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家と財産を守るための~不動産の相続対策 平成31年地価公示について

 平成31年地価公示では、全用途平均が4年連続の上昇となり、地価の回復傾向が全国的に広がっています。




 先日、平成31年の「地価公示価格」が発表されたというニュースを見ました。今回の地価の動きについて教えてください。また、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係はどのようになっているのでしょうか?




 平成31年の地価公示では、全国平均で全用途平均が4年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大しています。地価公示価格の約8割が相続税評価額を計算する上での“相続税路線価”といわれていますので、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、税額にも影響を与える可能性があります。




1.地価公示制度

 地価公示という制度は、地価公示法という法律に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格(土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格)を3月に公示しているものです。
 地価公示の主な役割としては、以下のようなものがあります。

  1. 一般の土地の取引に対して指標を与えること
  2. 不動産鑑定の規準となること
  3. 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
  4. 土地の相続税評価および固定資産税評価についての基準となること
  5. 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること 等

 なお、評価基準日から公示日までの間に、リーマンショックのような大きな経済情勢の変化や、東日本大震災のような天変地異級の大災害が発生したとしても、これらの事象は価格に反映されないことに留意が必要です。

2.平成31年地価公示の動向

 それでは、平成31年の地価公示による地価の動きを確認しましょう。
 全国平均では、全用途平均が4年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大しています。用途別にみると、住宅地は2年連続、商業地は4年連続、工業地は3年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めています。
 東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれについても各圏域で上昇が継続し、上昇基調を強めています。
 また地方圏をみると、全用途平均・住宅地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じました。商業地・工業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。地方圏のうち、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方中枢都市では全ての用途で上昇が継続し、上昇基調を強めています。地方中枢都市を除くその他の地域においても、商業地が平成5年から続いた下落から横ばいとなり、工業地は平成4年以来27年ぶりに上昇に転じました。

 国土交通省では住宅地・商業地・工業地の用途ごとに、地価の動向と背景を下記のように分析しています。

(住宅地)

  1. □ 雇用・所得環境の改善が続く中、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあり、交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調。

(商業地)

  1. □ 良好な資金景気回復、良好な資金調達環境の下、次を背景に需要が拡大。
    1. 主要都市でのオフィス空室率の低下、賃料上昇による収益性の向上
    2. 外国人観光客の増加等による店舗、ホテル等の進出意欲が旺盛
    3. インフラ整備や再開発事業等の進展による利便性の向上や賑わいの創出 など

(工業地)

  1. □ インターネット通販の普及・拡大に伴う物流施設や工場の立地の増加等、全国的に工業地への需要の回復が見られる。

 東京・大阪・名古屋の三大都市圏から始まった地価上昇は、札幌・仙台・広島・福岡の地方中核都市へ、さらにその他の地域へと波及しており、国土交通省は全国的に地価の回復傾向が広がっているという見解を示しています。今回、最も地価が上昇したのは、外国人観光客の人気が集中するニセコを擁する北海道倶知安町の商業地で、年間の上昇率は58.8%にも及びます。一方、昨年7月の豪雨により浸水や土砂災害等の被害が生じた地域では需要が大きく減退し、豪雨災害の被害が大きく報じられた岡山県倉敷市真備町の住宅地が今回、最も地価が下落した地点となり、年間で17.7%の下落となりました。このように、マクロ経済の動向や自然災害などの影響が地価にも鮮明に反映されていることがみて取れます。

3.地価公示価格と相続税評価額との関係

 最後に、地価公示価格と相続税評価額との関係について説明します。
 地価公示価格は、相続税評価額や固定資産税評価額の基準になるとされています。相続税や贈与税を計算する際の土地評価に、相続税路線価を用いる場合があります。相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、両者は密接な関係があります。
 そのため今後7月に発表される相続税路線価についても、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、税額にも影響を与える可能性があります。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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万一に備えるための~保険の相続対策 生命保険の失効と相続

 生命保険契約が「失効」すると死亡保険金を受け取ることができず、相続税の保険金の非課税の適用も受けられません。




 夫が亡くなり、生命保険について確認したところ、保険料をしばらく払わずに放置していた契約が見つかりました。
 保険会社へ問い合わせたところ、「『失効』しているため死亡保険金は支払われない。解約返戻金があるので相続人の方で所定の請求手続きをとってください。」といわれましたが、よく理解できませんでした。
 「失効」とはどのような状態なのか、また、相続においてどのように扱われるのか教えてください。

