万一に備えるための~保険の相続対策 指定受取人が受取った死亡保険金を他の相続人に分与した場合
指定受取人が受取った死亡保険金を、他の相続人に分与した場合の課税関係を教えてください。
夫が亡くなり、配偶者である私が受取人に指定されている以下の死亡保険金を受け取りました。
この死亡保険金を子どもと半分ずつ分けよう思いますが、どのような税金がかかるのでしょうか。
- 契約者(保険料負担者):夫
- 被保険者:夫
- 死亡保険金受取人:私(配偶者)
- 死亡保険金 :5,000万円
ご相談の場合、ご相談者様からお子様への贈与となり、贈与税がかかります。
契約者であり、被保険者である被相続人(ご主人)が特定の相続人であるご相談者様を受取人に指定しているときに、その受取人が死亡保険金を受け取る行為は、『保険契約に基づく行為』となります。
保険契約に基づく行為であるため、この保険金請求権は、ご相談者様の固有財産となります。
つまり今回、死亡保険金の指定受取人であるご相談者様が受け取る死亡保険金は、相続により取得するものではありません。
ただし、相続税を計算する上では、相続により取得したものと“みなして”、相続財産に含めます。
ご相談者様の固有財産である死亡保険金をお子様に分けるということは、単なる贈与にすぎません。よって、お子様に贈与税が課せられることになります。
死亡保険金をご家族内で分けることが贈与とならないように、ご家族それぞれが取得するためにはどうしたらよいでしょうか。
この場合、保険契約時当初から死亡保険金受取人をご家族に指定しておきます。
この指定は、契約者が行います。
具体的には、指定受取人を記入する際に、「良子(配偶者)50%、太郎(子ども)50%」などと、明記しておきましょう。こうしておくことで、死亡保険金を贈与とならないように家族で分けることができます。
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トラブルにならないための~法律の相続対策 相続人でない人が行う相続人の調査
文書作成日:2021/02/20
![]() 今回は相談事例を通じて、相続人以外の人が相続人の調査を行う場合の留意点などについてご紹介します。
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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お金に困らないための~税金の相続対策 立て替えた葬儀費用と相続税
文書作成日:2021/02/05
![]() 相続人が立て替えた葬儀費用は、相続税を計算するときに相続財産から控除できるのでしょうか。
1.葬儀費用の立替と精算
![]() 実際にはその後の遺産分割協議において、相続人全員で相続財産の配分を決めるとともに、葬儀費用の負担割合を決定し、香典の精算などを行うことになるでしょう。香典で精算できなかった部分は遺産分割協議が調い、相続財産を配分する段階で精算し返してもらう、という手続きが一般的です。 2.相続税を計算する上での取扱い
相続税を計算する上での取扱いとしては、葬儀費用を負担した一定の相続人(包括受遺者を含む)は、その人の取得した相続財産から控除することが認められています。 ただし、下表のとおり控除できる費用と控除できない費用があります。
葬儀は、宗教や地域の慣習により、その様式や所要期間など、実に様々です。また、故人の生前の社会的地位によっても、必要となる費用は異なってくると想定されます。 あくまでも上記の表は、どこまでを葬儀費用と認めるかという範囲を示したものに過ぎないため、葬儀費用の控除に当たっては支払いの名称だけでなく、地域や故人の地位等を勘案した上で葬儀に必要な費用なのか、支払い内容にも着目しながらの判断が必要となります。 3.葬儀費用として控除できる相続人等
葬儀費用の負担者すべてが控除できるわけではなく、上記2.に記載したとおり、『一定の相続人(包括受遺者を含む)』に限定されています。 今回のご相談のケースについて、ご相談者が葬儀費用の負担者となった場合には、相続により財産を取得している『日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所がある』相続人として、上記2.の表にある控除可能な葬儀費用に該当する部分について、控除をすることができます。 なお、この『一定の相続人(包括受遺者を含む)』の範囲について、詳細をお知りになりたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。 <参考>
相法13、相基通13-4、13-5など
