財布を忘れたとしても、これだけは肌身離さず持ち歩くくらい、
携帯電話はなくてはならない生活アイテムとなっています。
主流がスマホ(スマートフォン)に移ってからは、
高機能化に単一機能商品であるデジタルカメラや、
オーディオプレーヤーの存続さえ危ぶまれるほどです。
かつて、現像することなくすぐに写真が見れるインスタント・カメラは、
色々な場面で重宝がられ、証拠写真的な活用もされていました。
写真フィルムメーカーの富士フイルムも、
2000年代に小型インスタント・カメラを発売していました。
当時、女子高校生に支持され、ちょっとしたブームとなりましたが、
カメラ付携帯電話が普及すると共に、人気は一気に萎むこととなります。
約10年が経ち、今年は前回ピーク時の出荷台数の倍を超す勢いで、
人気に火がついているそうです。
火付け役は韓国ドラマだそうですが、中国でもミュージックビデオ上で使われ、
中国や東南アジアでブームが起きているのです。
偶然のヒットに、急遽開発チームを復活させ、販売ルートの見直しや、
商品アイテムを追加するなど、チャンスを逃すまいと躍起です。
富士フイルムといえば、使い捨てカメラの発明したことで有名ですが、
「写真を撮る」、「写される」ということが、
現在のように身近なものになったのは、
この使い捨てカメラの登場が大きく影響しているのではないでしょうか。
(アナログ)カメラは、精密な細工が多く、手先の器用な日本人にとって、
時計と並び称されるほど世界に誇れる技術でした。
それゆえ、カメラの家庭への普及は早く、
70年代頃までには一家に一台はあたり前になっていました。
しかし、その扱いは難しく、女性や子供には使いづらいものでありました。
その後、ピント合わせが不要なオートフォーカス機能がついた、
コンパクトカメラが販売されるようになりましたが、
まだまだ、大人(男性)や愛好者向けのイメージが強いものでした。
富士フイルムでは、それまでもカメラのコンパクト化や、
操作の簡略化に力を入れていましたが、
子供にも手軽に扱える商品が出来ないかと考えていました。
それよりも、メーカーとしてもっと多くのフィルムを売りたかったのです。
カートリッジ式の写真フィルムを開発していましたが、
これを装てんするとなるとカメラのコンパクト化は限界がありました。
これまでよりも、もっと簡単にフィルムを交換できないかと考えあぐねている時、
フィルムを交換しなくてもいいカメラはないかと担当者は思ったのです。
フィルムにレンズを付ければカメラになる。
カメラの原理に立ち返り、
カメラというものの発想を切替えて考えてみたのです。
カートリッジ式のフィルムにレンズを取り付けたカメラ、
カメラ部分もレンズもすべてプラスチック製のカメラが誕生したのです。
価格も、コンパクトカメラの10分の1程度に抑え、
手軽に購入できるようにしました。
奇抜な発想のカメラは、新聞や雑誌でもとりあげられ、一躍話題になります。
なにより、観光地や駅の売店で気軽に買うことができるようになったおかげで、
利用者は一気に増え、フィルムの販売も飛躍的に伸びたのです。
日本の写真フィルムメーカーが生き残っていられるのは、
こうした絶え間ない進化を続けているからではないでしょうか。
その進化とは、競争相手よりも一歩先に出ることです、
失敗を恐れるは相手も同じです、
その気持ちを抑えて挑戦するかしないかで将来は変わるのです。