お知らせ

 年の瀬も押し迫り、一年を振り返る番組や企画が多くなる時期となりました。
 各世代の青春時代を振り返るテレビ番組も多く見受けられます。
 一方、インターネットやスマートフォンの普及を背景に、
 なくなっていくものも多くあります。

 今は、調べたいことがあれば、スマートフォンで検索さえすれば、
 いとも簡単に情報が得られるようになりました。
 その一つが、いわゆる雑誌と呼ばれるものです。
 特にファッション誌や情報誌の休刊が相次いでいます。

 80年、90年代には、お洒落の流行を逃さないため、
 友達と遊びに行く際の情報源として、
 欠かすことができない必須アイテムでした。
 そんな、ファッション誌の登場し始めた60年代、
 ミニスカートが流行りはじめ、ストッキングが発売されたのもこの時期です。

 女性がストッキングと呼ぶのは、いわゆるパンストのこと。
 ボディコン・ブームで89年にピークに達した後、
 年々、その需要は下がり続け、昨年度はピーク時の10分の1程度まで、
 縮小していたそうです。

 ピークが去った後、女子学生を中心に「ナマ足ブーム」が訪れ、
 厳しい冬の時代を迎えることとなります。 
 その後も、厚手のタイツから、レギンス、トレンカと、
 ストッキングは女性から敬遠され続けていました。

 2010年ころからレギンスの上にショートパンツやワンピースを着る、
 ファッションが流行ってきたことからパンスト人気が復活します。
 脚を出すことに抵抗感が薄れてきたことが後押しとなり、
 素足をカバーするための、ストッキング利用が見直されたそうです。

 ストッキングは、駐留地となった戦後の日本に、
 アメリカから入ってきたファッションのひとつです。
 それまで、国内では絹製の高価なものしかありませんでしたが、
 既に、アメリカではナイロン製のストッキングが普及していました。

 国内で初めてストッキングを発売したのは、肌着メーカーのアツギです。
 ストッキング欲しさに米兵に近寄っていく女性を見て、
 堀録助氏は国内でストッキングを生産することを決意します。

 戦後、堀氏は厚木編織(現 アツギ)を立ち上げ、
 捕鯨用のロープ等を生産していましたが、
 設備を整え、肌着や靴下の製造を試みていたところでした。

 それまでのストッキングは、織り上げた生地を後ろ側にあたる部分で、
 縫い合わせて脚の形にするものでした。
 さらに、この機械は当時の値段で何千万もするとても高価だったのです。

 アメリカで、縫い合わせをしないシームレスという方法が、
 話題になっていることを知ると、早速その製法の研究を始めます。
 機械メーカーに開発を依頼して、国産第一号のストッキングを完成させたのです。

 パンティ・ストッキングとして全国一斉発売されたのが68年のこと、
 丈夫で、美しく、それでもって安価なストッキングは、
 国内はもとより、海外の評価も高く、重要な輸出商品となったのです。

弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2025年12月27日(土曜日)~2026年1月4日(日曜日)

成年後見制度とは

今回は相談事例を通じて、成年後見制度についてご紹介します。

Q
今月のご相談

 近頃、父の物忘れが多くなってきました。今は父一人で買い物をしたり、ATMでお金を引き出したりすることができていますが、認知症が心配です。将来的には、おそらく父1人では行動できなくなると思うのですが、今から準備しておくとよいことはありますか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 認知症などにより判断能力が低下し、日常生活に支障をきたすようになってしまった方を保護・支援するために「成年後見制度」という制度があります。お父様の判断能力がまだあるのでしたら、「任意後見契約」を結んでおくことをお勧めします。

A-2
詳細解説

 成年後見制度は2つに分けることができます。

 1つ目はすでに判断能力が低下してしまった方について、裁判所に申し立てる「法定後見」です。
 2つ目は本人(本件ではお父様)に判断能力があるうちに「私の判断能力が低下したときにはあなたに財産管理を任せる」旨を、本人と管理を任せたい人の間で契約をする「任意後見」です。