  1. <生命保険契約の内容>
    • 契約者(=保険料負担者):夫
    • 被保険者:夫
    • 保険種類:終身保険
    • 死亡保険金受取人:妻
    • 死亡保険金額:1,000万円
    • 解約返戻金:200万円




 「失効」は、契約の保障が切れた状態をいいます。この場合に支払われる解約返戻金は相続財産となり、相続税の計算上、保険金の非課税の適用はなく、全額が課税対象となります。




1.失効とは

 生命保険は保険料を支払わずに所定の猶予期間が経過すると、保険料自動振替貸付制度(※1)が適用されていない限り、保障の効力が切れます。これを「失効」といいます。

 「失効」状態では保障の効力を失っているため、死亡保険金(ご相談のケースであれば1,000万円)を受け取ることはできません。解約返戻金があればこれを請求することはできますが(ご相談のケースでは200万円)、解約返戻金は死亡保険金とは異なり、他の資産と同じように相続財産として扱われ、遺産分割の対象になります。
 また、「失効」状態では死亡保険金受取人の権利も消滅しており、死亡保険金受取人が誰に指定されていたかは関係ありません。

 

2.解約返戻金に対する相続税の取扱い

 上述のとおり、解約返戻金は相続財産となるため、相続税の計算において課税対象となります。
 また、解約返戻金は死亡保険金ではありませんので、相続税の計算上で非課税となる「500万円×法定相続人の数」を適用することはできません。

 

3.失効にならないようにするには

 契約が有効中に保険料が未払いとならないよう、保険料自動振替貸付制度(※1)を付加するなど、払込方法(経路)を変更することで、「失効」にならないようにする方法もあります。
 また、どうしても保険料の支払いが困難になったときは、減額(※2)、払済保険への変更(※3)、延長定期保険への変更(※4)などにより、意向にあわせた見直しを検討できる場合もあります。
 ただしこれらについては、保険会社や保険種類、解約返戻金の金額等により対応できない場合もあります。できるかどうかは、保険会社へご相談ください。

 

 せっかく相続対策のために契約しても、保険料を払い忘れて「失効」させてしまうと目的を果たせなくなります。被保険者が生存中であれば、未納分の保険料を支払い、かつ、健康状態について所定の手続きをとって要件をクリアすることにより契約が復活できるケースもありますが、相続発生後に復活させることは不可能です。生命保険は、加入時だけでなく加入後も、保険料の支払いに無理はないか、見直した方がよい点はないか、など定期的に確認をしながら、状況にあわせた無理のない契約にすることが「失効」しない、最も大切なポイントといえるでしょう。

  1. (※1)保険料自動振替貸付制度
    保険契約を有効に継続するために、解約返戻金の範囲内で保険料を自動的に保険会社が立て替える制度。
    … 立て替えられた保険料には保険会社所定の利息が付きます。
  2. (※2)減額
    保険金額を減らすこと。
    … 保険金額を減らした分、保険料の負担は軽くなります。
  3. (※3)払済保険への変更
    保険料の支払いを中止して、その時点の解約返戻金をもとに保険期間を変えずに保障額の少ない保険に変えること。
    …付加している特約は消滅する点に注意しましょう。
  4. (※4)延長定期保険への変更
    保険料の支払いを中止して、その時点の解約返戻金をもとに保険金額を変えずに死亡保障だけの定期保険に変えること。
    … 保険期間が短くなることもあります。付加している特約は消滅する点にも注意しましょう。

 

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トラブルにならないための~法律の相続対策 自筆証書遺言の有効性

 今回は相談事例を通じて、自筆証書遺言の有効性について、ご紹介します。



 父が自筆の遺言を遺して亡くなりました。内容は、自宅の土地は私にくれるというものでした。きちんとした人でしたので、本などを参考にして書いたのでしょう、すべて手書きで書かれていましたし、日付、署名、押印もありました。
 遺言を見つけたあとはすぐに家庭裁判所へ行き検認も済ませたので、この遺言を使って土地の名義を変えたいのですが可能でしょうか。

