昨年夏から販売が禁止されていた牛肉レバ刺が、
販売の目処がついたらしいとニュースに載っていました。
設備が整った調理施設からパック詰めにして、
お客が自分で封を開ける仕組みが認められそうとのことです。
振り返ると、それまで高価であった焼肉が、手軽な金額で食べられると、
瞬く間にブームが沸騰していきました。
そこに、他業界からノウハウを持たず乗り込んできた一部の経営者が、
加熱しない「生肉」に手を出したことで起きた事故でした。
風評の影響もあり、熱は一気に冷めていきました。
一時はスーパーやコンビニの買収を積極的に行い、
業界で隆盛を極めた焼肉チェーン大手も、今や身売り寸前となっています。
幸運にも事業が上手く進み、大金を手にした時。
それを何倍、何十倍にもしたいと思うのは経営者としては当然です。
しかし、自らの手で多店舗展開するとなると、品質や人の管理、
資金繰りなど頭を悩ますことばかりです。
そのような事を軽くしようと、ついつい誘惑に負ける、
フランチャイズ・チェーン(FC)という仕組み。
外食であれば、「ブランドの知名度を高める」「マニュアルを作る」、
「調理はセントラル・キッチンで一貫して行う」といったところが王道です。
経営者には、このような仕組みを、抵抗なく導入できるタイプと、
違和感が起きるタイプがいます。
全国にうどんチェーン 丸亀製麺を展開する、
トリドールの創業者 粟田貴也氏は後者だったようです。
会社名の「トリ」が表すように、最初は焼鳥店からスタートでした。
大学を中退して、運送会社のドライバーとして開業資金を貯め、
やっと漕ぎ着けた念願の店。
蓋を開けてみると、お世辞にも繁盛しているとは言い難い状態でした。
試行錯誤の末、順調に2店舗目をオープンさせることができ、
3店舗目には、女性をターゲットとした洋風焼鳥店に挑戦します。
物珍しいもの好きの女性にありがち、最初の頃は良かったものの、
女性客狙いの店が次から次へと登場し、売上は下降の一歩を辿ったのです。
原点に戻って、家族が連れ立って足を運べる焼鳥店を開いたことから、
順調に事業を拡大することができました。
その後、うどんチェーンに軸足を移そうと思ったのは、
讃岐うどんブームの影響もありますが、鳥インフルエンザがきっかけでした。
先に起ったBSE問題で低迷する焼肉業界を目の当たりにしたことから、
鶏肉を扱う事業だけでは不安を感じたからです。
当時は、大手にうどん専門は無かったものの、
メニューにうどんやそばを載せている外食チェーンはたくさんありました。
そして、うどんチェーンを展開するに当たって、
「店内製麺」と「直営」を決断します。
安い単価で勝負することで、勝算はありましたが、
「安かろう不味かろう」では、繰り返し来店してもらうことはできません。
そこで、目玉としたのが店内製麺だったのです。
「 できたて感 」 「 手づくり感 」を売りにして、
安くて美味しいうどんを目指したのです。
また、その時々で違う麺の出来上がりに、マニュアル中心のFCは、
馴染まないため、「直営」は当然のなりゆきでした。
他と違うことを考えるのは成功の一歩となります。
人が通った道を歩くのは、二匹目のどじょうを狙うことなり、
大きな期待はできないからです。
他人が、「見逃している」「遣りたがらない」ところに勝機があるのかもしれません。