お知らせ

 ポン酢をはじめとする調味料で有名なミツカンですが、
 長年積み重ねてきた発酵技術を基に、
 「腸活」に向けた食品の開発に挑んでいます。

 カギになるのは発酵性食物繊維で、
 これを摂ることにより肥満予防や便通の改善があるとされています。
 バームクーヘンや、レンジで調理できるキーマカレー、
 グラノーラも取り揃え、販路拡大を狙っています。

 酒粕を原料として醸造酢を作ったのは、ミツカンが最初です。
 驚くことに、ミツカンは酢作りを始める前は、造り酒屋を営んでおり、
 ミツカンの初代 中野又左衛門氏は、酒造りの規制が解かれるため、
 競争が激しくなると予想して新しい事業を模索していました。

 しかし、造り酒屋が「酢」を作るなんて、考えられないことでした。
 酒桶に酢酸菌が入ってしまうと、お酒が全部「酢」になってしまうからです。

 現在の握りずしの原型は、江戸から広まったとされる、早ずしです。
 それに使われていた酢は、高価で醸造に時間がかかる米酢だったのですが、
 又左衛門氏は、これを安価な粕酢に代えてもらうことで、
 寿司をもっと手軽に味わってもらえるのではないかと考えます。

 その目論見は、見事に的中し、握りずしのブームと共に、
 ミツカンの粕酢は欠かせないものとなっていったのです。
 初代から続くチャレンジ精神は、その後も絶えることなく現在に至っており、
 匂いの少ない納豆でヒットした
 「金のつぶ」を代表とする納豆事業に受け継がれています。

 反面、成功の影には、苦い経験も数多く残されています。
 明治中期、日本に入ってきたビールに強い関心を持った、
 四代目 又左衛門氏は、一気にビール醸造事業に傾倒していきます。
 独自ブランドの「カブトビール」は、
 全国5位のシェアを占めるまでになりますが、
 その後の統合政策により、事業としては終えることになります。

 70年代、外国から外食チェーンが入ってくるようになると、
 その先進性に着目し、ハンバーガーショップを展開するようになります。
 見よう見真似で、東京都内を中心に店舗を展開していったのですが、
 外国勢の力は強く競争が厳しくなるにつれ、
 10年後に事業撤退することになります。

 赤字であった事業が、少しずつ利益が上がるようになり、
 ようやく黒字に転換していった時の喜びは、経営の醍醐味といえるでしょう。
 そして、確実に利益を蓄えられるようになった時に、
 経営者が考えておくことは、「引当(ひきあて)」することです。

 「引当」とは、将来に発生するべき支出に対して、
 予め貯蓄等をして資金を残しておくことです。
 店舗や工場の設備の修繕や更新、従業員の増員や退職金など、
 数え上げると、何年かごとに発生する支出が結構あるはずです。

 黒字と思っていたけれど、「引当」を実行してみると、
 そうでもなかった場合もあるはずです。
 大切なのは、一時(短期)の利益ではなく、
 大きな周期で利益を出せているかどうかということなのです。

相続登記時に申出が義務化される生年月日等

今回は相談事例を通じて、相続登記の義務化に伴い申出が必要とされる生年月日等の情報と、その公開の有無について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなり、相続登記を行う必要が生じました。調べていると、相続登記は2024年4月1日から義務化されたと同時に、2025年4月21日から、登記の際に生年月日やメールアドレスも申請する必要があると知りました。これらの情報が登記されてしまうということなのでしょうか。新しい変更について教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 結論から申しますと、ご相談の情報は公開されることはありませんが、まずは、相続登記義務化について簡単にご説明させていただきます。

 2024年4月1日から、相続(遺言、遺産分割も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内の相続登記が義務とされました。
 また、正当な理由なくこの義務に違反した場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象とされました。なお、この相続登記義務化は、2024年3月31日以前に起こった相続にも適用されます。

