事業の「旬」は案外短い、心構えが肝心

 日本人選手の活躍で業績好調の追い風を受けているのが、
 スポーツ用品メーカーのヨネックスです。
 世界選手権クラスの大会で、日本代表が上位争いを演じる中、
 バトミントン人気は、うなぎのぼりで競技人口が増えています。

 バトミントンやテニス用品では業界トップを誇る同社ですが、
 他の分野での知名度はいまひとつでした。
 小学生時代に、子供向けクラブの種類が少なくて困っていた、
 石川親子のサポートをしていた経緯から08年にスポンサー契約します。

 「遼クン」効果で、インナーウエアは契約期間中に3倍、
 ゴルフ事業全体で約30億円まで売上を伸ばすことは出来ました。
 一転、ゴルフ市場全体が地盤沈下しかけている中、
 商品開発でも競技路線に走りすぎた反省から業績挽回に躍起です。

 ヨネックスの創業者 米山稔氏が家業の木工業所を引き継いだのは21歳。
 盛んになりつつあった遠洋漁業に目をつけ、サケ、マス漁に使う
 魚網の浮きの製作に乗り出しました。
 作り始めてから5、6年経って、受注も順調に伸びてきた時のことです。

 いつもなら、注文が入る時期になっても、全く音沙汰が無い。
 心配になって問い合わせたところ、
 「今年からは木製の浮きは使わない」。
 現地に渡って調べてみると、魚網はナイロン製に変わり
 それに合わせて、浮きもプラスチック製になっていたのでした。
 途端に、売れ残りの在庫を抱えて途方に暮れてしまいます。
 
 木工の技術を生かせる事業はないかと探し歩きました。
 ブームを迎えつつあったバトミントンの、
 ラケット製作の下請けの仕事が見つかりました。
 納品先から製品を評価され、順風満帆であるかと思った矢先のことです。
 突然、納品先が倒産したと連絡が入りました。

 国内での競争激化に加えて、台湾製の安価なラケットが市場に入ってきて、
 納品先も安売りに走り、資金繰りが悪くなっていたのでした。
 債権者集会で、出席者から掛けられた一言で、道が開けた。
 「自分のブランドでラケットを売ったらどうか」

 このことがきっかけで、ヨネックスは自社ブランドの
 バトミントン用ラケットの販売に取り掛かります。
 レジャー用のラケットは、台湾製に押されて苦戦が予想される。
 高い性能が要求される競技用に絞って事業に乗り出すことに決めました。

 当時、有名選手のラケットはイギリス製でした。
 どうにかして、販路を確保できないかと、
 外国のメーカーとの提携の話も考えましたが上手くいきませんでした。
 同じような製品を作ろうにも、
 特許の壁が立ちはだかり不可能に近かったのです。
 
 考えあぐねた末に出てきたのは、
 シャフトとフレームをT字型のジョイントでつなぎ合わせる方法でした。
 この新しい形のラケットが、ヨネックスが自社ブランドの販売を広げる
 足がかりとなったのでした。

 魚網の浮きの製作に始まり、バトミントン、テニス、ゴルフ、
 スノーボードと、順調に事業を拡大してきたように見えても、
 実際はチャンスとピンチの連続でした。

 成長の見込める事業の「旬」は案外短いものです。
 米山氏のように、ピンチを乗り切るのは至難の技、
 「儲かる」時には、「貯める」を心がけて、
 イザというときに備えましょう。

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