 それぞれの特徴や使い方を簡単にご説明します。

1.法定後見(民法第7条、第843条、第844条)

 法律で決められた支援・保護のことで、すでに判断能力が低下した人のための制度です。家庭裁判所が本人等の申し立てにより財産管理等をする人(以下、後見人等)を決めることで、後見人等が本人に代わって財産管理等をすることができるようになります。

 後見人等は、裁判所がその人の職業や経歴などの一切の事情を考慮して選ぶことになります。候補者として身内や知り合いを挙げることはできますが、候補者が後見人等として適任でないと判断される可能性もあるので、後見人等が誰になるか分からない、という点が特徴の1つです。

 なお、後見人等が選ばれた後は、正当な事由がない限り後見人等の任務を辞めることはできません。後見の任務が想像より大変で、「辞めたい」と思っても辞められない可能性がありますので、事前に任務内容を理解しておくとよいでしょう。

2.任意後見(任意後見契約に関する法律第2条、第4条、第7条、第9条)

 任意後見は本人の判断能力があるうちに、自分の判断能力が低下したときに誰に財産管理等を任せるのかを決め、契約する制度です。

 判断能力が低下したら、本人やその家族等が裁判所に申し立て、任意後見監督人を選任してもらうことで、任意後見契約が発効します。任意後見監督人は、財産管理等をする人(任意後見人)の事務を監督し、裁判所に報告をする人です。

 任意後見監督人が選任される前であれば、いつでも契約を解除することができます。しかし、任意後見監督人が選任された後だと、法定後見と同様に正当な事由がなければ辞めることはできませんので、事務内容を事前に理解しておく必要があるでしょう。

 詳しくは専門家にご相談ください。機会があればと思っていると先延ばしになってしまうので、話を聞くだけでもお早めに行動することをお勧めします。

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不動産小口化商品と相続税対策

不動産小口化商品を勧められましたが、相続税対策になるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 付き合いのある金融機関から、相続税対策になるからと、不動産小口化商品を勧められました。本当に、相続税対策になるのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 恐らく、賃貸用不動産として評価する不動産小口化商品を勧められたのだと思われます。これを前提にしますと、現行においては、相続税対策になる可能性は高いものと考えます。ただし、今後は不明です。詳細解説にてご確認ください。

A-2
詳細解説
1.不動産小口化商品とは

 不動産投資は多額な資金が必要で、一投資家のみで投資するには難しい場面があります。そこで、持分を分割(小口化)することで、投資しやすい商品として取引が可能となります。このような仕組みを利用した金融商品を、不動産小口化商品といいます。

 不動産小口化商品の主な種類は、次のとおりです。

任意組合型 投資家同士で組合を作り、不動産を共同で所有・運用。投資家は組合員として所有権を持つ。
匿名組合型 投資家は事業者に出資し、運用益の分配を受け取るが、不動産自体の所有権は持たない。
信託受益権型 投資家は信託の受益権の所有者として、収益の分配を受け取る。
賃貸型 投資家が小口化された不動産の一部を所有し、賃貸収入を得る。

 それぞれに特徴はありますが、ここでは相続や贈与時の評価について言及しますと、賃貸用不動産として相続税評価額となるのは、任意組合型、信託受益権型、賃貸型です。

2.相続税対策の事例

 公表されている資料(※)にある、不動産小口化商品の贈与により相続税対策を行った事例をご紹介します。

 この事例では、3,000万円で購入した不動産小口化商品を、480万円の評価額で孫に贈与し、孫は贈与税額として49万円を納付。贈与の翌年に、取得価額とほぼ同額で孫が売却したものです。

 単に3,000万円の現金を孫に贈与した場合の贈与税額は、1,195万円です。これを49万円まで圧縮したうえで、実質現金3,000万円相当額を孫に贈与できた、という結果となりました。

