お知らせ

2020年7月29日

夏季休業日のご案内

弊事務所では、下記期間を休業とさせて頂きますのでご案内いたします。

休業期間中は何かとご迷惑をお掛けすることと存じますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。
 
■夏季休業日
 8月13日(木)~8月16日(日)

 貸地は自用地に比べて相続税対策になるのでしょうか。

 高齢になる父が貸地を所有しています。貸地は自用地(自分で所有し、自らが使用している土地)に比べ、相続税や贈与税を計算する際の評価額(以下「評価額」といいます)が低いため、相続税対策になると聞きましたが、何か問題があれば教えてください。

 評価額が減ることだけに注目すれば、貸地が有効な相続税対策になると思われる方もいらっしゃると思います。貸地の中には収益力が高く、相続税対策として成り立っている土地もありますが、戦前や戦後まもなくから貸しているような貸地などは、収益力が低く、相続税対策として成り立っていないこともあります。

 相続が発生した際の貸地の評価額は、自用地の評価額から自用地の評価額に借地権割合を乗じたものを引いた額になります。借地権割合が50%の地域であれば、貸地の評価額は、自用地に比べ50%減ります。

自用地の評価額(100%)-自用地としての評価額(100%)×借地権割合(50%)=50%

 収益力の低い貸地の売却価格を例にご説明します。自用地の評価額1億円の貸地の評価額は、借地権割合50%の地域であれば、5,000万円です。

1億円(自用地評価額)-1億円(自用地評価額)×50%(借地権割合)=5,000万円

 ただし、貸地は自由に利用することができず、5,000万円で売れる可能性は極めて稀だと考えます。
 また、貸地は市場性が乏しいため、売却するときは専門の不動産買い取り業者を頼るケースもあります。不動産買い取り業者は、土地を借りている人を立退かせた上で、更地として再販売し利益を得ることを目的としています。立退き交渉が不調となった場合、その土地は半永久的に貸地になり、転売できなくなるリスクがあるため、土地の買い取り価格は、更地価格の10~20%程度(収益力等が勘案されます)が目安だといわれています。

例.自用地の評価額1億円、更地価格1億2,500万円の、貸地の評価額と貸地の売却価格(時価評価)の比較。なお、借地権割合は50%、貸地の売却価格は更地価格の20%を前提とする。

①貸地の評価額  1億円-1億円×50%=5,000万円
②貸地の売却価格 1億2,500万円×20%=2,500万円
①-②=2,500万円、貸地の評価額が貸地の売却価格(時価評価)を上回る。

 上例では、収益力の低い貸地の評価額は、時価評価を上回る結果となり、相続が発生した際には、時価評価に比べ、多くの税金を支払うことになる上に、売却しても期待する金額にはなりません。このように、収益力は低いのに評価額の高い貸地は相続税対策として有効とはいえません。

 評価額が時価評価を上回る等、相続税対策には適していない貸地については、下記対策を講じるなど、早めの対応が必要になります。

  • 底地部分を借地権者に売却する
  • 借地権者と共同で第三者に底地部分を売却する
  • 借地権を借地権者から買い取る
  • 借地と底地を部分的に交換する

 相続に関してのご相談は、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

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 契約者貸付制度利用中に死亡保険金が支払われることとなったときの相続税計算上の留意点を教えてください。

 父は個人で不動産賃貸業を経営しています。新型コロナウイルス感染症の影響による景気の悪化で、テナントから家賃の滞納や減額要請が続き、資金繰りが悪化しました。保険会社の担当者から契約している生命保険で貸付を受けられる制度があると聞き、父はその制度を活用して当面の事業資金に充てたいと言っています。この生命保険は父の相続に備えて契約したものです。貸付を受けて返済せずに死亡した場合、保障内容や相続税に影響が生じないか教えてください。なお、保険料の払込みは完了しています。

  1. <契約形態>
    • 契約者(保険料負担者):父
    • 被保険者:父
    • 死亡保険金受取人:子(相談者)
    • 死亡保険金額:2,000万円
    • 保険種類:終身保険

 ご相談の制度利用中に死亡した場合には、当該貸付額の元金と利息の合計額を差し引いた金額が死亡保険金として支払われます。死亡保険金がその分減額されることから、相続税の非課税枠を十分活用できない可能性があります。

1.契約者貸付制度

 保険会社の担当者から案内されたのは「契約者貸付制度」と言い、解約返戻金の一定範囲内で貸付が受けられる制度です。保険会社や保険種類等により制度の対象となるか否が異なり、また、限度額や利率等の条件も契約によって違いがあります。

2.契約者貸付制度利用中に死亡した場合に支払われる保険金額

 上記1.の制度を利用して貸付を受けたとき、基本的には保険契約の効力を失うことはありません(※)が、貸付を受けている間に死亡した場合は、契約の死亡保険金額から元金と利息の合計相当額を差し引いた額が受取人に支払われます。

 (※)保険会社によっては、利息が膨らみ一定の限度額を超えると利息相当額の入金が必要になる。
利息相当額を期限内に入金しなかった場合、失効扱いとする規定を設けている。

3.上記2.を受け取った場合に相続税を計算する上での留意点
(1)みなし相続財産

 上記2.の死亡保険金を受け取った場合の相続税の計算においては、ご相談の契約形態の場合、死亡保険金受取人であるご相談者は、元金と利息が差し引かれて実際受け取る金額を死亡保険金として取得したとみなされ、みなし相続財産として計算を行います。
 みなし相続財産となることから、死亡保険金の受取人が相続人である場合、非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用を受けることができます。

(2)債務控除

 元金と利息の合計額相当の死亡保険金(プラスの財産)と契約者貸付金に相当する債務(マイナスの財産)が相殺され、いずれもなかったものとされますので、契約者貸付金が債務控除の扱いとなることはありません。

(3)留意点

 死亡保険金として扱われる金額が契約した金額から減ることになりますので、仮に、非課税枠に合わせて設定した契約だった場合、非課税枠に適用できる金額に影響が生じ、結果的に相続税が増える可能性もあります。

 契約者貸付制度は、解約返戻金を担保にしていることから銀行融資のような審査がなく、比較的早く資金を受け取れるため、一時的な資金捻出に活用されます。ただし、上述のとおり、貸付を受けている間に相続が発生すると、死亡保険金として扱われる金額に影響が生じますので、加入目的や影響が生じる金額を十分に留意した上で判断されることをお勧めします。

 

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