きを把握して、
 なんと1枚単位で店舗間を移動できるようにしているのです。

 そして、この移動を可能にしているのが、自社便で作り上げた物流体制です。
 外部に委託していては、到底叶えられそうにない、
 スピーディできめ細かな運送と維持費の安さの両方を兼ね備えています。

 島村氏がチェーン化を考え始めた1970年前後に、
 スーパーを展開するには後発であり勝ち目がないと感じ。
 そこで、食料品に比べ利益率の高かったスーパーの衣料品部門を、
 単独で展開すればビジネスとして成り立つのではないかと考えたのが始まりでした。

 お話した衣料品特有の理由から、同業者が手を出さなかった分野でしたが、
 非効率という原因をひとつひとつ解消してきたのが、しまむらだったのです。

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