 評価額をここまで引き下げられたのは、信託受益権を賃貸用不動産として評価(=相続税評価額)したためです。

 賃貸用不動産の相続税評価額は、借家人の支配権による利用の制約等を考慮して評価するため、評価額が低くなる傾向にあります。

 そのため、市場価格と相続税評価額のかい離が、この事例のように大きくなる場合があります。

 この資料は、国税庁による「財産評価を巡る諸問題」と題した説明資料の一部です。

 同資料には、上記以外の不動産小口化商品の贈与事例も掲載されています。いずれも78~84%程度評価が下がっていました。不動産小口化商品の取得価額が高ければ高いほど、その影響額は大きくなります。

 このように現行では、上手く利用することで相続税対策につながります。ただし問題とされた場合には、個別対応とする課税処分が行われる可能性もあります。また、今回この資料が公表されたことで、国税庁が問題視していることが明らかとなり、改正の可能性が考えられる点にもご留意ください。

 なお、不動産小口化商品は、その商品自体のリスクもあります。投資の検討は慎重に行いましょう。

<参考>
(※)内閣府HP「第4回 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(2025年11月13日)資料一覧 【デ4ー3】国税庁説明資料(財産評価を巡る諸問題)」など

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 自動車メーカーのスズキでは、国内の工場等でインドをはじめとする
 多くの外国人が働いています。
 故郷から遠く離れた地で、満足した状態で働いてもらうためには、
 「食」が大事との考えに基づき、
 社員食堂では外国人向けのメニューを充実させているそうです。

 今年6月には、本社の社員食堂のインドカレーが発売されました。
 食堂で提供している13種類のうち、ベジタリアンでも食べられるよう、
 野菜、豆類を使い、辛さの異なる4種類をレトルト化したそうです。
 味には自信ありげで、インド出身従業員も
 「故郷の味」と太鼓判を押しているそうです。

 ビジネスの世界には、人が羨むような成功談がたくさんあります。
 そのひとつに、国内の自動車販売のシェアを、
 50%以上獲得した夢のような話があります。
 なんと、その偉業を成し得たのはスズキなのです。
 でも、シェアのお話は日本じゃなくてインドでのこと。

 スズキが進出する以前のインドには、様々な問題がありました。
 インド固有の階級制度により、服装、部屋、食堂などを、
 身分ごとに区別するのが当たり前でした。
 また、労働組合の結成率が高く、そのリーダーの多くは、
 働く時間が短くて、報酬が高いことを要求するだけでした。

 従業員も、欠勤することは当たり前で、
 勤務時間をきっちり働くことはしなかったのです。
 そんな事なので、賃金が低い割にはインドでの生産効率は、
 決して高くはありませんでした。
 加えて、事業の許可制度や税金も企業が成長するには足かせでした。

 スズキの社長 鈴木修氏がインドの政府系の企業から、
 合弁の話が持ち上がった時に思ったこと…
 「日本で一番になれないなら、インドで一番になればいい」
 というのも、日本の自動車メーカーの中ではスズキはいつも10位以下、
 一社ずつでも抜ければいい程度だったのです。

 いざ事業に乗り出した後も、解決しないといけない課題は山積状態、
 一つひとつ潰していくしかありませんでした。
 役員、管理職、一般社員の意識改革にはじまり、
 政府が取り仕切る規制緩和をしてもらうことの要求、
 部品を供給する下請けメーカーに対しても教育することになりました。

 その長年の成果が実り、
 インドでの事業にも日本と同じような生産体制が出来上がりました。
 このように、偉業と持て囃される話の影には、
 コツコツとした努力の積み重ねがあることがほとんどです。

 「GM(ゼネラル・モーターズ)が鯨で、うちがメダカ?
 いやうちはメダカじゃなくて蚊ですよ。
 だってメダカは鯨にのみ込まれてしまうが、
 蚊であれば空高く舞い上がることができるのでのみ込まれない。」
 GMと業務提携した時の鈴木氏の発言です。
 こんな時期だから、この言葉に重みが感じられるのではないでしょうか。

