お知らせ

 今回は相談事例を通じて、特別縁故者について、ご紹介します。

 最近夫が死亡しました。私達は、長らく夫婦として暮らしてきましたが、籍は入れておりません。私達の間に子はありませんし、夫の両親は既に他界しており、兄弟もおりませんので、夫の相続人は誰もいないと思うのですが、相続人がいない場合は、財産は国へ帰属すると聞きました。私が財産をもらう方法はあるのでしょうか。

 家庭裁判所に対して特別縁故者の申立をし、裁判所に認められることによって、国へ帰属させることなく財産を取得することができます(民法第958条の3)。

 相続人が不存在の場合、原則として亡くなった方の財産は国庫に帰属します。しかし、家庭裁判所の審判により特別縁故者と認められることによって、その財産を取得することができます。特別縁故者とは、「被相続人と特別の関係(縁故)にあった者」を指し、その範囲は次の通りです。

1.被相続人と生計を同じくしていた者
 事実上の夫婦関係にある内縁の夫や妻、事実上の養子関係にある者などがこれに当たります。
2.被相続人の療養看護に努めた者
 生計を同じくはしていなかったものの、療養看護に力を尽くした親族や隣人などがこれに当たります。
3.その他特別の縁故があった者
 上記1、2に準じて、被相続人との間に精神的、物質的な交流関係にあった者がこれに当たります。(大阪高裁昭和46年5月18日)

 今回は被相続人と生計を同じくしていた者に該当するため、特別縁故者の審判がされる事案と考えられます。ただし、申立があった場合に限り、家庭裁判所は相続財産の全部または一部を分与するかどうかを決定するため、特別縁故者として財産を取得したいときは必ず申立をする必要があります。
 なお、特別縁故者への財産の分与は、相続人がないことが前提となりますので、特別縁故者の申立を行う前に相続人を探すための手続きが必要となります。

 相続人を探す手続きや、特別縁故者の申立は、ともに期限などが細かく規定されておりますので、申立をされる際には専門家へご相談されることをおすすめします。

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 相続税を計算する上で、具体的にどのようなものが葬式費用として財産から控除できるのでしょうか?

 相続税の申告書を作成するにあたり、必要書類等を収集しています。葬式費用については、相続税の計算上、財産から控除できるものとできないものがあると聞きました。具体的にどのようなものが控除できるのか、教えてください。

 相続人等が負担した「葬式費用」は、相続税の計算上、財産から控除します。ただし、この「葬式費用」は限定されており、例えば相続人等が負担した通夜や告別式の費用は「葬式費用」となりますが、香典返しの費用は「葬式費用」に該当しません。

 葬式費用は亡くなった人(以下、被相続人)が負担するものではありませんが、相続が発生することによって必然的に生ずる費用ですので、相続人等が負担した一定の「葬式費用」は、相続税を計算する上で、財産から控除します。

 この場合の「葬式費用」は、以下のとおり列挙されており、具体例は末尾のとおりです。

 

1.葬式費用となるもの
  1. ①葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式を行うものにあっては、その両者の費用)
  2. ②葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
  3. ③①又は②で掲げるものの他、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
  4. ④死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

 

2.葬式費用でないもの
  1. ①香典返戻費用
  2. ②墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
  3. ③法会に要する費用
  4. ④医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

 

3.葬式費用となるかどうかの具体例
内容 葬式費用に
・該当→○
・非該当→×
備考
病院や自宅から葬儀会場までの回送費

通夜、告別式の費用

葬儀社への支払いの他、当日に通常要する飲食代、車代、お布施等も○
火葬料

通夜のふるまい

式場のお料理のみならず、近くのスーパーなどで購入した食事・菓子類も○

位牌

×

礼服のレンタル料、着付け代

×

供花

○(※1)

(※1)相続人以外からの供花は×

初七日法要費用

×(※2)

(※2)告別式当日に初七日も行う場合は〇

墓地、墓石の購入費用

×

粗供養(香典返し)

×(※3)

(※3)会葬御礼として通夜や告別式の当日に参列者全員に配るものは〇

 

 葬式費用については、宗教や地域的慣習、また被相続人の職業や社会的地位などによって、規模や必要な費用などが大きく異なります。また、上記以外でも葬式費用になると考えられるものもあります。判断に迷った場合には、当事務所へお問い合わせください。

<参考文献>
 相法13、相基通13-4、13-5、国税庁HP

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