時代のニーズに合わせて七変化

 このところ、ニュースやテレビのバラエティ番組だけでなく、
 ビジネスの話題にも、「インバウンド」という言葉を多く目にするようになりました。
 二桁の成長率で伸びている新興国と、
 限りなくゼロに近いラインをさまよっている日本とでは、
 ここまで違うかと、購買意欲の差を見せ付けられます。

 アジアからの観光客は、フェリーやクルーズ船を利用して西日本に訪れ、
 九州や関西観光地と買い物のツアーを巡ります。
 こちら京都の平安神宮付近でも、目印の旗を高く掲げ先導するツアコンの後を、
 ゾロゾロとついていく姿は、数十年前の我々の姿と見間違えるほどです。

 平安神宮の近くに、年間約10万人の観光客が訪れるという、
 京都土産や民芸品、工芸品を取り扱う
 「京都ハンディクラフトセンター」があります。
 外観は、土地柄(?)きわめてシックで目立たないビルですが、
 土産物のコーナーでは、「これでもか」と欧米人好みの、
 ケバケバした色の着物や帯などが所狭しと、並べられています。

 その中に、欧米からの観光客にちょっとした人気になっている土産があります。
 地元のデザイナーが立ち上げたブランド
 「SOU・SOU」デザインの足袋です。
 昔ながらの形はそのままに、靴底にクッションを入れ、
 和風でありながらモダンな柄の頒布を使った地下足袋(じかたび)は、
 スニーカーのように履ける気軽さが受けています。

 立ち上げた当初は、着物や風呂敷、手ぬぐいなどを展開していましたが、
 思うように販売は伸びず、苦戦続きでした。
 あるとき、倉庫に無造作に置いていた地下足袋に目が向き、
 商品化してみたところ、大ヒットとなり今日に至っているそうです。

 地下足袋といえば、タイヤメーカーのブリヂストンが発明し、
 会社の基礎となったのですが、そのことはあまり知られていません。
 もともとは福岡県久留米の足袋屋の息子であった創立者 石橋正二郎氏は、
 その足袋の底にゴムを張り付けた、
 地下足袋(張り付け式ゴム底足袋)を発明します。

 それまで、作業するときには一般的であった『わらじ』から、
 地下足袋が急速に普及することになり。
 ご存知のとおり、今も建築現場では必需品となっているほど、
 地下足袋は大ヒットすることになります

 その後も、石橋氏は当時では新しい素材であったゴムに注目して、
 ゴム製品に力を注いでいくことになるのです。
 履物の洋風化により、地下足袋からズック靴(スニーカー靴)の製造に着手して、
 生産を順調に増やしていきます。

 ところで、「アサヒ靴」という名前を、
 懐かしく思われる方もいるのではないでしょうか。
 昭和の時代に日本でトップのシェアを誇っていたズック靴は、
 ブリヂストンの前身の会社のものです。
 ズック靴、自動車タイヤそしてゴルフボール、次々と新しい製品に着手して、
 今のブリヂストンを世界企業に成長させた、先見力は素晴らしいものです。

 また、その製品は、いずれも日本の高度成長とともに、
 日本人の生活に浸透していくもの深く関係しています。
 ズック靴は、履物のわらじ、足袋から靴へ、
 タイヤは、モータリゼーションの発達、
 ゴルフボールは、平成バブル期まで続いた、接待ゴルフです。

 それに加えて、これらのゴム製品はすべて消耗(磨耗)品なので、
 比較的短い期間で買い替えをしてもらえ、願ってもないことなのです。
 それぞれの時代の流れに深く溶け込んだ、製品を創りつづける、
 メーカーだけでなく、ビジネス全般の基本となる精神といえます。

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