お知らせ

 路線価方式による土地の評価は、評価年の「路線価」を用います。「路線価」は毎年7月に公表されるため、相続開始日が年初の場合は申告まで時間を要します。

 父が平成31年1月3日に死亡(=相続開始日)しました。相続人である私は、土地を相続したため、相続税の申告にあたり、当該土地を評価しなければなりません。この土地は「路線価」を基に相続税評価額を求めますが、相続開始日時点では、この年の「路線価」は公表されていません。この場合、いつの時点での「路線価」で計算しますか?

 「路線価」を基に相続税評価額を計算する場合には、評価する年の「路線価」を用いなければなりません。ご相談のケースであれば、令和元年分の「路線価」を基に算定します。

1.路線価とは

 相続税や贈与税の申告にあたり、宅地を評価する場合には、「路線価方式」か「倍率方式」のいずれかにより評価をします。
 ご相談のケースのような、「路線価」を基に相続税評価額を求めることを、「路線価方式」といいます。

 この場合の「路線価」とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことをいい、毎年7月初旬に国税庁から公表されます。この「路線価」は、国税庁のサイト(http://www.rosenka.nta.go.jp/)からでもご確認いただけます。

2.相続税の申告期限

 相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(相続開始日)の翌日から10ヶ月以内に行うことになっています。ただし、その期限日が土曜日、日曜日あるいは祝日である場合は、その翌日です。

 ご相談のケースは、平成31年1月3日が相続開始日であるため、令和元年11月3日が数の上では期限日となりますが、同日及びその翌日は祝日及び祝日による振替休日であるため、その翌日である11月5日が実際の申告期限となります。

3.ご相談のケース

 平成31年1月3日が相続開始日の場合、当該相続に係る相続税の申告に用いる「路線価」は、令和元年7月1日に公表された令和元年分の「路線価」です。
 この令和元年分の「路線価」が、平成31年1月1日から令和元年12月31日までの間に、相続により取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用することとなるためです。

 よって、相続開始日の1月3日から、令和元年分の「路線価」が公表される7月1日まで約半年待つことになります。そこから申告期限である11月5日までは5ヶ月もありません。早急に評価を行い、申告や納税の手続きをしましょう。

 このように、相続税申告を行う場合には、いつのどの評価を基に計算をするのか、きちんと確認を行う必要があります。今回のご相談のケースのように、評価を行うために時間を要する場合もありますので、ご注意ください。

 その他、「路線価」を用いて計算する際に留意すべき点がいくつかあります。相続税の申告に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 生命保険契約の内容をいつ変更するかによって、課税関係が異なる場合があります。

 亡くなった父から引き継いだ生命保険契約が2件あります。どちらも数ヶ月後には満期となります。
 この2件のうち①は父が生存中に、②は父が亡くなった後の相続手続きで、2件とも次のように変更しました。保険料は、①②ともに変更前まで父が負担し、変更後は私が負担しています。
 これら①②に対する課税関係を教えてください。

 <契約形態>相談者:A、相談者の父:B

変更前 変更後
契約者(保険料負担者) B A
被保険者 A A
満期保険金受取人 B A

 ①と②それぞれ、相続発生時の課税関係にご注意ください。詳しい内容は、【詳細解説】にてご確認ください。

 ご相談のケースにおける①②それぞれの課税関係は、次のとおりです。

1.相続発生時

① B生存中に契約者・受取人を変更した契約

 名義変更を行った時点では、課税関係は発生しません。
 Bさんが亡くなったとき(=相続発生時)、生命保険契約の権利(=解約返戻金額)のうち、Bさんが保険料を負担した部分について、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。

② B死亡後、契約者・受取人を変更した契約

 生命保険契約の権利(=解約返戻金額)が、本来の相続財産として相続税の対象となります。
 なお、死亡に伴う契約者変更は、変更の効力が発生した日が属する年の翌年1月31日までに、保険会社から所轄税務署宛てに一定の事項(変更前後の契約者情報、効力発生日、解約返戻金など)が記載された支払調書「保険契約者等の異動に関する調書」が提出されます。それによって税務署は、契約者変更の事実を把握することができます。

2.満期保険金を受け取ったとき

 満期保険金を一時金として受け取ったとき、①②いずれも、受け取る満期保険金はAさんの所得税(住民税も含む)の対象(一時所得)となります。

 この場合、一時所得を計算する上では、Aさんが負担した保険料だけでなく、Bさんが負担した保険料も含めた保険料全額をAさんが負担したものとして扱われます。その際、Bさんが亡くなった時点の解約返戻金額(相続税計算上の評価額)や、相続税の有無は考慮されませんので、ご注意ください。

 なお、満期保険金についても、1回に支払うべき金額が100万円を超える場合には、支払確定日の属する年の翌年1月31日までに、保険会社から所轄税務署へ一定の事項が記載された支払調書「生命保険契約等の一時金の支払調書」が提出されます。これにより、税務署側で状況が把握できることとなります。

<参考>
 相法3①三、59②、相基通3-35、3-36、所法34、225①四、所規86③二など

 

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