富士重工業は、7月15日で創立60周年を迎えています。
昨年には、トヨタ自動車と業務提携を行い、
軽自動車事業から撤退したのも記憶に新しいところですが、
同事業から生まれた精神は、今も脈々と続いています。
商用車の人気ブランド「サンバー」は61年の発売の人気車種。
半世紀ものロングセラーであるものの、スバルファンの期待もむなしく、
撤退の流れを避けることは叶わず、自社生産を終えることになりました。
他の車種には無い、独特な特徴を持っていることがファンを惹きつける、
一因となっていますが、その原型は名車「スバル360」から受継いだものです。
「スバル360」は、富士重工業が自動車事業に取り組んだ、
はじめての車であると共に、「軽自動車」というジャンルを生み出した、
歴史に残るブランドです。
富士重工業が、自動車事業に参入を決めた当時、大卒の初任給は1万円強でした。
市場に出回っている自動車は、国産はトヨタ自動車のトヨペットやクラウン、
外国メーカーのライセンス生産している日産、日野、いすゞだけでした。
どれも100万円を超える価格で、
サラリーマンが簡単に手を出せるものではありませんでした。
大衆車を目指し、50万円を切る価格で登場したのが「スバル360」だったのです。
敗戦を期に、航空機からの転換を強いられた富士重工業が、
航空機の技術や設計発想をふんだんに採用して作り上げた会心の作。
「サンバー」にも、リアエンジン・リアドライブの駆動方式やフレーム構造、
四輪独立懸架が受け継がれています。
多くの荷物を積み、長距離を走る。
普通の乗用車の寿命をはるかに超える距離を、数年で走ってしまうという、
過酷な使用にも耐えられる車は、なかなかお目にかかれません。
ある時、運送会社から「普通のエンジンでは業務に耐えられない」という意見が出され、
自動車メーカーに専用開発を打診したところ、
要望に応えたのが富士重工業だったそうです。
そして、専用の項目を盛り込み、会社の意見や要望を基に改良をおこない、
国土交通省の認可を受けた専用の「サンバー」車両を完成させたのです。
既成の概念を変え、自動車事業の参入に成功したのが富士重工業です。
価格破壊を切り札に、従来の半分以下の価格を打ち出すことによって、
それまでに比べて何倍もの大きさにあたる新しい市場を開拓したのです。
高級な商品しか出回っていない市場では、
価格を武器にすることで参入することは十分可能になります。
一方、価格を落として購入し易くなることで、顧客層が膨らみ、
それを見込んだ同業も増えて競争が激しくなります。
そのためにも、成功が一時的で終わらないよう、すぐにやってくる競争に備えて、
他社を寄せ付けない独自の強みを作り上げる必要があるのです。
代表的なものには、性能や機能面での特徴、販売店や販売網の充実、
仕入ルート開拓が、それにあたります。
チャンスをつかむ幸運に恵まれたなら、次のステップを考えておくようにしましょう。