借金頼みの投資は良く考えた後で

 年末が近づき、今年を表す言葉やランキングがいろいろな分野から発表されます。
 出版分野では「九十歳。何がめでたい」がトップでしたが、
 意外なところでは、漢字ドリルの概念を破った小学生向けの「うんこ漢字ドリル」が、
 累計発行部数280万部に迫り4位となっています。

 さまざまな点で話題となる作品が多い反面、
 電子化の影響を受けて出版業界は慢性的な不況が続いています。
 かつてのロングセラーも、休刊となるニュースも後が絶たず、
 編集に係わる人材やノウハウの流出が心配されています。

 そんな中、DVDレンタルや書籍などを販売する「TSUTAYA」が、
 ファッション雑誌を出版する「主婦の友社」を傘下に収めることを発表しました。
 主婦の友社は、大正6年に女性誌の先駆けである「主婦の友」を発行していましたが、
 時代の波に逆らえず2008年に91年間の歴史に幕を下ろし、
 大日本印刷の子会社となっていました。

 主婦の友は創業者 石川武美氏が、
 主婦の友社の前身である東京家政研究会から創刊したロングセラーです。
 石川氏の出版との出会いは、小学校時代の恩師を頼りに、
 ひとり上京してきたことからは始まります。
 恩師が知り合いを頼って、彼に紹介したのが、出版社だったのです。
 勤め先で、アメリカのH・グリーレーの伝記を読み、
 出版業に興味を持つようになりました。

 明治の後期、他社で発行された女性誌の人気に目をつけて、
 勤めている出版社では新しく女性誌を創刊することになります。
 思惑通りとはいかず、創刊号は半分以上が返品されることになってしまいますが、
 この本の発行に携わったことで、
 石川氏は女性誌の道に足を踏み入れることになったのです。

 26歳の時、どうしても独立の気持ちを抑えることが出来ず、
 青年向けの雑誌「国民倶楽部」を出します。
 しかし、部数は思ったように伸びず、
 印刷会社に借金を残してしまうことになります。
 彼は、志だけで成功するほど、甘いものでないことを思い知るのでした。

 この苦い経験から、「主婦の友」を発行する前には、
 「貯金の出来る生活法」と「実験千種・手軽でうまい経済料理」の二冊の
 実用本を出し、軍資金を稼ぎました。

 発行に際しては、新聞広告を使って大々的に宣伝を行いました。
 そのお陰もあり、創刊号から大好評で、
 全国から追加の注文が相次ぐのですが、先の失敗の思いから、増刷には慎重でいました。
 2号、3号と少しずつ部数を増やすにとどめていましたが、
 年末号の2万部でも品不足であったため、新年号で3万部にしたところ、
 3分の1が返品になる有り様でした。

 このことで、また印刷会社などに借金を作ってしまうことになったのです。
 そして、石川氏は同じ失敗をくりかえした教訓から、
 「どんなに苦しくても、決して借金はしない」ことを経営の鉄則としたのです。

 彼が、借金をすることを嫌ったのは、
 出版業というものが人気に左右されることを良くわかっていたからではないでしょうか。
 「アタリ」もあれば「ハズレ」もある。
 そんな、賭けのような商売は、借金をしてまで事業を拡大すると、
 失敗したときには、その返済に何年も掛かってしまうことになるのです。

 開業や新規事業で投資を行うときには、その内容をよく吟味して、
 確実性の低いものには、手元資金の範囲内で行うように心がけましょう。
 それが安定経営につながることになるのです。

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発 行 元:シモヤマ会計事務所(下山弘一税理士事務所)
〒604-8471 京都府京都市中京区西ノ京中御門東町101
TEL 075-813-4850
発 行 人:下山弘一

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