 遺言の内容(抜粋):「●●町の土地は長男のAに任せる。」




 遺言で財産を特定の人に渡すには、「渡すこと」を明確に記載しなければなりません。




 この遺言の場合、「任せる」と書かれていますが、「任せる」の意味は、「①するがままにしておく。放置する。②相手のするままになる。さからわず、なされるがままでいる。ゆだねる。③他の人に代行してもらう。委任する。④下襲の裾などを後ろに流れ引くままにする。⑤従う」です(広辞苑より)。任せるという言葉には渡すという意味が含まれておりませんので、この遺言の文面から、お父様が土地を渡したいという意思を読み取ることが可能かどうか、ということになります。

 判例では、「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきもの」(昭和58年3月18日最高裁判決)とあるので、抜粋した条項のみでは可否について判断できません。

 なお、この遺言では登記ができないという場合は、ご自宅の土地について、通常の相続手続きを行う必要があります。そのため、全相続人で誰が取得するのかを話し合っていただき、遺産分割協議書を使って名義を変更することとなります。

 このような疑義がないように、物件や承継方法等を明らかにして記載するのが良いでしょう。特に自筆証書遺言は、形式的な要件はクリアしているにも関わらず、内容に有効性がないばかりに使えない、ということが起こりうるため、遺言の作成を検討する際には、専門家に相談する、公正証書遺言での作成を検討するなど、もう一歩踏み込んで考えていただくことをおすすめします。


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お金に困らないための~税金の相続対策 弔慰金に相続税がかかる場合

 「弔慰金」名目であっても、退職金として認められる部分や一定額を超える部分は、退職手当金等として相続税の対象となります。




 私の妻が、実家への帰省中の事故で亡くなりました。生前妻が勤務していた会社から死亡退職金(1,500万円)と弔慰金(150万円)を受け取りましたが、この弔慰金に相続税はかかるのでしょうか?




 被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質、退職手当金と認められる部分や一定額を超える部分は、退職手当金等として相続税の課税対象となります。




 弔慰金とは、被相続人の雇用主などが、亡くなった従業員を弔い、遺族に対して慰めの気持ちを込めて渡すお金で、退職金とは別に支払われるものをいいます。

 このように弔慰金は、その支払いの目的や性質から、通常は税金がかからないこととされています。しかし、名目は弔慰金であっても、実際には死亡退職金と同様と認められる場合や、実務上一定額を超える部分については、退職手当金等として相続税の課税対象となります。

 

1.「一定額」とはいくら?

 相続税の課税対象となる“一定額を超える部分”の「一定額」とは、法令上で明確な金額が定められているわけではありませんが、相続税の課税上の解釈についてまとめられている相続税法基本通達で、原則として雇用主等から受ける弔慰金や花輪代、葬祭料等(以下、弔慰金等)の合計額が以下の金額を超える部分について、退職手当金等として相続税の課税対象として取扱う旨が記載されています。

 そのため、実務上はこれに倣い、以下の金額を「一定額」として取扱っているのが現状です。

  1. ① 被相続人(奥様)の死亡が業務上の死亡であるとき
    →被相続人の死亡当時の普通給与(※)の3年分に相当する額
  2. ② 被相続人(奥様)の死亡が業務上の死亡でないとき
    →被相続人の死亡当時の普通給与(※)の半年分に相当する額

    (※)普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。

 ご相談の場合には、奥様の死亡原因が実家への帰省中の事故、ということですので、業務上の死亡でないと判断しますと、上記の②に該当します。
 そのため、たとえば奥様の普通給与が月30万円だったとしますと、

30万円×6ヶ月=180万円

が「一定額」となりますので、弔慰金として受け取った150万円については、その全額を課税対象とする必要はないと考えられます。

 

2.業務上か否かの判断

 上記1.の通り、業務上の死亡か否かで「一定額」の計算が異なります。この場合の、“業務上の死亡”について、業務中に亡くなった方の全てが“業務上の死亡”になるわけではありません。

 この“業務上の死亡”についても、相続税法基本通達で解釈が示されており、これによれば、直接業務に起因する死亡又は業務と相当因果関係があると認められる死亡をいう、としています。

 そのため実務上、業務上の死亡か否かの判断において、業務中の事故などの場合にはその因果関係が比較的明らかですが、突然死などの場合には、その原因と業務との因果関係を明らかにする必要がある点にご留意ください。


 なお、一定の法律等に基づく弔慰金等を遺族が受け取る場合は、退職手当金等に該当しないものと実務上は取扱われているほか、上記の「一定額」の計算にも影響を及ぼす細かな解釈も別途存在しています。実際に弔慰金を受け取る場合は、税の取扱いについて当事務所へご相談ください。