 進出し、最初に市場に投入した車種「マルチ800」は、
 発売30年を超え、庶民の足として根強い人気となりました。
 当時の首相の国民車構想に基づき、日本の2代目アルトをベースに開発され、
 長い歴史を誇っていましたが、排ガス規制の強化により、
 このほど生産を終える事となりました。

 その功績を、地元紙は品質管理や生産システムなどに広く影響を与えたと、
 このように称えたそうです。
 「消費者だけでなく、品質の向上への取り組み、
 生産の効率化などインド経済や企業に与えた影響は計り知れない」

空き家の相続登記

相続した一戸建ては空き家ですが、相続登記は必要ですか?

Q
今月のご相談

 空き家となっていた一戸建てを、2025年10月に父親から相続しました。今後住む予定はなく、売却か解体を検討しています。空き家でも相続登記は必要ですか? また、相続登記をせず空き家のまま放置するとどうなりますか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 空き家であっても相続登記をする必要があります。相続登記をせず空き家のまま放置した場合の問題については、詳細解説をご確認ください。

A-2
詳細解説
1.相続登記

 2024年4月1日より、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければならなくなりました。これは法律で義務化されたため、一般的に「相続登記の義務化」といわれています。

 正当な理由がなく相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 今回のご相談のような空き家であっても、相続登記は原則として必要です。ただし、相続後(遅くとも3年以内)に空き家を解体される場合、建物の相続登記は不要ですが、取り壊した後の建物滅失登記(建物の取り壊しを法務局に申請する手続き)は必要となります。この建物滅失登記は、解体してから1ヶ月以内に行わなければならないため注意しましょう。

2.相続登記をせず空き家のまま放置した場合

 相続登記をせず空き家のまま放置すると、次のような問題が起こり得る可能性があります。

  • 罰則の対象に:
    上記1.のとおり、3年以内に相続登記をしないと過料が科される可能性があります。
  • 売却、賃貸などができない:
    登記名義が故人のままでは、契約行為が成立せず、買主、借主などとの取引が進みません。
  • 権利関係の複雑化:
    時間が経つと二次相続が発生し、相続人の数が増加します。これにより、登記に必要な関係者が増え、遺産分割協議が複雑化します。
  • 固定資産税の負担が不明確に:
    登記名義が故人のままだと、納税義務者が曖昧になり、延滞や督促の対象になることもあります。
  • 空き家対策特別措置法の対象に:
    管理が不十分な空き家は「特定空き家」に指定され、行政からの指導や強制解体の対象となる可能性があります。

 このような問題を回避するためにも、相続登記は早めに済ませ、空き家のまま放置しないことが重要です。相続登記を完了させることで、売却、賃貸といった今後の活用方針を柔軟に検討できるようになります。また、登記名義人が明確になることで、補助金の申請などの各種手続きもスムーズに行えます。

 相続登記に要する費用の一部を助成したり、空き家の解体費用の一部を補助したりする自治体もありますので、不動産の所在地の自治体に確認してはいかがでしょうか。

 相続登記の手続きには、戸籍謄本や遺産分割協議書、固定資産評価証明書等の書類が必要です。手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼することで、正確かつ迅速に進めることができます。また、不動産の売却や利活用を検討している場合は、不動産会社やコンサルタントに相談することで、資産価値を最大限に活かす方法を見つけることができるかもしれません。

 空き家だからと放置せず、早期に相続登記を行い、今後の方針を明確にすることが大切です。専門家の力を借りながら、安心・安全な資産管理を進めていきましょう。
 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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死亡保険金を他の相続人に分ける

死亡保険金を他の相続人に分けることはできますか?

