一過性の流行に惑わされるな

 昔から、からだに良い野菜として重宝されているトマト、
 最近では、生活習慣病などに効果があるとして紹介されました。
 お陰で、通常に比べ何倍もする高級なものも店頭に並ぶようになり、
 トマトブームが過熱していました。

 その効果の中心として働いているのが「リコピン」という成分、
 活性酸素を除去して、がんや老化を防いでくれるというのです。
 しかし、人気も一息つき、食料品大手のカゴメでは、
 トマトジュースやケチャップ部門の業績が大きく落ち込む見通しとなっています。

 その穴を埋めるべく健闘しているのが、「農業」部門だそうです。
 もともと同社は、創業者 蟹江一太郎氏が西洋野菜に目を付け、
 ハクサイ、玉ねぎ、キャベツ、レタス、パセリなどの栽培に着手し、
 儲けられる作物として、副業として取り組んだことに始まります。

 当初、トマトは匂いや味が、日本人の舌にまったく合わず、
 作っても売れずに捨ててしまう日が続きました。
 たまたま紹介された、輸入品のトマトピューレがきっかけで、
 トマトを加工すれば商品化できることに気づき、
 輸入食品店経由での販売を始めることになります。

 その後、トマトの加工は順調に進み、
 ウースターソースやトマトケチャップへ手を広げていきます。
 蟹江氏は、トマト加工の比重が高くなってきても、
 農閑期を補う副業としての位置づけをなかなか変えませんでした。

 農家の副業から、近代的な工場への変換したのは、
 トマトの栽培に着手して23年後の事だったのです。
 蟹江氏の経営は、ひとことで言えば「危なげない経営」といえるでしょう。

 事業が拡大していっても、むやみに設備投資せず、
 地元の農家と共同栽培し原料を確保する一方、
 万が一のリスクに備えたのです。

 トマトの加工は、農業の遊休時間を生かしてする、
 副業的なものとして、利益の拡大より、
 農業経営の安定に重点を置きました。

 その後、生産過剰による価格の暴落の経験から、
 同業者が集まって共同経営の形態を採るのですが、
 それは無用の競争を避けるためでした。

 一過性の流行に流されることなく事業を続けて行くには、
 事業の拡大への取り組みは避けて通ることはできません。
 しかし、新しい事は失敗の確率が高いものです、たとえ事業が失敗しても、
 大やけどをしないための体制が必要になります。

 新規事業をする場合、拡大の目安となるのが、
 繁閑の差のバランスが取れる規模になっているかということです。
 そのためには、閑散期に埋め合わせする副業を作っておくことが大切で、
 ピーク期との受注の差が少なくなるほど安定経営が可能になります。

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