<参考>
 相法3、相基通3-18、3-19、3-20、3-22、3-23、国税庁HP「№4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」

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家と財産を守るための~不動産の相続対策 不動産の売却方法

 

 不動産を売却するときの方法について、教えてください。




 母が亡くなり、実家が空家の状態です。実家は敷地が広く、庭の手入れなどが大変ですし、私には持家がありますので、売却することを考えています。不動産を売却することは初めてなので、どのように売却していけばよいのか悩んでいます。不動産の売却方法を教えてください。




 不動産を売却する方法は、大きく分けて不動産業者が直接買い取る「買取」と、仲介業者を通じて買い手を探す「仲介」があります。




 「買取」と「仲介」について、それぞれのメリット、デメリットを中心に以下、解説いたします。

1.買取

(1)メリット

 「買取」のメリットは、「仲介」に比べて早期に不動産を売却することができることや、売却することを周囲の人に知られにくいこと、などです。

(2)デメリット

 「買取」のデメリットは、「仲介」に比べて売却価格が低くなる傾向にあることです。なぜなら「買取」は、不動産業者が対象不動産を買い取り、その後リフォーム等をし、買取価格にそれらの経費や利益を上乗せして再販売するためです。

2.仲介

(1)メリット

 「仲介」のメリットは、広く市場で買い手を探し、妥当性のある金額で売却ができることです。

(2)デメリット

 「仲介」のデメリットは、売却するまでに時間がかかってしまうことや、周囲に不動産を売却しようとしていることが分かってしまうこと、などです。


 よって、急いで現金化したい場合や、周囲に不動産を売却することを知られたくないなどの事情がある場合は、「買取」を選択することになりますが、そうでなければ「仲介」での売却をお勧めします。

3.仲介-入札方式

 「仲介」として売却する方法のうち、土地が広く住宅やマンションでの分譲が可能な場合は、相手方を分譲業者等に絞り、「入札」という方式を採ることで、より高く売れる可能性があります。
 「仲介」での一般的な売却方法では、取引相場等を参考に、売買価格の上限(売出価格)を設定します。実際に売買する価格は、売出価格より下がることはあっても上がることはありません。
 一方、「入札」によって売却する場合は、取引相場等を参考に最低入札価格を設定します。開札した結果、入札価格が最低入札価格を下回れば売買は実現しません。取引条件にもよりますが、一番高く入札された価格が、実際に売買する価格となります。

 「入札」での売却は、購入する側に競争原理が働くため、高値で売却できる可能性が高くなるのです。従って、分譲で売却できるような土地であれば、「入札」での売却を検討したいところです。

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万一に備えるための~保険の相続対策 相続対策でよく活用される保険 ~一時払い終身保険~

 相続対策として一時払い終身保険は効果的ですが、十分な検討が必要です。




 現在、生命保険には加入していないのですが、相続対策のため銀行から一時払い終身保険への加入を勧められました。どのような保険種類なのか、相続対策として有効な保険なのか教えて下さい。

  1. <家族構成>
    1. Aさん(相談者)、配偶者、お子様2名 (=Aさんの法定相続人3名)
  2. <加入事例>
    • 保険種類:一時払い終身保険
    • 契約形態:契約者=被保険者=Aさん、受取人=配偶者
    • 契約内容:保険金額1,000万円、一時払い保険料980万円




 一時払い終身保険への加入は、相続時の課税財産を減らす効果をもたらしますが、一方、一度に高額な保険料の支払いを要し、中途解約では元本割れすることもあります。相続対策として活用するには、資金の余裕があるかなど、中長期的な視点で考慮することが肝要です。




 一時払い終身保険とは、一生涯保障が続き、加入時に一括で保険料を支払う保険です。この一時払い終身保険の相続対策としての効果と注意点について、以下、解説いたします。

 

1.相続対策としての効果

 生命保険には、保険金受取人(以下、受取人)が相続人の場合に、次の相続税の非課税枠があります。この非課税枠内であれば、受け取った保険金は、相続税の課税対象にはなりません。

相続税における生命保険の非課税枠:500万円×法定相続人の数


 今回のケースでは、Aさんは加入時に保険料として現金980万円を支払います。Aさんの財産のうち、現金980万円が減ります。一方、Aさんが死亡した時には、保険金1,000万円を受取人である妻が受け取ります。