Q
今月のご相談

 父が高齢になり、相続について話し合っています。母はすでに他界しており、相続人は私と兄の2名です。父は生命保険に1件加入しており、死亡保険金受取人は私になっています。

 父が所有する自宅の土地建物は、同居している兄が相続する予定ですが、兄は自宅の土地建物を相続すると相続税が払えないかもしれないとの理由で、死亡保険金を分けてほしいと言っています。分けた場合の税金への影響を教えてください。

【契約内容】
  • 契約者・保険料負担者:父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:私(子) 100%
  • 死亡保険金:5,000万円
A-1
ワンポイントアドバイス

 現在の契約形態のまま、ご相談者様が死亡保険金を受け取りお兄様にその一部を分けた場合は、ご相談者様からお兄様への贈与として扱われ、贈与税が課税されます。贈与税ではなく相続税としたい場合には、お父様がご存命の間にご相談者様とお兄様の両名を受取人に変更することで、相続税とすることが可能となります。

A-2
詳細解説
1.生命保険の死亡保険金受取人

 生命保険の死亡保険金受取人は、生命保険の契約申込時に契約者が指定します。

 また、保険期間中であれば途中で変更することができ、1名ではなく複数名を指定することができます。複数名指定する場合には、それぞれの受取割合を決めて指定します。

2.死亡保険金と相続税

 死亡保険金は、被保険者の生前中の契約に基づいて権利が約束されたものであるため、指定された受取人の固有の財産として扱われます。そのため、遺産分割の対象とはなりません。

 一方、相続税の計算においては、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金などは、本来の相続財産ではないものの課税の公平性から「みなし相続財産」として、課税の対象となります。

 ただし、相続人が受取人である場合など一定の要件に該当する場合には、遺族の生活保障を確保する目的から、一定の非課税枠が設けられています。

3.死亡保険金を分けたとき

 相続により死亡保険金受取人が受け取った保険金の全部または一部を、他の相続人へ渡す行為は、受取人固有の財産を無償で渡したことになることから、贈与として捉えられ、贈与税が課税されます。

 そのため、ご相談のケースでは、ご相談者様が受け取った死亡保険金をお兄様に分ける場合は、ご相談者様からお兄様への贈与となり、贈与税が課税されます。

4.ご相談のケースの場合

 上記のことを総合すると、現状のままであれば贈与税が課税されてしまいますが、お父様がご存命の間に死亡保険金受取人をご相談者様とお兄様の2名に変更することで、受け取る死亡保険金については、ともに相続税として課税の対象となり、また、一定の非課税枠を利用することができます。

 ただし、受取人を変更することによって、お父様が保有されている財産を引き継ぐ割合がどう変動するかをきちんと事前に検討しておく必要があるでしょう。法律上は固有の財産とはいえ、相続によって死亡保険金を受け取ることから、この死亡保険金も含めて相続財産と考える方は少なくありません。禍根を残さないように、お父様がご存命の間に話し合われてはいかがでしょうか。

 税金は、取引の流れによってかかる税目が異なる場合があります。お父様が存命の間にできる選択を、専門家に相談しながら実行していきましょう。
 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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 歌舞伎界をこれまでと違った視点で描いた「国宝」が、
 空前の大ヒットとなっています。
 梨園にゆかりのない実力派の若手俳優が主演を演じているのも
 影響してか、余波がいろいろなところに広がっているそうです。

 ロケ地が「聖地」となり、ファンが聖地巡礼に押し寄せたり、
 初めて歌舞伎を見ようと訪れる若者が増えています。
 滋賀県内では2ヶ所がロケ地となったことから、
 県は急遽ロケ地マップを作ったところ、全く足りず6回増刷となりました。

 城崎温泉近くの出石永楽館は、近畿最古の芝居小屋として有名で、
 片岡愛之助さんが座長を務める公演が行われることでも知られています。
 映画の公開後、若い女性の一人客が目立ち始めて、
 8月の来場者は前年の8倍になったそうです。

