お知らせ

 私たちの身近にあり、無くてはならない存在となっている、
 コンビニエンス・ストア。
 フランチャイズ・チェーン(FC)という仕組みが活用されている、
 代表的な業種のひとつです。

 FCは、63年にダスキンが「愛の店」を、
 不二家が洋菓子店の展開を始めたのが先駆けとされています。
 しかし、店舗間の競争激化、24時間営業の強制、期限切れ商品の廃棄損の負担など、
 様々な問題が表面化し、曲がり角に差し掛かっています。

 日本人が豊かさを感じ始めた60年代、その事を象徴するかのように 
 スーパーマーケットと外食産業が全国に広がりつつありました。
 また、アメリカで広がっていた多店舗展開の仕組みを、
 いち早く事業に取り入れようと手探りで取り組んでいました。

 FCの普及を後押しした第一人者として渥美俊一氏が挙げられます。
 読売新聞で商店経営欄の担当をしていた渥美氏は、
 流通業の経営者へ取材を重ねるたびに、このことに関心を強くしていきました。

 多店舗展開というものが確立していなかった当時は、
 自社で行うものやFC加盟店を募集して行うものを区別せず、
 すべてをチェーンストアと呼んでいました。
 そして、この理論を学ぶため全国の経営者を集め、
 研究会「ペガサスクラブ」を立ち上げたのです。

 初期のメンバーには、ダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、
 イオンの岡田卓也氏などなど、そうそうたる顔ぶれが名を連ねます。
 それぞれが、見よう見まねで行っていたチェーンストアのしくみを体系的にまとめ、
 草創期のスーパーマーケットや外食産業が事業を拡大するための
 けん引役として力を発揮します。

 渥美氏の指導は厳しかったらしく、一国一条の主であり、
 社会的な地位もある経営者であっても手加減することなどせず、
 そのため、舌を巻く経営者も少なくなかったとか。
 大の大人のである経営者がセミナー参加中は飲酒を絶ち、
 食事も程ほどに、経営について熱く議論を戦わせていました。

 この光景を物語るかのようなエピソードがあります。
 和風レストランチェーンを展開するサトの創業者 重里 進氏が、
 ゴルフで箱根のホテルに泊まったところ。
 浮かれた自分とは対照的な光景に衝撃を受けます、
 翌朝には会場のドアに耳をつけて、こっそりと講義を聴いたそうです。

 ペガサスクラブが発足した当時、標榜としたのは百貨店経営の否定でした。
 参加企業の年商は多くても数十億円でしたが、
 地方百貨店でも20億円を上回り、都市百貨店は100億円を超え、
 ナンバーワンの三越は450億円に達していました。

 その経営とは、繁華街の一等地に大きな店を構え、駐車場は無く、
 高層ビル型の店舗で客を待ち受けるだけです。
 品揃といえば、一般庶民には手が出ない高級品志向の一辺倒で、
 おまけに問屋まかせで収益率の低さは際立っていました。

 このような百貨店が、王様気取りで小売業界に君臨していたのです。
 加えて、メーカーや問屋が強い力を持っていたので、
 新興のスーパーマーケットは分け入る隙間など残っていなかったのです。
 おまけに、大衆も「安かろう、悪かろう」という目で見ていました。

 チェーンストアの理論は、体系的に武装を整え
 百貨店経営に立ち向かうための武器の役目だったのです。
 その後、FCビジネスの中核にコンビニが加わることにより完成度が高まり、
 最近では、学習塾や不動産仲介業のほか様々な業種に広がりをみせています。

 今回は相談事例を通じて、預金債権の仮分割の仮処分についてご紹介します。

 夫が亡くなったため、相続人である私と夫の兄弟姉妹たちとの間で半年ほど遺産分割協議を続けていましたが、どうしても折り合いがつかないことから、この度、遺産分割調停を申し立てることになりました。
 また、我が家の生活費はすべて夫の預金口座で管理していたのですが、この預金口座は夫が亡くなったことで凍結されてしまいました。そのため、現在は預貯金の仮払い制度を利用して、夫が亡くなった直後に払い戻した150万円を取り崩しながら生活しています。
 ただ、肝心の遺産分割調停については解決の目途が立っておらず、今後調停が半年も1年も続くような場合には、到底生活していくことができません。何とか当面の生活費を確保する方法はないでしょうか。

 本件のようなケースでは、「預金債権の仮分割の仮処分」制度の利用を検討することが考えられます。以下で本制度について、概略を説明します。

1.預金債権の仮分割の仮処分について

 令和元年の相続法改正により「預貯金債権の仮分割の仮処分」に関する制度が新設されました(家事事件手続法第200条3項)。

 本制度は、「預貯金債権は遺産分割の対象となる」と判示した平成28年決定により、預貯金債権が遺産分割までの間は共同相続人全員の共同でなければ行使できなくなったため、例えば被相続人の扶養内にあった相続人において、被相続人にまつわる債務の弁済あるいは生活費の支出の必要があるにもかかわらず、共同相続人の一人でも協議に同意しないために払戻しを受けることができないといった不都合を是正する目的で制定された背景があります(※1)。

