お知らせ

文書作成日:2021/02/20

 今回は相談事例を通じて、相続人以外の人が相続人の調査を行う場合の留意点などについてご紹介します。

 先日、姉が亡くなりました。姉の夫は数年前に亡くなっており、姉の財産の管理は妹である私が行っていました。姉には子がいましたが、長年交流がなく連絡が取れません。
 相続人である姉の子に連絡を取り、現在私が預かっている通帳などを引き渡したいので、先日、本籍のある市町村役場に相談したのですが、姉の戸籍は取得できませんでした。私は戸籍を取得できないのでしょうか。

 あなたは相続人ではありませんので、戸籍は取れませんと言われたのかもしれません。一方であなたは、お姉様の財産を預かっていたとのことですので、管理していた財産を相続人に引き渡してあげないと相続人は困ってしまうと思われます。
 民法上も、財産を管理していた人には相続財産を相続人に引き渡す義務があるため、「義務を履行するため」という理由を示すことで、お姉様の戸籍を取得することができると考えられます。

 あなたは義務なく事務の管理を始めた者(管理者)として、事務管理を行っていることになります(民法第697条)。
 お姉様の事務管理者として、あなたは相続人に相続財産を引き渡す義務があります。そのためには戸籍を取得して相続人に連絡を取る必要があります。よって、「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に該当し、戸籍を請求することができます(民法第700条、第701条、第646条、戸籍法第10条の2第1項第1号)。

 戸籍を、本人やその配偶者、直系尊属(父母・祖父母等)若しくは直系卑属(子・孫等)以外の者が請求できる場合は限定されており、特に事情がない場合は、ご兄弟であるあなたがお姉様の戸籍を請求することはできません。あなたが戸籍を請求するためには、あなたが事務管理者であること、戸籍を必要とする理由等を示していただく必要があります。

 戸籍を集め、相続人が明らかになったときには、当該相続人に相続財産の引き渡しを行ってください。なお、あなたが相続人の代わりに固定資産税等の支払いをしている場合は、立て替えている金銭を相続人に請求することができます。(民法第702条)
 なお、戸籍を請求する際、請求者が相続人ではないため、市町村役場の窓口では戸籍の依頼から発行までに時間がかかる場合があります。また、戸籍を集めた結果、面識のない相続人に連絡を取らなければならない可能性もありますので、お悩みの際は専門家にご相談されることをお勧めします。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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文書作成日:2021/02/05

 相続人が立て替えた葬儀費用は、相続税を計算するときに相続財産から控除できるのでしょうか。

 父が亡くなった際に、子である私が喪主を務めました。参列者から香典も頂きましたが、葬儀社やお寺への支払い、香典返しなどに結構お金がかかり、私が立て替えています。これらの支払った費用は、父の相続財産から返してもらえるのでしょうか?
 また、相続税を計算するとき、相続財産から控除してもらうことはできますか?
 なお、私は日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所があります。

 喪主が立て替えた葬儀費用については、遺産分割協議を通じて香典や相続財産から精算するのが一般的です。また相続税の計算上、一定の相続人等については一定の範囲内で相続財産から控除することができます。

1.葬儀費用の立替と精算

 葬儀は、前もって準備万端、ということはまずなく、段取りや費用のことなど、悲しむ間もなくどんどん進めなくてはなりません。そのような中にあって多額の支払いが発生し、喪主の方が立て替え払いをすることは、よくあることといえます。

 実際にはその後の遺産分割協議において、相続人全員で相続財産の配分を決めるとともに、葬儀費用の負担割合を決定し、香典の精算などを行うことになるでしょう。香典で精算できなかった部分は遺産分割協議が調い、相続財産を配分する段階で精算し返してもらう、という手続きが一般的です。

2.相続税を計算する上での取扱い

 相続税を計算する上での取扱いとしては、葬儀費用を負担した一定の相続人(包括受遺者を含む)は、その人の取得した相続財産から控除することが認められています。

 ただし、下表のとおり控除できる費用と控除できない費用があります。

控除可能(=OK)
控除不可(=NG)
  • 埋葬、火葬、納骨、遺骨の回送等に必要な費用
  • お布施など葬儀に関して支払ったお礼などの費用
  • 葬儀の前後に支払った費用で、通常葬儀に伴って必要となる費用
  • 死体の捜索又は運搬に必要な費用
  • 香典返しの費用
  • 墓石や墓地、仏壇、仏具などの購入費用
  • 法要の費用(初七日等)
  • 検死費用など特別の処置に係る費用

 葬儀は、宗教や地域の慣習により、その様式や所要期間など、実に様々です。また、故人の生前の社会的地位によっても、必要となる費用は異なってくると想定されます。

 あくまでも上記の表は、どこまでを葬儀費用と認めるかという範囲を示したものに過ぎないため、葬儀費用の控除に当たっては支払いの名称だけでなく、地域や故人の地位等を勘案した上で葬儀に必要な費用なのか、支払い内容にも着目しながらの判断が必要となります。

3.葬儀費用として控除できる相続人等

 葬儀費用の負担者すべてが控除できるわけではなく、上記2.に記載したとおり、『一定の相続人(包括受遺者を含む)』に限定されています。

 今回のご相談のケースについて、ご相談者が葬儀費用の負担者となった場合には、相続により財産を取得している『日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所がある』相続人として、上記2.の表にある控除可能な葬儀費用に該当する部分について、控除をすることができます。

 なお、この『一定の相続人(包括受遺者を含む)』の範囲について、詳細をお知りになりたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
相法13、相基通13-4、13-5など
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