先月末、日用品メーカー大手の白元が民事再生法を申請し、
受理されたと公表されました。
同社は、防虫剤や脱臭剤などの分野では老舗クラスでありましたが、
後発企業の追い上げに耐え切れなかったのでしょうか。
また、防虫剤では「ミセスロイド」「パラゾール」、カイロの「ホッカイロ」、
保冷枕の「アイスノン」など有名商品を多く抱えており、
トイレタリー業界ではトップの座を占めていたそうです。
非上場でありながら、数多くのヒット商品を生み出せるような企業は、
ひとつの経営の見本ともいえます。
しかし、今回突然の騒ぎについては、
ロングセラーやシェアトップの商品を持ちながら、
経営に困窮する事態となったことに、疑問を投げかける向きもあるようです。
某ジーンズメーカーの破綻の例にあるように、
優良企業のはずが、蓋を開けるとビックリということもありますから。
白元が、65年に「アイスノン」を発売して以来、
頭を冷やす道具として保冷枕は一気に家庭に広がり、
半世紀近くのロングセラーとなっています。
大戦時に衛生兵として出兵した経験を持つ創業者の鎌田 泉氏は、
戦後、取引のある商社マンから、
アメリカでは魚を運搬するときの保冷用に、
氷ではなく保冷剤を使っているという話を耳にします。
この話を聞いた鎌田氏は、戦地でゴム製の氷枕に氷を砕いて詰め込み、
患者の熱を冷ましていたことを思い出したのです。
この作業は結構面倒で、もっと簡単にできる方法が、
ないものだろうかと考えていたのでした。
そして、保冷剤を枕に利用することが頭をよぎります。
人が利用するためには、長い時間冷たさを保つ必要があり、
氷のように硬いものでなく柔らかさが求められました。
試行錯誤の後、寒いときに体を温めるときに飲む、葛湯からヒントを得ます。
熱を逃がしにくく熱さが長続きする葛湯のように、
保冷枕の中身をゼリー状にすることにより、
冷たさの持続と柔らかさの両立を実現させたのです
発熱時の保冷枕として売り出したのですが、
発売された65年の夏が猛暑だったことも幸いして、
安眠対策として利用する人や、飲み物の保冷に利用されたのでした。
こうして、予想しないヒットに恵まれ「アイスノン」は、
保冷剤市場をリードしていくのです。
保冷枕が、大ヒットした背景には、電化製品の普及があります。
50年代に入り、家庭に電化製品が揃っていく中で、
洗濯機や炊飯器と並び、冷蔵庫も家庭に浸透していったのです。
氷はお金を出して買ってくるものだったものが、
水を凍らせれば口にすることができる日常的なものになりました。
家庭では、物を凍らせることができなかった時代から、
手軽に冷たさを実感できるようになったのです。
「アイスノン」は、そんな世の中の移り変わりの中から、
生まれてきたものだったのです。