このところ、醬油業界で静かな「鮮度」対決が続いています。
きっかけは、09年にヤマサ醬油が発売した、
常温でも鮮度が落ちない、さしみ醬油の発売です。
画期的な容器に話題が集まり一躍人気商品となりました。
後を追うように、キッコーマンも鮮度を保つ同様な商品を発売したことにより、
対決の様相が濃くなっていきました。
というのも、醬油業界全体のシェアトップはキッコーマンなのですが、
さしみ醬油に限っては、ヤマサ醬油が首位を維持してきたからです。
牙城を切り崩すべく、キッコーマンは当初パウチ形状だったものを、
密閉ボトル容器に改良し、シェア逆転に挑んだのです。
そして見事、今年春には首位を奪取し、販売を伸ばしたのです。
機能的に、ひとつの形に到達したデザインというものは、
その後に改良が加わっても、デザインが大きく変わることは無いものです。
いわゆるビニール傘の普及に見られるように、
最小限の機能を満たすだけの簡素な作りになり、
価格が唯一、商品を選ぶ基準となってしまいます。
醤油差し(卓上瓶)のデザインも同様で、半世紀を超えています。
メーカーのロゴの入った、醤油やソースの卓上瓶がその原型です。
下町の中華料理店や定食屋さんでは、まだまだ健在ですし、
一人暮らしの独身の方には必需品であるかもしれません。
醤油は長い間、一升瓶に詰めて販売されていて、
家庭では、流し台の下に収めている一升瓶から、
食卓用の小さな容器に移し替えて使っていました。
容器に移し変えるときも、料理に醤油を差す場合にも、
液垂れをしてしまうのでした。
キッコーマンが醤油の普及を目指し、
卓上型の醤油瓶の販売を考えたのは1958年のことでした。
依頼を受けたインダストリアルデザイナーの榮久庵憲司氏は、
「水道のように蛇口をひねったらしょうゆが出てこないか、
真っ黒いしょうゆの色を変えられないか」
おとぎ話のようなことを自由に考えたそうです。
機能面では、昔からある急須形の醤油差しの形だと、
どうしても、注いだ後醤油が垂れてしまいました。
そこで、注ぎ口の形を上側が出ている形に変えてみて、
解消することが出来ました。
試行錯誤の結果、お馴染のデザインに仕上げるのに3年もかかりました。
注ぎ口と空気穴が付いたキャップ式の卓上瓶。
今では、おしゃれな調味料入れもたくさん出回っていますが、
液垂れの心配なく、残量もわかり、扱いやすい形としては、
これを超えるものはありません。
売上を増やそうと、既存の商品やサービス以外の新しいことに
チャレンジしている経営者の方も少なくない事でしょう。
その際、注意しておかないといけないことがあります。
目指す事業が、既に完成されたスタイルになっていれば、
その隙間に割り込むことは、とても難しいということです。
如何でしょう、皆様が手掛ける商品やサービスに、
技術や販売方法で、新しい流れが潜んでいないでしょうか。
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