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家と財産を守るための~不動産の相続対策 分譲マンションと不動産小口化商品
文書作成日:2021/01/20
![]() 不動産投資として購入を検討している、分譲マンションと不動産小口化商品について、それぞれの特徴を教えてください。
1.不動産小口化商品とは
※オフィス又は商業ビルの区分所有権に投資している不動産小口化商品もあります。
※不動産小口化商品は、任意組合型の特徴です。
2.分譲マンションの特徴
投資商品としての分譲マンションの特徴は、以下のとおりです。良いと思われる場合は「○」、そうでない場合は「×」を文頭につけています。
3.不動産小口化商品の特徴
不動産小口化商品の特徴は、以下のとおりです。こちらも良いと思われる場合は「○」、そうでない場合は「×」を文頭につけています。
それぞれ一長一短があり、万人にとって一方が必ず優れているということはありません。個人的には、手間を惜しまず自身で不動産賃貸経営を行ってみたい方には分譲マンション、手間が少なく又は少額で不動産賃貸経営を行ってみたい方には不動産小口化商品が、それぞれ適していると考えます。なお、相続対策を考慮して投資される方の多くは、手間が少ないとの理由で不動産小口化商品を選択されます。 ※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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万一に備えるための~保険の相続対策 養老保険の名義変更と税金の取扱い
父名義の養老保険を私へ名義変更しようと思います。実行時と満期時の課税関係を教えてください。
以下のように養老保険の名義を変更しようと思っています。
実行した場合、名義変更時点で税金はかかりますか?
また、当該保険が満期を迎えたときの課税関係を教えてください。
なお、父は存命です。
- 契約者(保険料負担者):父 →私
- 被保険者:私
- 満期保険金(一時金)受取人:父 →私
- 死亡保険金受取人:父 →私の妻
- 死亡・満期保険金 :2,000万円
ご相談の場合、名義変更時点での課税は発生しません。また、当該保険が満期を迎えて満期保険金を受け取った場合には、贈与税と所得税それぞれ課税が発生します。詳しい内容は、詳細解説をご参照ください。
名義変更時点で課税はありません。
個人契約では、満期や死亡、解約などの支払事由が発生したときや、保険料負担者が死亡したときに課税関係が発生します。
受け取った満期保険金については、その保険金に係る保険料の負担者が誰かによって、以下のように課税される税金が異なります。
お父様からご相談者への贈与となり、贈与税の課税対象となります。
ご相談者の所得税の課税対象となります。
この場合の所得区分は、一時金として受け取るため「一時所得」に該当します。
一時所得は以下の算式により計算しますが、収入から控除できる“収入を得るために支出した金額”は、ご相談者が負担した保険料部分に限られます。
なお、名義変更がお父様死亡に伴うものである場合には、上記1. 2. とは異なる課税関係となるため、注意が必要です。このようなケースに該当する場合には、幣事務所までお気軽にご相談ください。
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トラブルにならないための~法律の相続対策 限定承認とは
今回は相談事例を通じて、相続の限定承認についてご紹介します。
先月、私の父が亡くなりました。相続人は私、母、妹の三人です。
相続財産は預金のみで借金は私たちが知る限りありません。しかし、父は生前に個人事業を営んでいた時期があり、その頃に相続財産である預貯金を超える借金をしていた可能性が否定できません。相続財産の範囲内で借金を返済すればよいという方法があると聞きましたが、どのような制度でしょうか。
相続が開始すると、相続人は、民法で定められている相続の方法である相続の単純承認・放棄・限定承認のうち、ひとつを選択しなければなりません。
ご質問されている相続の方法は相続の限定承認(民法第922条)と思われますので、以下相続の限定承認の制度について説明します。 相続の限定承認とは、相続人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという相続の方法です。