 生命保険金は、Aさんの遺産ではなく受取人固有の財産ですが、相続税においては、「みなし相続財産」として課税対象となります。但し上記の非課税枠として、Aさんの場合は1,500万円(500万円×3人)あるため、相続人である妻が受け取った保険金1,000万円は、その全額が相続税の課税対象になりません。そのため、現預金で保持するよりもAさんの相続税を軽減する効果があります。

 また、受取人を指定することができるため、渡したい人に保険金という形で財産を残すことができます。

 さらに、上述の通り、保険金は受取人固有の財産であるため、預貯金のように一定の相続手続きを要せず、受け取った保険金はすぐに自由に使うことができます。これにより、葬儀費用や受取人の当面の資金の確保ができる、という点も利点といえます。

 そのため一時払い終身保険は、一般的に相続対策としてよく活用されます。

 

2.一時払い終身保険の注意点


(1)一定期間、元本割れする

 加入後、一定期間中に解約すると、解約時に保険会社から戻ってくるお金(解約返戻金)が支払った保険料より少なくなります。相続対策で加入した場合、途中でこの保険を解約する可能性は低いとはいえ、万が一、お金が必要になった時に、解約のタイミングによっては元本割れしてしまうため、注意が必要です。


(2)保険料が高額のため、手元の資金が減る

 加入時に高額の保険料を一括で支払うため、手元の資金が一度に減ります。相続対策としては有効ですが、当面の生活費や病気・けがに備えた緊急予備資金などを確保した上で、加入を検討する必要があります。


 一時払い終身保険は、仕組みもシンプルで相続対策に有効な保険として、銀行の窓口でも積極的に販売されている保険商品ですが、一定期間は解約がしづらいためすぐの見直しがしにくい商品でもあります。相続対策として加入する場合は、メリット、デメリットを十分理解した上で検討しましょう。

 

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トラブルにならないための~法律の相続対策 特別縁故者 ~被相続人と特別の関係(縁故)にあった者~

 今回は相談事例を通じて、特別縁故者について、ご紹介します。



 最近夫が死亡しました。私達は、長らく夫婦として暮らしてきましたが、籍は入れておりません。私達の間に子はありませんし、夫の両親は既に他界しており、兄弟もおりませんので、夫の相続人は誰もいないと思うのですが、相続人がいない場合は、財産は国へ帰属すると聞きました。私が財産をもらう方法はあるのでしょうか。




 家庭裁判所に対して特別縁故者の申立をし、裁判所に認められることによって、国へ帰属させることなく財産を取得することができます(民法第958条の3)。




 相続人が不存在の場合、原則として亡くなった方の財産は国庫に帰属します。しかし、家庭裁判所の審判により特別縁故者と認められることによって、その財産を取得することができます。特別縁故者とは、「被相続人と特別の関係(縁故)にあった者」を指し、その範囲は次の通りです。

1.被相続人と生計を同じくしていた者
 事実上の夫婦関係にある内縁の夫や妻、事実上の養子関係にある者などがこれに当たります。
2.被相続人の療養看護に努めた者
 生計を同じくはしていなかったものの、療養看護に力を尽くした親族や隣人などがこれに当たります。
3.その他特別の縁故があった者
 上記1、2に準じて、被相続人との間に精神的、物質的な交流関係にあった者がこれに当たります。(大阪高裁昭和46年5月18日)

 今回は被相続人と生計を同じくしていた者に該当するため、特別縁故者の審判がされる事案と考えられます。ただし、申立があった場合に限り、家庭裁判所は相続財産の全部または一部を分与するかどうかを決定するため、特別縁故者として財産を取得したいときは必ず申立をする必要があります。
 なお、特別縁故者への財産の分与は、相続人がないことが前提となりますので、特別縁故者の申立を行う前に相続人を探すための手続きが必要となります。

 相続人を探す手続きや、特別縁故者の申立は、ともに期限などが細かく規定されておりますので、申立をされる際には専門家へご相談されることをおすすめします。


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お金に困らないための~税金の相続対策 財産から控除できる葬式費用とは?

 相続税を計算する上で、具体的にどのようなものが葬式費用として財産から控除できるのでしょうか?




