お知らせ

 今回は相談事例を通じて、遺産分割協議が不成立の場合の対応方法についてご紹介します。

 父親が亡くなり、兄弟で遺産の分け方を決めようとしていたのですが、皆、感情的になるばかりで自分たちではどうにも話がまとまりません。どうすればよいのでしょうか。

 相続人間で遺産分割の協議が整わない場合には、家庭裁判所に分割を決めてもらうよう請求することができます。

 家庭裁判所での遺産分割手続きには、「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2種類があります。  

 遺産分割調停が話し合いによる相続人間の自主的な解決を目的とするものであるのに対し、遺産分割審判は、裁判により強制的に分け方を決めるものになります。  
 遺産分割を家庭裁判所に求める場合、その旨を申し立てる必要があります。どちらを申し立てるのかは自由とされていますが、審判を求めた場合でも裁判所の判断で調停を行うことができ、まずは調停をするというのが一般的です。また、裁判所の手続といっても遺産について調べてもらえる訳ではないので、どのような遺産があるのか等の資料は各共同相続人が用意します。  

 調停の手続は、調停委員と裁判官が相続人の話を聞き、対立する相続人に伝えるという形で話し合いを行っていきます。調停の中で話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。1回で終わるものもあれば、何回も回数を重ねて行われることもあり、調停がまとまらない場合には、遺産分割審判の手続に移り、裁判で決着をすることとなります。  

 調停調書にも確定した審判にも、確定判決と同じ「決まった内容を強制的に実現する」効力があります。そのため遺産分割調停でも遺産分割審判でも、自分の考える通りの結果になるとは限りませんが、自分の主張はしっかりとしていかなければなりません。  

 裁判所での手続と聞くと大変なことのように思えますが、遺産分割調停では調停委員の方や裁判官が相続人の間に入ってくれますので、直接話し合いをする必要がなくなり、ご質問者様の状況のように、皆様が感情的な状態よりは冷静に話し合いを進められると思われます。遺産分割協議が整わないなと感じたら、裁判所に関与してもらうことも解決法の一つです。

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 被相続人から相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、贈与税の申告をして納税をしていた場合でも、相続税額の計算上、相続財産に加算することになります。

 父が平成28年12月25日に亡くなりました。父は資産が多く、将来の相続税を心配し、以下のとおり毎年贈与をしていました(注:暦年課税で申告)。相続が発生したときには父の財産は基礎控除額の範囲内(4100万円)でしたので、相続税の申告はしなくても大丈夫でしょうか。なお法定相続人は姉(私)と妹の2人です。

 結論から言うと、相続税の申告は必要となります。
 相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、相続発生時に相続財産として相続税が課税されるからです。
  これは、亡くなる直前に生前贈与をすることにより、相続税が不当に軽減されることを防止するためです。

  次のケースで考えてみましょう。

 平成25年10月1日に生前贈与を受けた財産は、相続開始前3年超の財産ですので、相続財産に加算はされません。
 また、平成28年に生前贈与を受けた財産は、相続開始年分の贈与となり、贈与税は課税されません。  
 贈与税も支払い、相続対策として行ってきた生前贈与ですが、相続発生日(亡くなった日)から過去3年以内に贈与された財産は、相続財産に加算され、相続税の課税対象となってしまいます。
 今回のケースの、お父様の相続税の計算は以下のとおりとなります。

※贈与税控除額 
 被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受け、相続税の課税価格に加算されたものがある場合には、その加算された贈与財産に対して課税された贈与税額は、算出相続税額から控除します。

  • ①平成25年分 170,000×1,300,000/(1,500,000+1,300,000)=78,928円
  • ②平成26年分 90,000円
  • ③平成27年分 40,000円      合計:208,928円

 なお、今回のケースには当てはまりませんが、納付した贈与税額が相続税額よりも多い場合であっても、超過する部分の贈与税の返還を受けることはできません。また、加算税、延滞税、利子税の額も控除する贈与税額には含まれません。

 ただし、相続開始3年以内であっても、以下に掲げる財産は加算されません。

《加算されない贈与財産の範囲》(国税庁HPより)

 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

  • (1)贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • (2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

(注)暦年課税
 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。今回は「暦年課税」により課税された生前贈与財産の加算について説明しています。 「暦年課税」は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に対して税金を課するものです。1年間にもらった財産の合計額が110万円までの場合、贈与税はかかりません(申告不要)が、相続税の生前贈与加算の対象となります。

<まとめ>

  • ・相続などにより財産を取得した人が、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産には相続税が課税されます
  • ・贈与税の基礎控除内(110万円)でも、相続開始前3年以内に贈与を受けていれば相続財産に加算され、相続税の課税対象となります
  • ・贈与税の配偶者控除を受けている場合等、加算されない贈与財産もあります

<参考条文>
〈相法19 21の2~6 相令4 借法70の2 70の2の2~5 相基通19-1 19-2〉

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