業界大手も安泰としていられない

 つい先ごろ、お笑い芸人で芥川賞を受賞した、
 又吉直樹の小説「火花」の映像化を巡って、
 アメリカの会社がネット配信で行うと発表して話題になっていました。
 動画配信の世界最大手ネットフリックスが、
 9月2日に日本上陸しサービスを開始しました。

 同社は、世界50ヶ国以上で6500万人の会員を抱え、
 国内ではソフトバンクと提携しています。
 テレビ局などと提携して作る、独自コンテンツが最大の特徴となっていて、
 資金力を生かした作品作りには定評があります。

 家庭での音楽や映画の鑑賞は、CDやDVDを再生するものから、
 ネット経由でスマホやパソコンで視聴するのが主流を占めるようになっています。
 この影響は大きく、業界大手といえども今までの地位に
 安泰としているわけにはいかなくなっています。

 米国ビデオレンタル大手のブロックバスターが、
 日本でいうところの民事再生法の適用を受けることなり、経営破綻しました。
 新興のネット配信や、設置型のDVDレンタルサービスを行う競合などに、
 顧客を奪われた末の倒産となります。

 また、かつては全米第二位の売上高を誇った書店チェーンのボーダーズも、
 破産しライバル企業に買収されました。
 ニュースでは、書籍の電子化の流れが直接の影響だと伝えられていますが、
 アマゾンなどが行うネット通販の波に乗り遅れていたのも一因とされています。

 CDが出回り始めた30年位前、気に入った曲はレコード店で買わなければ
 手に入れられなかった時代に、風穴を開けたのがレンタルレコードでした。
 音楽好きの若者や、少ない小遣いで最大限に欲求を満たそうとする学生の人気で、
 レンタルレコード店は街中に一気に広がったのです。

 駅前近くの雑居ビルの上部階に店を構え、穴場的な雰囲気のスタイルが主流で、
 そんな中の一つが、現在のTSUTAYAであったのです。
 サラリーマンをしていた増田宗昭氏が、噂を聞きつけて大阪の枚方市で
 レンタルレコード店をオープンしたのは82年のことでした。

 オープン当初からの思いもよらない繁盛ぶりに驚いたのは、誰よりも本人の方でした。
 そんな気持ちに酔いしれているのも束の間、すぐに不安が頭をよぎります。
 こんなに儲かる商売なら、すぐにみんなが手を出すはずだ、
 今のようなちっぽけな店なら、ライバルが出てきたらひとたまりも無い。

 成長の見込みはあるけれども、海のものとも山のものともわからない商売、
 仮に売上がゼロであっても、人件費や家賃の支払いが出来て、
 返済も出来るにはどうしたらいいかを考えます。
 店の立地、周辺の客層、品揃え、販促方法など綿密に調査したのです、
 このことはサラリーマン時代に店舗の開発をしていたことが役に立つことになります。

 その原点には、「売上がゼロでも維持できる体制」と、
 「やってダメならいつでもやめることが出来る会社であること」だと述べています。
 売上拡大し、利益を維持することが必須である上場企業にとって、
 「縮小」や「撤退」という決断は、最も難しいことです。

 スタートが順調であればあるほど、ずっと右肩上がりが続くと過信して、
 回収の目処も無く事業拡大に投資する経営者が後を絶たない中、
 着実に足元を固めることは大切なことです。
 増田氏が創業当初の考えを今もずっと持ち続けておられ、
 今回の決断が吉と出ることを祈るのみです。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントは受け付けていません。

税務・会計のご相談初回30分無料 075-813-4850 営業時間9時~18時(土・日・祝日を除く) お問合せフォーム