 相続登記の義務化によって、所有者不明の土地や建物が増えるのを防ぎ、適切な不動産管理や土地の有効利用が円滑に進むことが期待されています。

A-2
詳細解説

 所有者不明不動産の問題は、相続だけでなく、登記名義人が住所変更を反映させないことで起こります。そのため、2026年4月1日から、不動産の所有者は、氏名・住所変更から2年以内に変更登記を行うことが義務付けられ、義務に違反した場合は、5万円以下の過料の適用対象となります。

 この法改正と併せて、所有者が登記申請をしなくても、登記官が住基ネットを使って職権(職務を行う上で与えられている権限)で変更登記を行う仕組みが導入されます。

 この仕組みの適用のため、2025年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記申請時に、氏名や住所、生年月日などの「検索用情報」を申し出ることが必要となりました。

 なお、同時にすでに登記されている所有者も、検索用情報を申し出ることができるようになります。この申出をしておけば、住所変更登記が義務化された後も、義務違反に問われることがないとされています。

 具体的に検索用情報として申出が必要な内容は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 氏名のふりがな(外国籍の場合はローマ字表記)
  • 住所
  • 生年月日
  • メールアドレス

 生年月日は、氏名・ふりがな・住所とともに住基ネットへの照会に使用し、メールアドレスは、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を、所有権の登記名義人に確認する際に送信する電子メールの宛先となるものです。また、申出手続が完了した際にも送信がされます。

 そのため、あくまで登記される内容は住所と名前であることに変更はなく、ご相談いただいた、生年月日、メールアドレスは、登記簿に記載される情報として他人に公開されることはありませんのでご安心ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
仮想通貨(暗号資産)と相続税

仮想通貨(暗号資産)を相続した場合に、相続税は課税されるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 私(75歳)は、ビットコインを保有しています。最近判断能力が衰えてきていると感じ、将来のことも考えると売却して他に投資するか、このまま保有し続けて相続で次世代へ渡すか、悩んでいます。たとえば私が亡くなり、相続人となる私の子がこのビットコインを相続した場合には、相続税の課税対象となるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様が保有しているビットコインなどのいわゆる仮想通貨(以下、暗号資産)について、お子様が相続により取得した場合には、相続税が課税されます。

A-2
詳細解説
1.暗号資産を相続により取得した場合

 相続税法では、個人が、「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」を相続により取得した場合には、相続税の課税対象となることとされています。
 他方、暗号資産については、決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されており、「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」と考えることができます。
 そのため、被相続人等から暗号資産を相続により取得した場合には、相続税が課税されることになります。

2.相続により取得した暗号資産の評価方法

 暗号資産を相続により取得した場合の評価は、一般的に評価方法が定められている「評価通達」に明示されていないことから、評価通達に定める評価方法に準じて次の区分に応じて評価することとなります。

■活発な市場が存在する場合(※)

 活発な市場が存在するということは、一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかになっているものと解されます。そのため、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。

 具体的には、暗号資産交換業者から提供を受けた残高証明書に記載された取引価格によって評価します。その他、以下による評価でも差し支えないとされています。

  • 暗号資産交換業者(暗号資産販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、納税義務者が暗号資産を暗号資産交換業者に売却する価格(売却価格)
  • 納税義務者が複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合には、納税義務者の選択した暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格

 (※)「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。

 

■活発な市場が存在しない場合

 活発な市場が存在しないということは、上記とは逆に、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないと解されます。そのため、その暗号資産の内容や性質、取引実態等を勘案し個別に評価することとなります。

 具体的には、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価することとなります。

 暗号資産については、その取得時期によってはかなり価値が上がっているものがあります。現状、個人が暗号資産を売却したときには、所得税は総合課税(雑所得又は事業所得)となるため、株式の売却などの他の金融資産と比べて税負担が重いと考えられています。

 ご存命のうちに売却して他に投資されるか、相続によるかは、他の財産債務や、将来の相続人等の状況により変わってきます。

 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問合せください。

<参考>
相法2、2の2、相基通11の2-1、評通4-3、5、 国税庁HP「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」他

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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