 時代劇は、歌舞伎の影響を受けて生まれ、特に時代劇の定番である、
 「チャンバラ」は、歌舞伎の演目から取り入れられたといわれています。
 歌舞伎は、古くからの大衆芸能のひとつであるでありますが、
 その歴史は脈々と続き、日本の伝統芸能となっています。

 明治になり外国文化が入ってくるまで、
 歌舞伎は日本の大衆芸能として絶大な人気を誇っていました。
 「アイドル」や「スター」も生まれたそうですから、
 映画スターに熱をあげる、現代のファンとなんら変わりがないといえます。

 大正に入ってから、歌舞伎を支え続けているのが、
 映画、演劇興行を行う、松竹です。
 一昨年に建て替えられた歌舞伎座を有し、主な上演場所とするほか、
 各地での興行も一手に取り仕切っています。

 創業者 大谷竹次郎氏は、興行相撲で、お茶やタバコの販売、
 貸し座布団商売を行う父の下に生まれます。
 父は、商売の場所を劇場に移し、その後売店の経営を始めます。
 19歳のときに、父から権利を引継いだのを契機に、
 次々と京都の劇場を手に入れます。

 大阪に進出して、上方興行界を支配したかと思うと、
 さらに、東京に進出して大手劇場を買収し、
 歌舞伎座も大正2年に手に入れることとなります。
 映画の時代に移り、松竹も軸足をそちらに移しますが、
 歌舞伎の興行については、独占的な窓口となっています。

 大衆芸能と称されるものの多くが、一時のブームとして消えていく中で、
 このように長い間、歌舞伎が受け継がれていけたのは、
 大きなスポンサーの後ろ盾があったことが大きいといえます。

 加えて、「○○屋」というスポンサーのブランドとなる、
 ブランドをつけてもらうことなり、
 役者ごとの個性を引き立たせることができたのです。
 時代劇が、その時々の観客に受けが良いようアレンジされすぎて、
 形骸化してしまったのとは対照的です。

認知症の疑いがある方でも遺言作成は可能か

今回は相談事例を通じて、認知症が疑われる人の遺言作成に関する留意点について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 最近、父の物忘れがひどくなってきており、同じ話を何度も繰り返すようになっています。
 認知症の診断は受けていませんが、昔に比べて明らかに様子が違います。父とは同居しており、住んでいる家(父名義の不動産)を私が相続したいと考えています。ただ、兄弟とは仲が悪く、遺産分割で揉める可能性があります。遺言を書いてもらいたいのですが、父の今の状態で有効な遺言は作れるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 認知症の疑いがある方でも、遺言能力(意思能力)を有している限り、遺言を作成することは可能です。遺言能力とは、遺言者が自身の財産状況や相続関係を理解し、遺言内容を合理的に判断できる能力を指し、民法第963条及び第961条に基づく遺言の有効性の前提条件とされています。加えて、民法第3条の2では、「法律行為の当時に意思能力を有しない者がした法律行為は、無効とする」と規定しており、遺言もこの意思能力の有無によって有効・無効が判断されることになります。

A-2
詳細解説

 実務上、遺言能力の有無が争われた場合には、医学的診断結果、遺言内容の複雑性、動機の合理性、作成の経緯などが総合的に評価されます。たとえば、同居している子に不動産を相続させたいという動機は生活実態に即しており合理性が認められやすく、内容も単純であれば、遺言能力が肯定される可能性は高まります。

 しかし、これらの条件を満たしていても、認知症の周辺症状(妄想、せん妄、感情の不安定さなど)が強く現れている場合には、意思能力が否定され、遺言が無効と判断される可能性もあります。認知症は進行性の疾患であり、今後さらに認知能力が低下することが予想されるため、遺言の作成はできるだけ早期に行うことが望ましいといえます。

