上場企業が決算発表を行う時期を目前にして、
巨艦東芝は濃霧の中をさまよい続けています。
とりあえずは、目の前の障害を乗り越えて進み続けるしかないと、
事業部門ごとに分社化すると発表しました。
先立つこと、東芝が財務体質を改善するため、
医療機器子会社を売却すると決めたのは昨年の事です。
それを受けたのが、精密機器メーカーのキヤノンです、
6,600億円の大金を掛けた決断でありました。
新しい技術を目指し、常にチャレンジし続けて80年、
創業当初から、理想を追い求めてきました。
医療機器はキヤノンが新規事業の柱と掲げるものの1つで、
画像診断装置で世界大手3社に入ることを目標にチャレンジします。
キヤノン創業者の御手洗毅氏は、経営には全く素人な産婦人科医でした。
日赤病院の勤務医をしていた時、酒を飲みながらの友人との会話。
「病院で使う顕微鏡がドイツ製であることを嘆いて、
日本は造船、紡績に比べて、精密機械がまったく劣っている。」
「他がやらないなら、自分たちでドイツ製に負けないようなカメラを作ろう。」
酔いが回った勢いで始まったのがきっかけ、それがキヤノンだったのです。
最初は経営に参加する気持ちも少なく、
投資家の一人として参加したつもりが、
第二次大戦の戦時下、経営幹部が出征したかわりに、
やむなく代わりに社長につくことになりました。
経営の経験のないドクターは、理想が先行するばかり、
向こう見ずとも言える程、徹底したものでした。
終戦後の混乱期、身近な物の生産に多くの企業が力を入れている最中
「打倒、ライカ(ドイツの有名カメラメーカー)」のスローガンの下、
カメラ生産に専念したのです。
そして、世界一のカメラ・メーカーになることを目指して、
時代の一歩も二歩も先を見て突き進んできました。
将来に備えて開発してきた技術が、その時になって実りを結ぶのです。
時代の先を見て、商品(技術)を開発して行くことは、
今のベンチャーにも、そっくりそのまま当てはまります。
ベンチャーの成功は100にひとつ、
1000にひとつと言われていますが、
多くのベンチャーは、商品化する一歩先の技術に目が向きすぎ、
その次の手立てが講じられていません。
結果、たとえ目指している商品に成功してもしなくても、
そのとき限りで事業が止まってしまうことも少なくありません。
新しい技術(商品)の開発には、長い年月がかかります、
一歩先を目指していては、完成する頃には時代遅れに。
また、技術の研究は、その次のいくつもの
新しい技術のきっかけになります。
そのような、技術の連鎖を生かして、
先を見越した理想を求めていくことが大切ですね。
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