鶴の一声も、土台があるから役立つ…

 アナログ録音の象徴ともいえる、アナログ・レコードは、
 昭和から平成の過渡期にかけてCDへ切り替わりました。
 デジタル化に伴い大手メーカーが手掛けるレコード・プレーヤーも、
 オーディオマニアやクラブミュージックのDJ向けが残るだけとなりました。

 ところが最近、レコード世代のファンだけでなく、
 初めてレコードを手にする、若い世代の人気が高まっているそうです。
 06年を底にアナログ・レコードの売上は徐々に増えてきていて、
 レコードを作る工場は、どこもフル稼働状態になっています。

 日本人若手アーティストがレコードでアルバムを発表することが増え、
 新しい感覚で音楽に接する面白さが受けているのでしょうか。
 中古レコードの人気も上々で、
 1万円程度の手ごろな、レコード・プレーヤーも登場しています。

 マニアックなものでは、CDと同じようにレーザー光線を使って、
 アナログ・レコードを読み取るプレーヤーも販売されています。
 なんとCDを読み取る以上に高い精度が要求されるそうで、
 逆にアナログ技術の奥深さに感心させられます。

 アナログ全盛であった1970年、当時社長であった井深大氏によって、
 中島平太郎氏はソニーに招き入れられます。
 それまでの研究の実績を見込まれての入社でありましたが、
 中島氏の胸の中には、音楽のデジタル化への思いが消えずに残っていました。

 オーディオ好きの井深氏は、何よりのアナログ主義で、
 それに反するデジタルの研究の事は、
 大きな声で口にできるはずもありません。
 そこで、アナログオーディオの製品開発を進める傍ら、
 恐る恐るデジタルの研究チーム集めを試してみたのです。

 社内からは、事ある度に「予算の無駄遣い」と批判されながらも、 
 コツコツと研究を進めていきます。
 家庭用ビデオを改良した、デジタルオーディオ機を完成させ、
 試験的に顧客の反応を見させてもらえないかと頼み込み販売にこぎつけます。

 40万円を超え、決して一般向けとは言い難い価格ながら、
 オーディオファンや大学の研究室、FM放送局などから注文が入り、
 目標であった500台を完売することが出来たのです。
 加えて、あることがきっかけでアナログからデジタルへの風向きが、
 一気に変わることになります。

 77年、公演で来日していた世界的な指揮者のカラヤン氏に、
 この製品で演奏を聴いてもらえる機会を得ます。
 自身がタクトを振るオーケストラのリハーサルをデジタル録音した音に、
 感銘を受けたカラヤン氏は、デジタルを支持すると言ってくれたのです。

 追い風を受けて、製品化に向けて開発の速度は早まります。
 記録技術で先行している外国メーカーと提携する話がまとまり、
 録音技術や記録方式、規格など、徐々に形ができあがっていきます。
 こうして、82年世界で初めてCDプレーヤーが世に登場し、
 世代交代が一気に進むことになったのです。

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