お知らせ

 1980年代、レンタルレコード店の開業が始まりとされる、
 TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ。
 CDやDVDのレンタルが先細りとなる中、
 図書館を運営したことでも話題になりましたが、
 書店チェーンとしても独自の戦略で攻勢を強めています。

 この4月、旗艦店である渋谷ツタヤを24年ぶりにリニューアルオープンしました。
 そこでは、DVDなどのソフトレンタルはなく、
 アニメや漫画とコラボしたグッズの販売やトレカの対戦ラウンジなど、
 コンテンツの発信拠点として変貌しています。
 
 音楽好きの若者や、少ない小遣いで最大限に欲求を満たそうとする学生の支持で、
 レンタルレコード店は街中に一気に広がりました。
 駅前近くの雑居ビルの上部階に店を構え、
 穴場的な雰囲気のスタイルが主流でしたが、
 その一つが、現在のTSUTAYAであったのです。

 サラリーマンをしていた増田宗昭氏が、噂を聞きつけて大阪の枚方市で
 レンタルレコード店をオープンしたのは82年のことでした。
 姉が喫茶店を始めるというので、それなら今流行のレンタルレコード店を
 一緒にしてはどうかと提案したのがきっかけでした。

 オープン当初からの思いもよらない繁盛ぶりに驚いたのは、
 誰より本人の方でした。
 そんな気持ちに酔いしれているのも束の間、
 すぐに不安が頭をよぎります。

 こんなに儲かる商売なら、すぐにみんなが手を出すはずだ、
 今のようなちっぽけな店なら、ライバルが出てきたらひとたまりも無い。
 本気でビジネスをしようと考えた増田氏は会社を辞め、
 今の店から見て、駅の反対側に店を出すことを決意します。

 いざ計画してみると、本格的な店を作るとなると
 6000万円位お金が必要なことがわかります。
 不足する資金は銀行から借りることになるのですが、
 ここで自らの事業計画と資金の返済方法を見つめなおすことになるのです。

 成長の見込みはあるけれども、海のものとも山のものともわからない商売、
 仮に売上がゼロであっても、人件費や家賃の支払いが出来て、
 返済も出来るにはどうしたらいいかを考えます。
 店の立地、周辺の客層、品揃え、販促方法など綿密に調査したのです、
 サラリーマン時代に店舗の開発をしていたことが役に立つことになります。

 その原点には、「売上がゼロでも維持できる体制」と、
 「やってダメならいつでもやめることが出来る会社であること」だと述べています。
 スタートが順調であればあるほど、ずっと右肩上がりが続くと過信して、
 回収の目処も無く事業拡大に投資する経営者が多い中、
 着実に足元を固めることは大切なことです。

 儲かるビジネスであればあるほど、その旨みを嗅ぎ付けて
 続々とライバルが現れてくることは覚悟しないといけません。
 すると、儲けはどんどん減少して、外の商売と変わらなくなってしまうのです、
 事業拡大に投資するには、そこの所を理解しておかないといけません。

アスベストの事前調査

相続した実家を解体する前に、アスベスト分析調査は必ず行わなければいけませんか?

Q
今月のご相談

 築古の実家(戸建住宅、床面積100㎡)を相続しました。私は家族と持家に住んでおり、今後、居住予定もないため、解体し更地にした上で売却しようと考えています。仲介業者を通じて解体見積を依頼したところ、内訳項目にアスベスト分析調査が盛り込まれており、建物の解体前に事前調査が必要となる旨の説明を受けました。この調査は必ず行わなければならないのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 一定の要件に該当する建築物の解体工事等を行う施工業者は、アスベスト分析調査の結果を、都道府県等に報告することが義務付けられています。今回の解体工事が報告の対象となることから、事前調査が必要と判断されたものと思われます。

A-2
詳細解説
1.アスベスト分析調査

 令和4年4月1日より、一定の要件に該当する建築物(建築物設備を含む)の解体工事等を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づくアスベスト含有建材の調査結果を、都道府県等に報告することが義務付けられました。

 当該解体工事が報告の対象となる「解体部分の床面積が80㎡以上の建築物の解体工事」に該当することから、事前調査が必要と判断されたものと思われます。

 また、令和5年10月1日より、事前調査の実施は一定の要件を満たす有資格者のみが行うことになっており、これらの費用は通常、建物所有者が負担することになります。

2.アスベストとは

 アスベスト(石綿)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹き付けアスベストなどの除去等において、所要の措置を行わないとアスベストが飛散して人が吸入してしまう恐れがあります。(※)厚生労働省HPアスベスト(石綿)に関するQ&Aより抜粋

3.人体への影響

 戸建住宅においては、屋根材、壁材、天井材等のスレートボードやトイレのタイル、天井の吸音材等にアスベストが使用されている可能性があります。
 これら建材に使用されたアスベストの繊維が何らかの事情で空気中に漂い、その繊維を吸引し続けることで肺の組織にダメージを与え、肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

 人体への悪影響を及ぼすアスベストの使用については、大気汚染防止法、労働安全衛生法、建築基準法、宅地建物取引業法等の法令で規制されています。建材へのアスベストの使用は、昭和50年より規制が始まり、その後、段階的に規制が強化され、平成18年には原則として製造・使用等が禁止されました。段階的に規制強化された経緯から、建築年が古い建物に使われた建材ほどアスベストの含有率は高い傾向にあります。

4.除去工事と費用

 分析調査の結果、アスベストの含有が確認されると、解体前にアスベストの種類に応じて除去工事を行う必要があります。民間建築物に対するアスベスト除去工事等に関して、国(国土交通省)は、補助制度を創設しています。補助金制度がある地方公共団体ではこれらを活用することができますので、ご実家が所在する地方公共団体に確認されることをお勧めします。なお、補助対象となるアスベストは、吹き付けアスベスト・アスベスト含有吹き付けロックウールに限られています。