ご相談のように、相続をしても、プラスの財産とマイナスの財産と、どちらのほうが多いのかわからないということは十分あり、後になってから多額の借金が見つかり、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多い場合もあります。しかし、限定承認をしていれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返さなくても良いということになります。反対に、結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、財産はそのまま引き継げます。
限定承認を選択する場合、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に共同相続人全員で申述する必要があります(民法第915条、第923条、第924条)。
ご相談の場合、3名の相続人のうち一人でも「限定承認はしたくない」といえば、他の相続人も限定承認ができなくなります。また、相続人のうちの誰かが相続財産の一部を処分したなどの事由がある場合にも限定承認ができなくなります(民法第937条)。
なお、相続人のうちの誰かが相続放棄をした場合、その放棄をした人以外の相続人全員で限定承認の申述をすることができます。
限定承認の申述が受理された後には、相続人のうちから相続財産を管理する者が裁判所から選ばれ、その者が官報への公告、相続債権者への弁済など、一定の手続きを行うこととなります。
限定承認では、相続財産の種類等により、相続人に対し思わぬ税金が課される場合があるなど注意点が多くありますので、限定承認を検討される場合は、幣事務所までご相談ください。
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年末年始休業日のご案内
弊事務所の年末年始休業日をご案内いたします。
ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
■年末年始休業日
2029年12月29日(火)~2021年1月4日(月)
お金に困らないための~税金の相続対策 他人名義の預金を相続財産とされないためには
他人名義の預金について相続税が課税されないポイントを教えてください。
相続税の計算の際に、亡くなった人以外(例えば子や孫)の名義となっている預金でも相続税が課税される場合があると聞きましたが、どのような場合でしょうか?
また、このような課税がされないためのポイントを教えてください。
いわゆる「名義預金」と呼ばれる財産がそれに当たります。ポイントは、名義預金は名義人の財産ではなく「亡くなった人の財産である」という点です。詳細解説でご確認ください。
亡くなった人(以下、被相続人)の金銭を子や孫の名義の口座に預け入れている場合、その子や孫名義の預金を“名義預金”といいます。この“名義預金”は、実質的に被相続人の所有物だとして、被相続人の相続財産として相続税が課税されます。
被相続人の所有物だとならないためのポイントは、以下のとおりです。
通常は、名義人本人が通帳、印鑑、カードなどを保管し、本人が必要とするときにいつでも解約、引出が可能です。
一方、名義人本人ではなく被相続人が通帳等を保管しており、預金の引出などを被相続人が自由にできるような場合は、どうでしょう。これを名義人本人の財産だといえるでしょうか。
このような場合で名義預金と認定されないためには、なぜ被相続人が子や孫名義の口座の通帳等を保管し、自由に使えるようにしていたのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。
名義人本人が口座開設を行った場合には、通常は自分の印鑑で届け出をします。もし被相続人と同一の印鑑で口座開設を行っていれば、印鑑は被相続人が管理し、預金の引出などを自由にできる状態であった、というように想定されます。
したがって、なぜ同一の印鑑で届け出を行ったのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。
贈与は、あげる側の「あげましょう」という意思ともらう側の「もらいましょう」という意思、両者の合意があって初めて成立します。もらう側がその事実を知らなければ、贈与は成立しません。
名義人は、その預金口座の存在を知っていますか?
贈与税の申告は行われていますか?
贈与を行う場合には、必ずもらう側(子や孫)へも通知しましょう。
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家と財産を守るための~不動産の相続対策 借地権の設定範囲が不明瞭な土地の相続
文書作成日:2020/11/20
![]() 借地権の設定範囲が具体的に特定されていない土地を相続しました。どのように対処すればよいのでしょうか?
