事業の拡大には、商品の販売先である顧客を創出することや、
販売拠点を増やすことが重要と考えがちです。
ところで、たこ焼きチェーンの「築地銀だこ(ホットランド)」で、
問題となったのは食材の確保でした。
当初、スーパーの敷地内でたこ焼きのほか、
焼きそばや大判焼きも扱っていたどこにでもある「こなもん屋」から、
たこ焼き一本に専念したことにより、業績を伸ばした築地銀だこです。
たこ焼きの食材といえば、もちろん「タコ]となりますが、
事業拡大に伴い、主材料であるタコの品薄に見舞われました。
そこで、タコを食べないためタコ漁をしない国にまで出向き、
獲り方をゼロから指導して世界中からタコの仕入を実現したのです。
同社はタコの安定調達を目指し、熊本で完全養殖を本格化させます。
熊本県の天草市には、えびの養殖跡地が約600ヶ所あり、
その跡地を利用して、タコの養殖を進めるそうです。
これまで、大学と提携して養殖の研究を進めていましたが、
いよいよ実用化段階に入り業務に役立てたいものです。
単品商品を扱う会社にとって、最も怖れることは、
「安くて、良いもの」を提供するライバルが現れてくることです。
お客の奪い合いによる、売上の減少もありますが、
互いに値引き合戦による消耗戦で値崩れ、
そして共倒れになることが、もっとも怖いことです。
そのためには、その分野で優位に立つこと、
出来ればナンバーワンになることが大切です。
「戦わずして勝つ」
競争相手が出てきても、面と向かって勝負させない。
「戦っても、勝ち目が無い」と思わせることが必要なのです。
ナンバーワンになれば、材料、仕入れなど大量購入による、
スケールメリットが現れてきて、あわせて運送コストも下がってきます。
地域や仕入先からの購入額のシェアがあがってくると、
価格についても主導権を持つことが出来、
色々な情報も入ってくることになります。
そして、ナンバーワンの商品をもてるようになると、
社員が自信をもてるようになり、会社のイメージが一新し、
社員のマナーもアップするようになるのです。
牛丼チェーンの吉野家がどうして、米国産牛肉にこだわるのか、
牛丼の味は、米国産を使わないと作れないからです。
飼育方法や餌にまで注文を付けて、日本人の口に合うように改良し、
なおかつそれだけ多くの肉を供給できるのは、今は米国しかないのです。
一頭当たり10kgしか取れない部位を、牛丼を販売するとなると、
年間350万頭分の肉が必要となるのです。
吉野家が「牛丼」でナンバーワンを走り続けるには、
米国産を使うしかないのです。
世界第一の牛肉の消費者マクドナルドに匹敵する輸入高を誇り、
米、ワイン、醤油、たまねぎ、生姜なども、
一社としては消費量トップである吉野家。
ナンバーワンの強みを十分に生かすよう考え尽くされているからこそ、
30年前の値段を維持することが出来ているのです。