 相続税の申告書を作成するにあたり、必要書類等を収集しています。葬式費用については、相続税の計算上、財産から控除できるものとできないものがあると聞きました。具体的にどのようなものが控除できるのか、教えてください。




 相続人等が負担した「葬式費用」は、相続税の計算上、財産から控除します。ただし、この「葬式費用」は限定されており、例えば相続人等が負担した通夜や告別式の費用は「葬式費用」となりますが、香典返しの費用は「葬式費用」に該当しません。




 葬式費用は亡くなった人(以下、被相続人)が負担するものではありませんが、相続が発生することによって必然的に生ずる費用ですので、相続人等が負担した一定の「葬式費用」は、相続税を計算する上で、財産から控除します。

 この場合の「葬式費用」は、以下のとおり列挙されており、具体例は末尾のとおりです。

 

1.葬式費用となるもの
  1. ①葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式を行うものにあっては、その両者の費用)
  2. ②葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
  3. ③①又は②で掲げるものの他、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
  4. ④死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

 

2.葬式費用でないもの
  1. ①香典返戻費用
  2. ②墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
  3. ③法会に要する費用
  4. ④医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

 

3.葬式費用となるかどうかの具体例
内容 葬式費用に
・該当→○
・非該当→×
備考
病院や自宅から葬儀会場までの回送費

通夜、告別式の費用

葬儀社への支払いの他、当日に通常要する飲食代、車代、お布施等も○
火葬料

通夜のふるまい

式場のお料理のみならず、近くのスーパーなどで購入した食事・菓子類も○

位牌

×

礼服のレンタル料、着付け代

×

供花

○(※1)

(※1)相続人以外からの供花は×

初七日法要費用

×(※2)

(※2)告別式当日に初七日も行う場合は〇

墓地、墓石の購入費用

×

粗供養(香典返し)

×(※3)

(※3)会葬御礼として通夜や告別式の当日に参列者全員に配るものは〇

 


 葬式費用については、宗教や地域的慣習、また被相続人の職業や社会的地位などによって、規模や必要な費用などが大きく異なります。また、上記以外でも葬式費用になると考えられるものもあります。判断に迷った場合には、当事務所へお問い合わせください。


<参考文献>
 相法13、相基通13-4、13-5、国税庁HP

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家と財産を守るための~不動産の相続対策 相続させない方が良い不動産

 相続させない方が良い不動産があれば、教えてください。




 不動産を多数所有していますが、相続させない方が良い不動産があれば、教えてください。




 相続させない方が良い不動産として、相続税評価額が実勢価格を上回るもの、管理が困難なもの、値下がりが予想されるもの、などが考えられます。これらは相続に適さないため、生前に処分するなどの対策が望まれます。




 相続税を計算する際の不動産の評価額(以下、相続税評価額)は、実際に取引される価格(以下、実勢価格)より低くなる場合が多く、相続税の計算をする上においては、現金を持っているよりもメリットがある資産と考えられています。
 しかし、以下のような不動産は相続税を計算する上ではデメリットが多く、相続させない方が良いと一般的に考えられています。

  • ○相続税評価額が実勢価格を上回っていると思われる不動産
    • 住宅用地等としての需要が少なく、相続税評価額を下回る価格でしか売却できない地域の土地
    • 個別要因による実勢価格の減少額が、相続税評価額を計算する上で減額できる額を大きく上回っている土地
      • 道路や隣地との高低差が激しい土地
      • 間口が狭い、不整形等により建築が困難な土地
    • 過去に事故等(自殺・殺人事件等)があった又は近隣に嫌悪施設がある不動産
    • 相続税評価額が実勢価格を大幅に上回っている次のような建物(主に鉄骨造又は鉄筋コンクリート造)
      • バブル期等、建築費が高い時期に建てられた豪華な建物
      • 規模の割に収入が少ない賃貸建物
      • 利用が困難な建物(建物取壊しにより価値が上がる不動産)
    • 地代が低額である昔からの貸地(底地)
  • ○次の世代による管理が困難と思われる不動産
    • 稼働率が低い賃貸不動産
    • 大規模修繕等、建物のメンテナンスがほとんど行われていない不動産
    • 遠方にある未利用不動産
    • 建物が旧耐震基準である未利用又は賃貸不動産(取壊し予定の場合を除く)
  • ○値下がりが予想される相続後売却予定の不動産
    • バブル崩壊後値下がり続けて、上昇傾向がみられない売却予定の不動産
    • 賃料水準の低下が著しい売却予定の賃貸不動産
  • ○相続の争いの原因となりそうな不動産
    • 全財産の中で大半の価値を占めている不動産
    • 相続により取得することを嫌がられる不動産

