東京オリンピックの開催が決まり、
富士山や富岡製糸場が世界遺産に登録されるなど、
観光業界に関わる人にとって、顔が綻ぶ話ばかりです。
そこで、今後の景気上昇に一翼を担ってももらおうと、
官民あげて、各国から訪れる旅行客のニーズを汲み取ることに躍起です。
これまで手薄であった、イスラム教圏からの旅行客にスポットを当て、
大手ホテルやレストランが、厳格な調理法の認定を受けたことが、
ニュースで報道されていたのは記憶に新しいところです。
食事以外でも、厳格なのがお祈りの方法です。
お祈りする方角や時間など、合理的な(?)日本人には理解し難いほど、
複雑に決められているそうです。
この点に関しては、ご本人たちも仕事や旅行で国を離れるときは、
相当苦労されるそうで、メッカの方角を示す機能付きの腕時計があるのだとか。
作っているのは、日本のカシオ計算機。
方角以外にも、祈りの時間を通知する機能もついていて、
腕時計としては大ヒット商品となっています。
93年に、方位計機能付き腕時計を世界で初めて発売し、
応用先を模索する中で出てきたアイデアが、この時計だったそうです。
「G-SHOCK」など、多くのヒット商品を手がけてきた同社ですが、
ユニークな視点で商品開発を行ってきた結晶のひとつがこの時計だったのです。
カシオ計算機の創業者 樫尾忠雄氏が事業を始めたのは、
先の大戦後の不況にあえいでいた46年(昭和21年)のことです。
小さな町工場であるがうえに、下請け仕事に頼るばかりで、
日々を一生懸命働き、食いつないでいくのがやっとでした。
見かねた兄弟が、力を貸したいと言ってきて、
4人で工場を切り盛りすることになります。
そして、このまま下請け仕事を続けるだけではいけないと、
自社商品を開発することに意見がまとまります。
とは言っても、材料も不足していたし、技術力もなかったため、
手軽に開発できそうな、家庭様の電熱器や自転車の発電ランプなど、
手当たり次第に作っていったのでした。
どれも最初は売れるものの、世の中が落ち着いていくにつれ、
売れ行きが鈍っていきます。
大手の真似したような商品を作っていても、生き残れないという思いから、
奇想天外な商品を作ろうと一致団結したのです。
しかし道のりは、予想していたとおり険しいものでした。
新しい計算機の開発に挑戦することにしたものの、
お金もなく、設備も乏しい中で試行錯誤が続きます。
開発から3年経った54年、機械式の計算機が主流であった当時、
リレー式の計算機の完成にこぎつけたのでした。
こうして、カシオ計算機が誕生し、電卓を先駆けに、
数多くのヒット商品を生み出すことになります。
第一に、より多くの人に喜んでもらえること、
第二に、新しいマーケットを創造すること、
今も変らない基本理念が、新しい商品を生み続けます。