1.土地の一部を賃貸した場合
一筆の土地全部を賃貸してそこに借地人の建物が建てられる場合は、当該土地そのものが借地権設定の範囲となるため、特段の問題は生じません。しかし、ご相談のような一筆の土地の一部を賃貸した場合は、当該土地のどの部分に借地権が設定されているのかを特定する必要があります。 2.借地権設定範囲の特定
借地権設定範囲の特定は、建築当時の建物図面や設計図書等の資料で確認したり、客観的に建物の利用に必要な範囲を考慮したりした上で現況の利用状況も鑑みて判断することになります。 その他に、建物と一体と考えられるような庭や附属建物等の敷地も借地権設定の範囲として考慮する必要があります。また、上記の内容に加え、建ぺい率等の建築基準法の規制を考慮して算出した面積と当該契約書上の借地面積とで相違があれば、それらも勘案し判断する必要があります。 借地面積の相違が生じた場合には、借地人が支払う地代等にも影響しかねないため、借地人との間で諸条件を明確にし、かつ、借地権設定範囲を具体的に明示した土地の図面等を添付の上で、覚書等の書面を取り交わすことをお勧めします。 3.借地権設定範囲が特定できた後の注意点
借地権設定範囲が特定できた後に注意すべき項目としては、借地権設定契約が平成4年8月1日より前に締結された契約か否かを確認する必要があります。なぜなら、平成4年8月1日より前に締結された契約か否かで、借地契約の当初の存続期間・更新後の存続期間について適用される法律が異なり、ルールに違いが生じるためです。 4.ご相談のケース
ご相談の案件は、借地権設定契約日が平成元年とのことですので、借地法(旧借地法)が適用されることになります。 旧借地法では、堅固建物(鉄筋・鉄骨コンクリート造、石造等)か非堅固建物(木造等)かによって借地契約の当初存続期間及び更新後の存続期間が異なります。仮に借地期間を定めなかった場合、堅固建物の当初の存続期間が60年であるのに対し、非堅固建物は30年となります。また、更新後の存続期間についても堅固建物の存続期間が30年であるのに対し、非堅固建物は20年となります。 建物が堅固な建物か非堅固な建物かは、借地権設定契約書に定められていますが、建物の種類・構造等の定めがないときは、一般的に非堅固な建物所有の借地契約とみなされます。 一方、現行の借地借家法は、旧借地法と異なり借地上の建物が堅固な建物か否かによって区別したルールは定められていません。同様に借地期間を定めなかった場合、借地契約の当初の存続期間は30年で、更新後の存続期間は20年となります(次以降の更新後の存続期間は10年)。 上記以外の他に、建物が朽廃・滅失した場合や更新の拒絶に関して対応が異なるため注意が必要となります。 旧借地法及び借地借家法ともに借主を保護するための法律であることは共通しますが、旧借地法の方が借主側に有利な内容項目が多いため、今回の見直しを機に借地人に対して、借地借家法に則った契約への変更を打診されるのもよいと考えられます。また、将来、借地権が設定されている土地(底地)を第三者へ売却することが想定される場合には、土地家屋調査士等の専門家に相談の上、借地権の範囲に符合するよう境界標等を設け分筆し、別個独立した土地に分けておくことも有用な対処法となります。 ※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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万一に備えるための~保険の相続対策 限定承認と生命保険
文書作成日:2020/11/05
![]() 限定承認をしたときの生命保険金の受け取りと相続税の課税について教えてください。
1.相続財産を引き継ぐ方法
相続財産の引き継ぐ方法は、大きく「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つに分かれます。
2.限定承認と生命保険について
民法では、受け取った死亡保険金は相続によって取得したものではなく、死亡保険金受取人の固有の財産とされています。 そのため、ご相談のケースにおいて、ご相談者が限定承認したとしても、相続放棄をしたとしても、保険金受取人として保険金を受け取ることはできます。 また、死亡保険金は、相続税法上ではみなし相続財産となります。相続人は受け取った死亡保険金について、一定の非課税制度を適用することができます。 相続を放棄した場合には相続人とはなりませんので、当該非課税制度を適用できませんが、限定承認であれば相続人としての地位はありますので、適用することができます。 なお、限定承認や相続放棄については、申立期限が決まっているなど一定の約束事があります。また、保険金だけでない課税関係の問題もありますので、相続財産の引継方法についてのお悩みは、当事務所へお気軽にご相談ください。 ※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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