 その際には、公正証書遺言の作成が有効であると考えられます。公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思能力を確認した上で、証人2名の立会いのもとで作成されるため、形式的・実質的な信頼性が高く、後日その有効性が争われるリスクを大きく低減できます。また、原本は公証役場に保管され、家庭裁判所の検認も不要であるため、相続開始後の手続きが円滑に進みます。特に認知症の疑いがある場合には、公証人による意思能力の確認が第三者の証明となるため、遺言の有効性がある程度担保されます。

 加えて、たとえ有効な遺言が存在していても、作成の経緯や背景、その内容によっては遺留分侵害額請求(民法第1046条以下)や、不当利得返還請求などの法的争いに発展する可能性があります。そのため、単に遺言を作成するだけでなく、内容や作成方法にも工夫があるとよいでしょう。

 具体的には、公正証書遺言にして専門家(行政書士・司法書士・弁護士等)に関与してもらうことで、遺言作成に必要な情報の収集や、法的観点からの助言を受けることができ、より実情に則した内容の遺言を作成することができます。また、遺言書の中に「付言事項」を設け、遺言の動機や家族への感謝の言葉を添えることも対策としてよいかと思われます。

 以上のことから、自宅を相続するための方法として遺言は有効な手段ですが、無効となるリスクもあることを理解した上で、公正証書遺言の活用、専門家(行政書士・司法書士・弁護士等)への依頼といった対応を行うと、よりよいかと思われます。

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3年過ぎても分割できない場合

相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したのですが、3年経とうとする現在も未分割のままです。どうしたらよいですか。

Q
今月のご相談

 父が亡くなり、相続人は、子である私と兄の2人です。遺産分割でもめており、当初の相続税の申告は未分割で行いました。その際、分割後に小規模宅地等の特例の適用を受けようと「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したのですが、それから3年経とうとする現在も遺産に関する裁判中で、未分割のままです。申告期限から3年を経過した後であっても、分割した際に小規模宅地等の特例を適用したい場合は、どうしたらよいですか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 一定の書類を期限内に提出することで、3年経過後であっても小規模宅地等の特例を適用することができます。

A-2
詳細解説
1.相続税の申告納付

 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に行います。また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。

 この場合、未分割であれば、各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。

2.申告期限後3年以内の分割見込書

 上記1.のとおり、未分割であっても申告納付することとなりますが、この場合において、分割しないと適用できない次の特例について、申告書の提出期限後3年以内に分割する見込みであることを記載した書類(申告期限後3年以内の分割見込書)を、上記1.の申告書と併せて提出することで、申告書の提出期限後3年以内に分割した際に、当該特例を適用することができます。

  • 配偶者の相続税の軽減
  • 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例)
  • 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例
  • 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
3.遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請

 上記2.の手続きを行った後、その申告期限後3年を経過する日後に上記2.の特例を適用したい場合には、上記1の申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することで、3年経過した後の分割であっても、当該特例を適用することができます。

4.ご相談のケース

 ご相談のケースは、上記2.の手続きが済んでおり、次は上記3.の手続きを行うことによって、特例の適用が可能となります。

 期限内に手続きを行わないと、特例の適用を受けることはできません。ご注意ください。

 なお、上記3.の手続きの際には、申請書にやむを得ない事由に応じて以下の書類を添付する必要があります。

  • ①相続又は遺贈に関し訴えの提起がなされていることを証する書類
  • ②相続又は遺贈に関し和解、調停又は審判の申立てがされていることを証する書類
  • ③相続又は遺贈に関し遺産分割の禁止、相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されていることを証する書類
  • ④①から③までの書類以外の書類で、財産の分割がされなかった場合における、その事情の明細を記載した書類

 上記のような書類の準備も必要となるため、余裕をもって準備しましょう。

 上記2.の手続きは、相続税の申告と同時に提出するため提出もれは少ないのですが、上記3.の手続きは「3年経過」ということで忘れてしまいがちです。特例の適用が受けられないと、最終的な相続税額がかなり変わります。未分割の状態が続いている場合には、期限内に忘れず提出をしましょう。

<参考>
国税庁HP「B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」、「B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」など

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