 なお、金融機関ごとに法定相続分の3分の1あるいは150万円のいずれか低い方の金額を上限に払戻しを認める預貯金の仮払い制度(民法第909条の2)とは異なり、本制度では家庭裁判所に対して当該仮処分を求める旨の申立を行い、裁判所から仮分割を認める決定を取得する必要があります。

2.要件

①本案が係属していること
 本制度の利用にあたっては、当該預金債権が分割対象となっている遺産分割調停事件もしくは、遺産分割審判事件が家庭裁判所の事件として係属している必要があります。

②権利行使の必要性
 本制度の利用により預貯金を払い戻す必要性が認められる必要があります。典型例としては、生活費の支払いや施設利用料の支払いを行わなければならない場合が挙げられます。

③他の共同相続人の利益を害しないこと
 どの程度であれば、他の共同相続人の利益を害しないかについて明確な基準は決められておりませんが、一つの考え方として、仮分割を求める金額が当該預貯金債権額に自身の法定相続分を乗じた金額を上回らないこと(すなわち、請求額が自身の法定相続分に応じた金額を超えないこと)が挙げられます。

3.手続きおよび想定される効力

 本制度では、仮処分の可否を決定する前に、相手方である他の相続人に意見の陳述の機会が与えられ、裁判所はこの陳述を聴取しなければなりません(家事事件手続法第107条)。

 

 陳述の方法には、相手方が実際に裁判所に出廷して意見を述べる方法と裁判所から送付された書面に意見を回答する方法があり、いずれかの方法を経た後に裁判所が仮処分の可否を判断することになります。

 仮に、仮処分が認められた場合の取得額は、本件のように生活費の確保を目的として本制度を利用した場合には、月々の生活費に本案について見込まれる審理期間(数ヶ月~1年程度)を乗じた金額になるものと思われます(※2)。

(※1)「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)の補足説明」(平成29年7月18日)
(※2)片岡武・管野眞一「改正相続法と家庭裁判所の実務」(日本加除出版株式会社)93頁-106頁

 

 

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 小学校へ入学した孫に対して、教育資金の一括贈与を2023年中に行おうと思います。教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度は適用できますか?

 孫の小学校入学を機に、教育資金の一括贈与を検討しています。
 一度に渡しても一定額までであれば贈与税が非課税となる、と聞いています。これが今年(2023年)の3月末までと聞いていましたが、令和5年度税制改正で延長はされましたか?

 ご相談の非課税は、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度と考えられますが、こちらについては、令和5年度税制改正で適用期限が3年延長されました。具体的には、2026年(令和8年)3月31日が延長後の適用期限となります。

1.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度

 年齢30歳未満の一定の受贈者が、教育資金に充てるため、一定の契約に基づき、祖父母など直系尊属から信託受益権を取得するなど教育資金口座の開設等を行った場合には、その信託受益権等の価額のうち1,500万円を限度に、一定の手続をすることで、受贈者の贈与税が非課税となります。これを「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度(以下、非課税制度)」といいます。

 この非課税制度については適用期間が定められており、平成25年(2013年)1月1日から令和5年(2023年)3月31日までとなっていました。

2.令和5年度税制改正

 2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には、この非課税制度について、いくつかの改正項目が記載されています。主な改正項目は以下のとおりです。

  1. (1) 適用期限の延長
     適用期限を3年延長する。
  2. (2) 契約期間中に贈与者が死亡した場合の相続税の取扱いの見直し
     契約期間中に贈与者が死亡した場合で、非課税となる拠出額から教育資金として支出した額を控除した残額(以下、管理残額)があるときの、管理残額に対する相続税の取扱いについて、受贈者が23歳未満である場合等であっても、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときには、相続等により取得したものとみなして相続税を計算する。これは、令和5年(2023年)4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について、適用する。
  3. (3) 契約終了時の管理残額の贈与税計算の見直し
     契約終了時において管理残額がある場合の贈与税の計算について、一般税率を適用する。これは、令和5年(2023年)4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について、適用する。

 ご相談の場合、お孫さんへの教育資金の一括贈与については、適用期限が3年間延長されたことにより、2023年中に利用することは可能です。ただし、適用には一定の要件があります。

 なお、学費や教材費、文具費などの教育費に充てるために扶養義務者からされた贈与については、上記の非課税制度を利用せずとも、必要な都度、通常の範囲内で行えば、贈与税はかかりません。ただし、教育費の名目であっても預金をしたり、株式などの購入資金に充てたりした場合などには、贈与税がかかります。ご注意ください。

<参考>
 国税庁HP タックスアンサー「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」「No.4405 贈与税がかからない場合
 財務省HP「令和5年度税制改正の大綱

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