 アスベスト除去費用は、使用されている場所や量により変動しますが、通常の解体費用とは別に、数十万~数百万円単位で追加負担となる事例も見受けられます。売却活動前に事前調査でアスベスト含有の有無を確認し、正確な解体費用を把握されることをお勧めします。

 今回のご相談のように、いざ相続財産を売却しようとしたときに、相続人が想像していなかった費用負担が発生してしまう場合があります。被相続人が存命のうちに財産の整理をしておき、こういった費用の発生の可能性を事前に知っておくと、存命のうちに財産の処分をしたり、遺産分割協議のときに考慮することができたり、など相続後の相続人の費用負担が軽減できる対策を講じることができる場合があります。

 相続対策に関することは、当事務所へご相談ください。

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遺留分対策のための生命保険

遺留分対策として、生命保険の追加加入は効果があるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 私は会社を経営していましたが、昨年75歳で区切りをつけ代表取締役を長男に譲り退任しました。同時に私の相続について検討しました。想定される相続人と資産内容、相続財産の配分は下記のとおりです。

【想定される相続人】
  • 妻(同じ会社の取締役)
  • 子2人(長男:会社を承継、長女:結婚後、遠方に居住、会社とは無関係)
【資産内容】
総額 25,500万円
(内訳)
  • 預貯金:6,000万円
  • 不動産:会社に賃貸している土地建物 11,000万円
    自宅 土地建物 4,000万円
  • 自社株:3,000万円
  • 生命保険:死亡保険金 1,500万円
【相続財産の配分】
  • 長男
    会社を継いでくれた長男にすべての財産を相続させたいと思い、その意思を反映させた公正証書遺言を作成しました。
    妻は遺言の内容に賛同してくれています。
    遺言作成時にサポートしてもらった弁護士から遺留分およびその割合について説明され、長女から遺留分の請求があったときには、応じる必要があることは理解しています。
  • 長女
    長女には長年にわたって現金贈与や孫の学費を支援するなど、十分与えてきた経緯があります。そのため、相続では長女に財産を配分するつもりはありません。

  • 妻も十分な資産を保有しているため、妻への配分は考えていません。

 このように考えていたところ、先日、付き合いのある生命保険会社の担当者から、遺留分への対策に生命保険が有効ということで、一時払終身保険(一時払保険料3,000万円、死亡保険金3,360万円)の提案がありました。納税資金等のために、死亡保険金受取人を長男に指定した生命保険はすでに加入済みです。さらに追加加入する効果はあるのでしょうか?

【契約内容】
  • 保険種類:終身保険
  • 契約者(保険料負担者):私
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:長男
A-1
ワンポイントアドバイス

 死亡保険金は原則、遺留分算定の対象外とされているため、今回新たに生命保険に加入することで遺留分算定の基礎となる財産総額が減少し、ご長女様が請求できる遺留分が少なくなります。その結果、ご長男様へ確実に渡せる財産が増えることになります。

A-2
詳細解説
1.遺留分とは

 遺留分とは、被相続人の財産に対し一定範囲の相続人(兄弟姉妹を除く)が、最低限取得できる権利として保障されている分です。遺留分を侵害する遺言の場合、遺留分の権利を主張されたときには応じる必要があります。

2.遺留分対策として生命保険の新規加入は有効なのか

 遺留分の対策として、生命保険に新たに加入することが有効かどうかについて説明します。

 死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則、遺留分算定の対象外とされています。そのため、現預金を一時払終身保険の保険料に充当することで現預金が減り、遺留分算定の基礎となる財産総額が減少します。

 その結果、ご長女様が請求できる遺留分が少なくなります。また、死亡保険金は受取人となるご長男様の固有財産と扱われますので、ご長男様に確実に渡せる財産となります。

(※)相続税の計算においては、みなし相続財産として相続税の対象になります。

3.具体的な効果の試算

 ご相談者様の資産内容で具体的に効果を試算すると、次のとおり、ご長女様の遺留分が減ります。

(※)遺留分の割合は、相続人の構成により異なります。

  遺留分算定基礎となる対象財産総額(A) 遺留分総額(B)=(A)×1/2 ご長女様の遺留分((B)×1/2)÷子の数
現状 24,000万円 12,000万円 3,000万円
生命保険追加後 21,000万円 10,500万円 2,625万円

 上記試算は、ご相談者様の資産内容のみで算定していますが、実際に遺留分を算定するときには一定の生前贈与分が含まれます。

 そのため、詳細な遺留分算定の際には、ご長女様への生前贈与のうち遺留分の計算に入れる可能性があるものを検討する必要も出てくるでしょう。

4.生命保険に追加加入する際の注意点

 死亡保険金が遺留分算定の対象とならないのは原則に基づく考えであり、他の相続人との間に著しく不公平が生じるケースと認められると、原則とは異なり、死亡保険金が遺留分算定の基礎に加算される結果となった過去の最高裁判例もあります。

 ご長女様にこれまで渡してきた総額によって、不公平と考えられる可能性もありますので、確実に期待できる効果と断言できるものではありません。

 また、今後の生活設計や不測の事態によっては、まとまった流動資金が必要になることもあります。新たに契約した生命保険を解約すると、返戻金が払い込んだ保険料を下回る場合もありますのでご注意ください。個別事情をふまえて、注意点を確認した上で検討されることをお勧めします。

 相続対策で悩まれた場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。

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