流行をいち早く取り入れた品揃えで若者の関心を惹きつけ、
また、マニアックな商品でコアなファンの気持ちをつかむ。
書店、雑貨販売のヴィレッジ・ヴァンガードは、
大量販売とは距離を置く非効率な経営を行っています。
この場合「非効率」というのは、経費を無駄に使うということでなく、
多くの手間をかけたり、仕入や品揃えに費用や時間を割くことを意味しています。
いわゆる「手間暇」をかけ、大企業の採算ラインに合わない、
商品(製品)やサービスを提供することで、高い利潤を生み出しているのです。
同社は、03年に上場を果たすのと時間を置かず、
イオンの大量出店に合わせて一気に店舗を増やしました。
その後、出店ペースが落ちると同時に、
積みあがる在庫に頭を悩ませることになります。
一時は、50億円規模の在庫の評価損を計上したものの、
自社だけでは解決策が見つからず、頼ったのが米国系企業のノウハウでした。
それは、季節はずれとなった商品や売れ残った在庫を、
タイミングのいい値下げで、損を少なく売り切ることでした。
最初から大幅な値下げをすれば、
確実に売り切ることができるけれど損も大きくなります。
まずは、値引き幅を抑えて高めの値段から初めて、
少しでも高い価格で買ってもらえるお客様をつかむことが重要だったのです。
ショッピングセンターなどへの出店が多くなり、
比較的には画一的な品揃えになってきましたが、
書店らしからぬ店舗の中には、本よりも雑貨が溢れ、
若者の興味をそそる商品が品揃えされています。
もともとは、創業者の菊池敬一氏の、「新刊やベストセラーに頼らず、
売りたいものを、わかってくれる人だけに売りたい」という思いがありました。
「そのためのプレゼンテーションに知恵を絞る」と経営をスタートしたのです。
通常は取り寄せになるようなマニアックな作家の特集を組んだり、
小さな出版社が発行する書籍を100部単位で注文を出し、
長い期間をかけ売り切ることもします。
また、有名な小説に登場する、人物や場面に関連する書籍やグッズを取り揃え、
好奇心による衝動買いを誘います。
返品が出来ない本に関しては、売り切る為に細心の注意が必要となりますし、
可能であっても、ほとんど売れず残ってしまった本については、
膨大な返品作業が待ち受けることとなります。
そんな、手間暇かける販売業務に追われつつも、店舗を増やし続けてこられたのは、
菊池氏の持って生まれた才覚なのかもしれません。
ご本人は、本業についての臭覚は犬以上、経理についてはさっぱり、
と語っておられますが、もちろん言葉通りではありません。
長く続いていた赤字状態のときにも、(ご本人曰く)わからないながらも、
売上・支払のお金の流れに注目して、売上金の範囲で支払先の順番を工夫するなど、
資金がショートしないよう工夫をしています。
経理に関しても、上場する少し手前まで、
ご本人が書類の整理等をおこなっていたそうです。
赤字続きで、事務員を雇う余裕がなかったと仰っていますが、
シンプルに経理をこなすという発想があったからでしょう。
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発 行 元:シモヤマ会計事務所(下山弘一税理士事務所)
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