 これらの不動産を所有されている方は、早期の売却を検討されると良いでしょう。
 ただし、“相続させない方が良い不動産”は、買い手からみると“買わない方が良い不動産”に該当しますので、売却できない又は売却にかなりの時間を要する可能性があります。
 売却検討の際、売却が困難であるとすぐに諦めるのではなく、“相続させない方が良い不動産”を“相続させても良い不動産”に転換できるよう、実行可能な対策を講じていただくと良いでしょう。

 なお、売却益を期待して購入した山林は、現在のところ売却を含め有効な対策が見つからない状況であり、“相続させるしかない不動産”といえます。このような状況にならないよう、不動産投資を行う前に、当事務所へご相談ください。

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万一に備えるための~保険の相続対策 二次相続を見据えた生命保険の活用

 いくら対策を施しても、想定どおりにいかないのが世の常です。何かを利用するときは、メリットデメリットをきちんと理解して納得することが肝要です。




 夫の相続対策を検討している中で、保険会社から次の提案を受けました。これはその次の相続(二次相続)も見据えて、妻である私も生命保険に加入した方がよいというものでした。この提案はどのような効果があるのでしょうか?
 現在、私は医療保険(死亡保障なし)に加入していますが、死亡保障の保険には加入していません。

  • <家族構成>
    • 夫80歳、妻70歳、子2人(独立して別生計)
  • <提案内容>
    • ①次の保険に加入
      • 保険種類・・・一時払終身保険 1,000万円
      • 契約形態
        契約者(保険料負担者)…夫
        被保険者…妻
        死亡保険金受取人…夫
    • ②夫が妻より先に死亡(相続発生)
       ①の契約内容を変更
      • 契約者…夫→妻
      • 死亡保険金受取人…夫→子




 この提案内容どおりいけば、ご主人の相続時、あなたの相続時、各々相続税を軽減できる可能性がみられます。ただし、この可能性には“前提”があります。“前提”どおりにいかなかった場合の問題点も理解しておかれるとよいでしょう。




 今回の提案内容に基づいた保険の課税関係や、メリットとデメリットは、それぞれ次のとおりです。

1.税務上の取扱い

 夫の相続(一次相続):

  • 「生命保険契約に関する権利」として、夫の相続財産となる。
  • 相続発生時の解約返戻金相当額が相続税の課税対象となる。

 妻の相続(二次相続):

  • 死亡保険金が、妻の相続財産とみなされる。
  • 死亡保険金のうち、非課税限度額を超える部分について相続税の課税対象となる。
  • 非課税限度額とは、“生命保険の非課税(500万円×法定相続人の数)”で計算した金額。
    法定相続人とは、相続を放棄した人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
    ご相談のケースで子2人が相続人であれば、「500万円×2人=1,000万円」が非課税限度額となります。
2.メリットとデメリット

 このプランの有用性は、主に次のとおりです。

  • 夫が一時払終身保険の保険料負担者となることで、妻自らが保険料を負担することなく、妻の相続時の資金と相続税計算上の非課税限度額が確保できる。
  • 一次相続発生時、解約返戻金相当額が払い込んだ保険料を下回っていれば、現金で保有しているよりも夫の相続財産の評価額が下がる。つまり、相続税の対象となる金額が減ることで、相続税が軽減できる。

 ただし、このプランどおりにいかなかった場合、注意が必要です。例えば、次の点です。

  • 妻が夫より先に亡くなった場合、夫が受け取る死亡保険金は相続税ではなく、所得税が課税される。つまり、想定どおりのメリットを享受できないことになる。
  • 内部環境や外部環境の変化により解約しなければならなくなった場合、経過期間によっては返戻金が払込保険料を下回り、元本割れすることがある。



 将来の相続を考えたとき、その次の相続まで考える必要があるのかどうかは、対象者の財産の保有状況、家族構成等を考慮に入れる必要があります。さらに、想定どおりにいかなかった場合の問題点を洗い出し、リカバリーについてもあわせて検討されておかれるとよいでしょう。相続対策に関することは、当事務所へご相談ください。

<参考条文等> 相法3、12、財産評価基本通達214 他

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