タイマーの受注が明暗を分ける

 3月半ばだというのに、ここ数日「寒の戻り」とも言いましょうか、
 寒い日が続いています。
 昔から近畿地方では、奈良の東大寺で行われる
 「お水取り」が済むまでは春は来ないと言い伝えられています。

 暖かくなるのが、待ち遠しい限りですが、
 毎年の事、暖かいのを通りこして「暑く」なってしまうので、
 春を感じている暇がありません。

 暖かくなる時期を前にして頭が痛いのが、飲料水メーカーです。
 一台あたり1000W近い電力を消費するといわれている自動販売機は、
 飲料水メーカーにとって無くてはならない存在でありながら、
 電気の「ムダ使い」として肩身の狭い思いをしています。

 夏の稼ぎ頭である自動販売機は、この夏も節電の影響で稼働を制限されるのは必至です。
 電力需要の厳しい時間帯は、ローテーションで運転を停止するなど、
 各社、あれこれと知恵を絞り、対策を練っているそうです。

 現在のように街角のいたるところに、自動販売機が設置され、
 販売を支えているのが、硬貨、紙幣の認識技術です
 この技術に早くから取り組んだのが、立石電機(現 オムロン)です、
 最初に開発を手がけたのは食券自動販売機でした。

 百貨店が、私鉄の路線延長に備えて新駅に通じる地階に、
 食堂コーナーを新設する計画がされたのです。
 その食堂に、食券の自動販売機を導入する構想が持ちあがります。

 3種類の硬貨を利用し、偽造を見分け、7種類の食券を販売するという、
 当時としてはとても高い性能を要求され、開発陣も尻込みしたほどでしたが、
 見事に完成させ、63年に7台の納入を果たせます。

 自動制御装置にコンピュータを組み合わせた技術は、
 次々と新しい製品に開花していきます。
 渡米し現地のメーカーの依頼で、食券の自動販売機の技術を応用した、
 クレジットカード用の自販機システムを開発することになります。

 アメリカでは、食事をする前に前払いする習慣が無かったため、
 いわゆる後払い形式のクレジットカード方式に切り替えての開発でした。
 製品発表は大々的にマスコミに取り上げられ、
 新聞やテレビで報道されましたが、一方販売は伸びませんでした。

 しかし、その技術は無駄にされることなく、
 銀行の窓口無人化システムにつながっていきます。
 66年に金融会社から入った、紙幣自動貸出機の開発依頼を皮切りに、
 銀行向けのCD(自動預金支払機)を手がけ、
 ATM(自動現金引き出し、預け入れ装置)に引き継がれたのです。

 30年、オムロンの創業者 立石一真氏が独立開業を決意したのは、
 折からの不況で、勤めていた会社の希望退職に応じ、
 再就職口を探したけれど、採用してくれるところが無かったからでした。

 当初は、自らが考案した、ズボン挟み器(ズボンプレッサー)や
 ナイフグラインダー(包丁研ぎ器)を売り歩き、細々と生計を立てていました。
 やがて、持っていたお金も底を尽き、その日の米代まで困るようになります。

 途方にくれ、周囲に仕事がないかと訪ね歩いていたところ、
 友人がレントゲン撮影用のタイマーの話を持ってきてくれます。
 鮮明な映像を撮るために、20分の1秒を計る必要があったのですが、
 それまではゼンマイ仕掛けで、正確に測定できなかったのです。

 立石氏は、2ヶ月掛かりで2台の試作品を完成させメーカーに持ち込みます。
 大阪の病院で行われた、タイマーの立会い試験では見事、
 合格の結果を受け、はじめて大口の注文を受けることが出来たのです。
 こうして、「継電器(リレイ)」の専門工場として
 立石電機の基礎が出来上がったのです。

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