食品大手のハウス食品が、カレーチェーンCoCo壱番屋の株式を、
過半数取得する予定だと発表しました。
これまでも、ハウス食品がカレールーなどの原材料を提供していて、
両社は深い関係にありましたが、
海外出店を加速するため子会社化を選んだということです。
国内だけでなく、海外展開にも力を注いでいるCoCo壱番屋、
タイでは日本食レストランとして人気が定着しています。
ファストフードに近い感覚で利用される国内と大きく違うのは、
カップルのデートや商談に好んで利用されるということです。
日本との賃金格差が、4~5倍の開きがあるタイでは、
標準的なカレーが3000円の高価メニューとなってしまいます。
そこで、高級イメージを定着させるため、
照明を少し落とし高級感のある内装にしています。
日本の店舗のような一人向けカウンターはなく、
ゆったり食事をしてもらえるようにテーブル席が主体です。
くわえて、出店は高級デパートなど超一等地中心だそうです。
誰でも真似が出来るはずのカレー専門店に、
屋台骨を揺るがすほどの強豪が登場しなかったことを、
創業者の宗次徳二氏は、ソフト(面)の質が影響していると語っています。
愛知県の小さな町で、カレーの専門店として創業したCoCo壱番屋、
真似るのは簡単と、大小様々な競争相手が現れましたが、
ついに肩を並べる相手は残れませんでした。
しかし、一度だけ、同社など一息で飛ばされそうな、
大手企業が参入してきた事がありました。
カレーやお米など、その気になればいつでも手に入れることができる材料です、
作り方も主婦のほうが上手なほどで、たいした技術は必要ありません。
メニューの構成や品揃え、価格設定、販促の仕方など、
大手ならばお手のものであるはずです。
更に、店舗の内外装についても、真似することはいとも簡単、
それ以上のデザインを考えることも出来なくはないのです。
お金さえかければ、表面的なことはそっくり真似することはできます。
どうしても競合が真似できないこと、それはソフトです。
宗次氏がカレー専門店を始める前に喫茶店を開いていた当時から、
長年にわたり培った「お客様第一主義」は一朝一夕には手に入りません。
カレー専門店を始める前に開いていた喫茶店では、
名古屋名物の(無料)モーニング・サービスの提供はしなかったのです。
トーストやサラダ、ピーナッツなども、全て「有料」としたのです、
その事に文句をつけるお客はいましたが、それでも店は繁盛しました。
また、一号店をオープンしてから長い間、
店を構えられるのは一流には程遠い、ほとんどが二流以下の場所でした。
さらに、良い場所が手に入らない代わりに、派手に宣伝をしたいと思っても、
先立つ資金のゆとりもなく断念せざるを得ませんでした。
無いない尽くしの苦肉の策として、
笑顔の対応や丁寧な言葉遣い、感謝を込めた接客態度など、
来店して下さったお客様に出来る限り満足してもらえるよう工夫を重ねたのです。
そのことがクチコミで伝わり、店を支えたのは言うまでもありません。
辛い思い、苦い経験を経て体で学んだ、経営のノウハウは、
海外展開にも生かされています。
成功体験があるからといって、自己流をごり押しで進めるのではなく、
顧客が求めているのは何かを、真剣に考えてこそベストなものが見つかるのです。