お知らせ

 サントリーとのコラボレーションによって生まれた「伊右衛門」
 そのネーミングのもととなった、福寿園は200年を超える、
 老舗の製茶メーカーです。
 そんな永い歴史を持つ企業が積み上げてきた
 「続ける経営」の智恵とはどのようなものでしょう。
 
 飲料の多様化により茶葉自体の消費は減り続けており、
 同社では、お茶の新しい楽しみ方を提案しています。
 京都市などに体験施設を運営していて、来年3月には本社工場近くに、
 お茶文化を体験できるテーマパークのオープンを目指しています。
 
 お土産や観光地での、「お茶」のイメージとは裏腹に、
 ずいぶん永い間、京都の製茶メーカーは他の産地や
 外国からの輸入に押されがちでした。
 
 創業者 福井伊右衛門氏の名前からとった「伊右衛門」のヒットは、
 ペットボトルのお茶という今までには無い形で
 京都の「お茶」のイメージを復活できたのではないでしょうか。
 このことは、京都に1000社以上残る老舗企業にとっても、
 元気づけられるものでもあります。
 
 右肩上がりで成長を続ける、ベンチャー企業の経営者でも、
 「老舗」という言葉には弱いものがあります。
 たとえ売上高が勝っていても、歴史と言う壁には、
 どうしても太刀打ちできないからです。
 
 老舗には、看板商品と言うものが存在します。
 「…屋」といえば○○、千枚漬けといえば○○…といった風に、
 何代にもわたって販売し続けることが出来る商品をもっており、
 言い換えれば、ロングセラーがあるからこそ
 老舗として成り得るのではないでしょうか。
 
 ある商品がヒットしたからといって、
 すべてがロングセラーとなるわけではありません。
 ロングセラーとなるには、類似商品が続々と登場するなか、
 他の商品を寄せ付けない品質を持っていなければなりません。
 製法、材料、技術に関して、自社でないと作れない商品を持つこと、
 それが「老舗」への第一歩となるのです。
 
 「打ち上げ花火のように、パッとあがって、サッと消える。」
 創業後そんなに経たない会社では、こんなリスクを負っても、
 将来のため挑戦しないとならないことがあります。
 逆に50年、100年…と社歴を重ねてきた会社には、
 同じようにリスクをかけた行動は、慎むべきことです。
 
 京都には「身の程」をわきまえた、商売を続けている
 老舗がたくさんあります。
 観光に来られた事がある方なら、よくご存知でしょうが、
 京都には和菓子の老舗が市内のいたるところに、点在しています。
 気候の良い季節の休日となれば、店の前に長蛇の行列が出来る
 お店も少なくありません。
 
 グルメ雑誌にも頻繁に紹介され、人ごとながら、
 オーナーの懐具合が気になるほどの繁盛振りでも、
 そのお店は、決して大きな工場を構えたり、繁華街に出店したりはしません。
 その日一日の、販売量を決めそれ以上に作ることはしないのです。

 「たくさん儲ける事より、永く儲けること」
 「自分一代でなく、代々続けること」
 「自分ひとりでなく、社員、仕入先が潤うこと」
 そこには「投資家」という存在が入ってくる余地がありません。
 「老舗」を見習い、「続ける経営」を見直してみてはいかがでしょう。

相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立て

今回は相談事例を通じて、相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立てについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 同居していた兄が亡くなりました。兄は独身で子供はおらず、親はすでに亡くなっています。兄弟は私一人ですが、私は相続放棄をしています。自宅に兄の財産があるのですが、処分してもよいでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続放棄をしても、その放棄の時に被相続人の財産を現に占有している時は、他の相続人又は「相続財産清算人」に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない(民法第940条)とされていますので、ご相談者様が勝手に処分することはできません。

 また今回のケースでは、ご相談者様が被相続人(お兄様)の財産を処分した場合、被相続人の相続の単純承認事由に該当すると考えられますので、ご注意ください。

A-2
詳細解説

 相続人がいない場合、利害関係人は家庭裁判所に「相続財産清算人」選任の請求をすることができます(民法第952条1項)。

 この利害関係人には、被相続人の債権者だけでなく、被相続人の財産を管理している者が含まれますので、ご相談者様が「相続財産清算人」選任の申立てをすることができます。

 「相続財産清算人」とは、相続人の代わりに被相続人の財産(債権・債務)を清算する人のことで、被相続人の相続財産を適切に管理し、残余財産があった場合、国庫へ帰属させる役割があります。なお、相続財産清算人は2023年4月1日の民法改正前は、相続財産管理人として規定されていました。

 ご相談者様にて「相続財産清算人」選任の申立てを行い、選任された「相続財産清算人」にご相談者様の保存する被相続人の財産を引き渡すことができれば、財産管理義務はなくなります。

 「相続財産清算人」の申立てには、裁判所の判断が必要であったり、必要な書類が煩雑であったりするため、お近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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契約者貸付金とみなし相続財産

父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。これはどのように取り扱えばよいのでしょうか。

Q
今月のご相談

 父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。明細を確認したところ、死亡保険金1,000万円に対して契約者貸付金250万円があり、控除した残額750万円が振り込まれています。これは相続税の計算上、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
 なお、保険契約者、保険料負担者、被保険者ともに父であり、死亡保険金受取人は私(父の子)です。また、相続人は母と私の2人で、相続の放棄はしていません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談のケースにおいて、相続税の計算上、みなし相続財産となるのは750万円です。死亡保険金に係る非課税限度額は1,000万円となるため、他にみなし相続財産がなければ、750万円全額相続税がかかりません。なお、契約者貸付金は被相続人の債務とはなりません。

A-2
詳細解説
1.契約者貸付金等がある場合の保険金

 保険金の額から契約者貸付金等の額が控除されて支払われる場合には、相続税の計算上、その保険契約者が誰かによって、それぞれ次のように取り扱われます。

  • 保険契約者=被相続人
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する保険金及び当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する債務はいずれもなかったものとする
  • 保険契約者=被相続人以外
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する部分については、保険契約者が当該相当する部分の保険金を取得したものとする
2.ご相談の場合

 ご相談の場合、保険契約者=被相続人であるため、死亡保険金1,000万円から契約者貸付金250万円を控除した残額750万円がみなし相続財産となります。

 また、相談者様は、相続人であり相続の放棄もしていないことから、死亡保険金に係る非課税制度が適用できます。

 具体的には、次の金額が非課税限度額となるため、他に死亡保険金に係るみなし相続財産がなければ、750万円全額について適用することができ、結果として相続税の対象とはなりません。

500万円 × 2 = 1,000万円

 このように、死亡保険金は非課税限度額いっぱい掛けていたとしても、契約者貸付金があることから差し引かれた金額がみなし相続財産となり、非課税限度額を有効活用しきれていません。

 仮に契約者貸付金でない金融機関からの借入であった場合には、死亡保険金から控除されることもなく非課税限度額を有効活用した上で、借入金は被相続人の債務として、他の相続財産から控除することができました。

 

 ただし、借入金の利率やその他を総合的に検討する必要があるため、相続税の計算の有利不利だけの検討は危険です。相続や相続税の計算については、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
相続税法基本通達3-9など

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