効果を高めるにはターゲットを絞れ

 このところ、節分の定番として定着した「恵方巻」。
 こちら京都の百貨店では、景気の追い風もあり、
 豪華食材を使った恵方巻を取り揃え、ムードを盛り上げています。
 なかには、老舗料亭の名前を冠した巻寿司は、
 3000円を超えるものも登場しているそうです。

 一方、中国の旧正月である春節休暇の訪日需要を狙って、
 各地の宿泊施設や観光施設は大忙しです。
 復活に道筋をつけた長崎ハウステンボスでは、
 訪日客向けにイベントを追加して順調に業績を伸ばしています。

 格安航空券販売大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は、
 長崎ハウステンボスの再建を手がけるなど、
 旅行業以外にも積極的に手を伸ばしてきています。
 起業は、創業者 澤田秀雄氏の旅行好きが高じた、
 趣味仲間の集まりの延長から出発しました。

 ある時、自らの体験をもとに、格安で旅行できるツアーを企画したところ、
 これが大当たりし、会社の進むべき方向が固まって行きました。
 最初のヒット企画はインド自由旅行で、格安で航空券を販売するだけでなく、
 旅行についての注意点、現地情報や心配事を丁寧にアドバイスしました。

 80年代、国内旅行に比べ海外に出かける人は、まだまだわずか、
 言葉が通じない海外への旅行は、フルサービス型のパック旅行が主流でした。
 大手の旅行会社は、人気のあるシーズンにパック旅行を企画することに躍起で、
 売れ残りともいえる格安チケットには見向きもしませんでした。

 そこで、「時間はあるが、お金がない」学生や若者にターゲットを絞り、
 格安航空チケットをメインに販売することを計画します。
 当時、日本ではこのような市場は、旅行好きのマニア向けではありましたが、
 確実に一定の市場が存在することがわかったのです。

 オフシーズンだからといって飛行機を飛ばさないわけにはいきません。
 しかし、どうしても空席ができてしまう。
 このことは、航空会社が抱える宿命的な課題でした。
 一方、少しでも安く旅行ができ、
 その浮いたお金で、別の場所へ旅行に行きたいお客がいるのです。

 大手の掌から零れ落ちた、格安航空券、格安ツアーを主力商品に据え、
 HISは90年代に入り躍進を見せます。
 円高の影響も手伝い、年々海外旅行に出かける若者がうなぎのぼりに増え、
 格安航空券への関心も高まっていきます。

 出発日限定や出発日直前の、タダ同然の航空券を目当てに、
 店舗には行列が出来ることもありました。
 価格破壊をうたい文句に大胆なCM、
 ある意味、強引にも取られるようなやり方で、全国へ店舗を拡大していきます。

 HISが、販売網を拡大する理由、それは只ひとつ、顧客の獲得です。
 2番手、3番手を寄せ付けない速さで逃げ切り、業界トップを狙うためです。
 海外旅行が余暇の過ごし方のひとつとして、大きな位置を占めるようになったとき、
 利用客はリピータとして、将来の見込み客となるのです。

 HISを利用した学生や若者は、新婚旅行に利用することもあるし、
 会社でそれなりの立場に着いたときには、ビジネスで利用することも出てきます。
 また、シニアになり現役から引退すれば、オフシーズンの旅行を出来るようになります。
 リピータの要望に対応した品揃え、つまり総合旅行業としての体制固めとなるのです。

 絶えず、一歩先、二歩先の事を考え、計画し実行に移す。
 すべての事が成功するとは限らないので、決して身の丈を超えた挑戦はしない。
 澤田氏も、自らの成功は時代の風向きが後押しをしてくれたと語っていますが、
 ビジネスの成功とは、規模の大小ではなく、
 大きくできた割合だということを肝に銘じておきましょう。

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