ファッションビルを経営するマルイ(丸井)が変革を迎えようとしています。
少し前まで、ヤングファッションのマルイといわれていましたが、
ファッションのけん引役的存在であった、
百貨店業界は逆風が強く回復の兆しがありません。
総合スーパー事業に見切りをつけたイオンが、
早々と小売業から不動産賃貸へ舵を切ったように、
売場の見た目は変わらなくても、テナントの売上に左右されない、
安定収入を目指した経営へ向けて突き進んでいます。
後押しする力となっているのが、クレジットカードの手数料や利息収入です、
会員数増や取扱高拡大が続き、10%近い伸びで経営を支えているのです。
カード審査には強みをもち「店頭即時発行」で目の前の客を掴み、
長年培ってきた与信ノウハウで貸倒れも低く抑えています。
マルイは、創業の時から割賦販売を積極的に行っており、
創業者の青井忠治氏が、長い丁稚奉公を経て暖簾分けを受け、
家具の月賦販売店を開いたことに始まります。
当時、割賦販売を行う商売は世間から「隠れて商売をする」という風に
思われていて、人聞きの良い商売ではありませんでした。
家具の販売店が多かった割賦販売業でしたが、
青井氏の「人々に手軽に品物を買ってほしい」という願いから、
家具以外にも、ラジオ、蓄音機、洋服、靴など、
次々と品揃えを増やしていき事業を広げていったのです。
また、業界の悪いイメージを払拭すべく、
人目に付きやすい駅前に店舗を構えたり、新聞広告やチラシを積極的に行うなど、
月賦百貨店をひとつの分野として築きあげたのです。
日本初めてクレジットという名称で割賦販売をしたことも有名で、
その代名詞ともいえる「赤いカード」は、半世紀を迎えており、
小売と金融を併せ持った商売を作り上げたのです。
一般の顧客を相手にする「小売」は商売の基本のようなものですから、
その時時、新しい売り方が生まれてきます。
小売を行うことの最大のメリットは、現金収入であることです。
一方、仕入は1~2ヵ月後の掛支払いで済ませるので、
その間の収入は経費を除いて、そのまま手許に残ることになるのです。
青井氏は、この方法の全く逆を考え、販売は掛売り、
仕入は現金支払という方法を採ったのです。
この考え方は、小売ではなく金融業の考え方といえます。
お金を払う相手(仕入先)と回収する相手(お客様)は別ですが、
支払うお金を抑えて、回収する代金を多くして利ざやを多く得る。
一般的な小売をするよりも、たくさんの資金が必要となる分、
格段に儲けを多くすることが出来るようになるのです。