お知らせ

 地価が上昇しているにもかかわらず地代を据え置いている場合、どのような影響をもたらすのか教えてください。

 私が所有する土地の上に、私が100%出資しているA社所有のマンションがあります。この土地の賃貸借に関して権利金の収受はなく、契約締結当時に算定した「相当の地代」を地代として収受する契約を締結しています。
 近年、マンション周辺の地価が上昇していますが、地代は改定していません。このまま地代を据え置くことに問題はありますか。
 なお、マンションは築後20年を超えて修繕箇所が増え、管理に手間がかかるため、A社を経営している息子から売却の相談があります。

 周辺の地価が上昇しているにもかかわらず「相当の地代」を改定していない場合、自然発生借地権が生じている可能性があります。この自然発生借地権は、譲渡や返還、相続等が発生したときに生じていれば課税の問題が生じますので、ご注意ください。

1.権利金

 建物の所有を目的とした土地の賃貸借契約に基づき、賃借した土地に対する賃借人(借地人)の権利部分を、「借地権」といいます。
 この賃貸借契約の締結時に、借地権を設定した対価として賃借人から賃貸人に対して支払われる金銭のことを、「権利金」といいます。
 地域の慣行として権利金の受け渡しがあるにもかかわらず行っていない場合は、原則として、権利金の認定課税が行われます。
 ただし、この受け渡しがなくても、賃貸人が「相当の地代」を収受しているときには、認定課税はされません。

2.相当の地代の算出方法

 相当の地代は、土地の時価に対しておおむね年6%程度とされています。この場合の「土地の時価」は、課税上の弊害がなければ、対象となる土地の自用地としての相続税評価額、あるいは過去3年間における相続税評価額の平均額、などにより計算することも認められています。

3.自然発生借地権

 相当の地代は、上記2.のとおり土地の時価がベースとなりますので、土地の時価が上昇した場合には、相当の地代も上昇するはずです。
 この上昇した部分を地代に反映させず、地代を据え置いた場合には、その部分の借地権が発生したものとされます。これを「自然発生借地権」といい、借地人に帰属されます。
 ただし「自然発生借地権」は、実現されるタイミング(譲渡、返還、相続などが生じる)まで課税されません。

4.設問のケース

 相談の内容から譲渡を視野に入れているとのことですので、仮に相続が開始される前に譲渡された場合に、その譲渡の時点で「自然発生借地権」が生じていれば、課税の問題が生じてきます。どのような問題が生じるのかはケースによって異なるため、ここでの説明は割愛させていただきます。

 同族間の不動産の賃貸借は、常に課税の問題が絡んできます。今回の課税の問題の詳細を含め、相当の地代の改定については、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」ほか

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 団体信用生命保険と住宅ローンの相続時の取扱いについて教えてください。

 自宅を購入するために、夫は銀行で住宅ローンを組みました。
 その際、団体信用生命保険の特約を付加したのですが、仮に夫が亡くなった場合、住宅ローンはどうなるのでしょうか。また、団体信用生命保険の保険金や住宅ローンは相続財産になるのでしょうか。

【団体信用生命保険の内容】
  • 契約者、保険金受取人:銀行(債権者)
  • 被保険者:夫(債務者)
  • 保険金額:住宅ローンの残額

 ご主人がお亡くなりになった場合、返済中の住宅ローンの残額に団体信用生命保険(以下、団信)の保険金が充当され、住宅ローンは免除されます。また、団信の保険金や住宅ローンは相続財産にはなりません。

1.相続時の団信の取扱い

 仮にご主人がお亡くなりになった場合には、住宅ローンの残額に相当する団信の保険金が銀行に直接支払われます。
 この保険金が住宅ローンの残額に充当されるためゼロとなり、以降の返済は不要となります。

 ちなみに一般的な団信は、死亡の他、高度障害状態となった場合も同様に支払われます。団信の保障内容によっては、病気やケガなどの所定の保障対象となった場合にも支払われるものがあるようです。保障範囲は確認しておかれるとよいでしょう。

2.団信の保険金や住宅ローンは相続財産になるのか
(1)団信の保険金

 相続税の計算上、被保険者である被相続人の死亡をきっかけに相続人や受遺者が受け取る死亡保険金のうち、被相続人が保険料の全部または一部を負担していたものは「みなし相続財産」として、相続税の計算の対象となります。

 団信は、契約者が銀行(債権者)であり、保険金の受取人も銀行(債権者)です。そのため、支払われた死亡保険金は「みなし相続財産」に該当しません。

(2)住宅ローン

 被相続人名義の住宅ローンの残額がある場合、相続税の計算上、債務控除の対象となります。

 しかし、団信の特約が付加されている住宅ローンの場合、上記1.のとおり、住宅ローンの残額はゼロになります。したがって、債務控除の対象となる「確実と認められる債務」にはあたらないとして、債務控除の対象とはなりません。

【参考/裁決事例】 ※昭和63年4月6日裁決
 相続税法上、債務控除ができる「確実と認められる債務」とは、債務が存在するとともに債権者の債務の履行を求める意思が客観的に認識しうる債務、または債権債務成立に至る経緯から、事実的、道義的に履行が義務付けられているという場合、すなわち、債務の存在のみならず、履行の確実と認められる債務と解される。
 本件債務は、保険金によって補填されることが確実であって、請求人の支払う必要のないものだから「確実な債務」にあたらない。また、保険金受取人はA銀行であり、乙(被相続人)が保険料を負担した事実は認められないから、請求人の主張は失当である。
 以上の理由により、本件債務は相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とならない。

 保険は、契約の内容によって税金の取扱いが異なります。保険に係る税金の取扱いや相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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