お知らせ

 相続した不動産の売却は、遺産分割協議書に対象となる不動産の記載があれば、売却手続きを始めることができ、相続登記も行えます。

 母が亡くなり、弟と二人で母の財産を相続することになりました。財産の分け方について弟と協議をしているところですが、実家については、お互い持家があり、住む予定もないため、売却することで意見が一致しています。ただ、実家周辺は住宅街で、建物が密集しています。実家を空家のまま放置することで、放火などの被害にあった場合、近所の方へ被害が及ばないか心配であるため、できるだけ早く売却したいと考えています。実家の売却にあたり、すべての財産の遺産分割協議が整い、相続登記を行わなければ、実家を売却することはできないのでしょうか。
 また、実家は築年数が経過しており、取り壊すことになると思います。取り壊す建物でも相続登記が必要でしょうか。

 不動産の売却を依頼するための遺産分割協議書は、相続するすべての遺産の内容が記載されていなくても、売却する不動産を対象とした遺産分割協議書だけでよく、相続登記も行えます。 また、建物を取り壊す場合は、相続登記は必要ありませんが、滅失登記が必要です。

 相続する不動産の売却を不動産業者に依頼するためには、その不動産の相続人であることを証明する書類が必要になります。法定相続分による遺産分割の場合は戸籍等、それ以外の場合は遺産分割協議書等になりますが、不動産の売却を依頼するための遺産分割協議書は、相続するすべての遺産の内容が記載されていなくても問題はありません。
 今回の場合であれば、ご実家だけを対象にした遺産分割協議書が作成されていれば、相続人の依頼により、不動産業者は売却活動を始めることができます。
 また、その遺産分割協議書により相続登記も行えます。相続登記については、売買契約締結後、不動産を引き渡すまでの間に行えば問題ありません。

 建物を取り壊すのであれば、建物の相続登記は、必ずしも必要ではありません。 建物を取り壊した後の建物の滅失登記は必要になりますが、登記名義が被相続人であっても、相続人名にて建物の滅失登記を申請することが可能です。
 また、土地を売却する際に、確定測量を求められるケースがありますが、確定測量も建物滅失登記と同じで、相続人にて土地家屋調査士に依頼(官民立会等の委任)ができます。建物の滅失登記や確定測量は、戸籍等で、依頼者が相続人であることを証明すれば足りるからです。

 なお、土地に係る固定資産税・都市計画税は毎年1月1日現在で、土地上に建物があるかどうかによって税額が変わります。そのため、建物を取り壊す時期によっては、翌年の土地に係る固定資産税、都市計画税が高くなる可能性があります。取り壊しの時期については、依頼する不動産業者と協議しておくことが必要です。
 加えて、築年が古い被相続人の居住用財産を売却する場合は、不動産譲渡所得について空家の3,000万円特別控除が利用できる可能性があります。空家の3,000万円特別控除を利用する際は、建物取り壊し前の写真が必要になるなど、利用するための規定があります。
 いずれにしても、不動産を売却する際は、各専門家に相談の上、進める必要があります。

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 死亡保険金は相続人以外が受け取る場合もみなし相続財産として相続税が課税されますが、非課税の適用はなく、2割加算の対象となります。

 叔父が亡くなって、甥にあたる私と弟が受取人に指定されている生命保険があることが発覚しました。保険金額が同じものがそれぞれ1件ずつありました。
 弟は、叔父夫妻に子がいなかったため、叔父の事業を継ぎ、養子になっています。
 相続人でない私が受け取る死亡保険金にも税金はかかるのでしょうか?
 また、遺産分割ではどのような扱いになるのでしょうか?
 叔父の相続人は叔母(配偶者)と養子(私の弟)の2人で、私の両親は存命です。

<契約内容>

  1. 契約者(保険料負担者):叔父
  2. 被保険者:叔父
  3. 死亡保険金受取人:甥2人(各1件)
  4. 保険種類:一時払終身保険
  5. 保険金額:1,000万円

 死亡保険金は受取人の固有の財産ですので、遺産分割の対象にはなりませんが、相続税の計算においては“みなし相続財産”として課税対象となります。また、ご相談者様は相続人ではないため、生命保険の非課税枠を適用できず、相続税額の2割相当額が加算されます。

 死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の対象、という点では、受取人が相続人であっても相続人以外であっても同じ扱いですが、相続税の計算においては、受取人が相続人ではない場合に、次の違いがあります。

  1. 生命保険の非課税枠 (500万円×法定相続人の数) を適用できない。
  2. 被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される。

 今回、相談者様は相続人ではないため、上記1. 2. ともに該当します。一方、弟さんは叔父の養子になっていますので、相続人であり、どちらも考慮する必要はありません。

 また、受け取る死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の対象にはなりますが、受取人の固有の財産として扱われますので、相続財産に含まれず、遺産分割協議の対象になりません。よって、通常は遺留分の計算の基礎にも含まれないことになります(ただし、相続人との間で到底是認できない不公平など、特別な事情により争い事になるような場合には、遺留分の計算の基礎に含まれることもあります)。

 なお、今回のケースでは弟さんは被相続人の直系卑属ではない養子のため相続税の2割加算は適用されませんが、同じ養子でも被相続人の直系卑属である孫を養子にしていて、その孫が代襲相続人ではない場合は、加算の対象になります。これは、被相続人→子→孫と、孫に承継するまでに、通常、2回の相続が発生するものを一代飛ばして課税の回数を1回に減らすことになるため、税対策への措置と考えられます。

 

<参考条文等> 相法18、相法21の15、16、相基通18-5、遺留分に関する判例

 

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