連休中に梅雨明け宣言が出され、夏本場となった日本列島。
各地で猛暑日となり、暑さと反比例して食欲は落ちるばかりで、
温かいものに箸が進まない方も多いのではないでしょうか。
こういった時は、冷たい麺類でツルツルといきたいものです。
近畿圏では、夏の定番といえば「そうめん」が一番に挙げられるところですが、
困ったことに、めんつゆで食べることがほとんどで、
他の麺類に比べレパートリーが広がらないことが悩みの種でした。
この夏は、味の素が販売する「丸鶏がらスープ」と
「揖保乃糸(兵庫県手延素麺協同組合)」がタッグを組み、
販売促進のイベント等を開催するそうです。
丸鶏がらスープを使い、冷えたスープをかけた素麺に、
野菜や玉子などのトッピングをのせ、
栄養不足を補うこともでき夏バテ防止を訴えます。
寒くなる時期には、温かいスープで冬場の需要も狙っているそうですが、
このコラボレーションは大きく広がるのでしょうか。
味の素は二人の理念が合致して生まれた新しい商品です。
うまみ成分を発見した池田菊苗博士の、
「単なる科学の発見ではなく、世の中に役に立つようにしたい」
鈴木三郎助氏の「国民の栄養不良を矯救し、日本人の体位向上に貢献したい」
という思いから出発しました。
ヨード製品の製造を手がけていた実業家、鈴木三郎助氏のもとに、
昆布から抽出したうまみ成分による事業化の話が持ち込まれました。
しかし、今までに無い未知の製品であることに加えて、
商品化までに多額の研究費用と販売経費がかかることが予想されました。
米などの投機相場から足を洗い、ヨード製造の事業も軌道に乗り、
順調に事が運んでいた最中だったのです。
新しい事業に手を出し、積み上げてきたものが無くなる不安が頭をよぎります。
加えて、事業化するにはいくつか解決しなければならない問題があったのです。
製造については、昆布から抽出されるうまみ成分のグルタミン酸はわずかでしたが、
小麦タンパクには多くのグルタミン酸が含まれることがわかり。
原料に小麦粉を使うことによって、
安くて大量生産できることが可能になったのです。
商品化するとなれば、グルタミン酸ナトリウムが調味料として
一般大衆に受け入れられるのかどうかが大事です。
東京にある有名な料理店に頼んで試用してもらったり、試食会を開いてみます。
何より、連載小説『食道楽』の作者で食通として名高い、
村井弦斎がこの調味料を高く評価したことが大きな自信に繋がります。
販売を開始してからも、最初は全く売れませんでした。
当時の製品は不純物をとりきれず、色や匂いも良いとは言えなかったのです。
そのうち、「原料に蛇が使われている」というデマが流されることもあり、
順調に売上が伸びるまでには、大変苦労したのです。
経営者にとって、事業に対する理念を持つことは大変重要なことですが、
その理念が一方的な押し売りではビジネスとして成り立ちません。
第一にお客様に喜ばれること、次に経営として成り立つことが必要です。