お知らせ

 年度末、私たちにとっては、
 「確定申告」の季節という印象が強い3月です。
 一方、上場企業をはじめ日本では3月を期末としている会社が多く、
 経理や財務など、決算業務に追われる時期でもあります。
 
 滋賀県の琵琶湖の湖東にあり、古くは、城下町として栄え、
 大丸、高島屋、西武など、全国で活躍する近江商人を
 生み出した土地の一つに近江八幡市があります。
 古くは、W・M・ヴォーリズ氏が
 アメリカの会社から皮膚薬「メンソレータム」の
 日本での販売権を譲り受け、近江兄弟社を設立した土地であり。

 彼が私立の結核療養施設を開設することに始まり、
 幼稚園の開園、図書館の運営など医療、教育、文化事業を
 単に利益を目的としたものではなく、
 活動を通じてキリスト教精神を実践し、
 その精神が根ざしている土地柄です。

 そこに本店を置く菓子メーカー「たねや」、
 3代目となる山本徳次社長は、
 ユニークな経営理念を持ち、新しい発想で菓子作りに取り組み、
 会社を急成長させています。

 明治時代から続いた家業に安住せず、
 新しい事にチャレンジする傍ら、
 地元に根を張ったその経営は老舗の理想といえるでしょう。
 しかしその取り組みは、一朝一夕に出来上がったことではなく
 失敗の積み重ねに基づいたことであったのです。

 先代から「支店を出すな」という言いつけを破り、
 支店を出した時のこと。
 給与を払う必要の無い身内で、店を遣り繰りしたのですが、
 一号店も二号店も全く採算に乗りませんでした。

 念願のデパートのテナントに出店した時のこと。
 「売りたい」という気持ちが先にたち、
 すべてのアイテムの品揃えをして販売に挑んだのですが、
 その結果は無残なもの。
 日にひとつも売れない菓子がある程で、
 デパートの担当者からは、名指しで叱責される日が続きました。

 赤字続きの運営に耐え切れず、遂に撤退を決め
 泣く泣く、売れない商品を引き上げました。
 すると面白いことが起こりました、
 初代から作り続けている菓子の売上が伸びたのです。
 出店当初の22品を最終的に3品に減らしたのですが、
 売上は変わらなかったのです。

 売上が芳しくない時に、ついつい手を出したくなるのが次のこと…
 「新商品の販売」
 「支店(営業所)の開設」
 「営業ルートの開拓」

 どれも、希望には満ちているのですが、
 すべてやってはいけない事ばかりです。
 確かに売上は上がるものの、そのために必要となる、
 直接、間接の支出はその金額をはるかに上回るでしょう。
 手を広げる前に、自信のある商品の売上を
 伸ばす方法を考えてみては如何でしょう。

停止条件付遺贈

今回は相談事例を通じて、停止条件付遺贈について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 私には孫がおり、この子が社会に出るまで見届けたいとは思いますが、年齢を考慮するとあまり現実的ではありません。せめて遺産を学費として使ってもらいたいと思っているのですが、私が死亡した際の相続人に孫は該当しない場合、どうしたら孫にお金を遺せるでしょうか。
 私としては学びに使ってほしいという思いがあるので、将来孫に進学の意思がないのであれば、本来の相続人間で分けてほしいと考えています。

A-1
ワンポイントアドバイス

 まず、相続人に該当しない方へ遺産を分けることは「遺贈」にあたりますので、遺言を書いておく必要があります。遺言がない場合は、法定相続人の共有財産となるため、お孫様へ渡すことはできません(民法第964条、第898条①)。
 遺贈にはいくつか種類がありますが、今回のケースであれば遺言に停止条件を設けることにより、相談者様のご意向に添えるのではないかと思います(いわゆる停止条件付遺贈)。

A-2
詳細解説
■停止条件とは

 将来発生することが不確実な事実や内容について、それらが成就したときに法律上の効果が発生する条件のことをいいます。(民法第127条①)

■停止条件を付けた遺言の効力

 民法第985条②には、「停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる」とあります。
 例えば、「孫が大学生になったら、●円を遺贈する」と記しておくと、遺言の効力発生時にお孫様が大学へ進学されている場合、指定した額を遺贈することが可能です。

 なお、お孫様が進学されないことが確定した場合は、遺贈の効力は生じず、停止条件付に係る財産(●円)は相続人へ帰属するため、この点でもご意向どおりとなります(民法第995条)。

 条件を設ける際の注意点として、「生活に困っていたら」や「幸せなら」といったあいまいな表現は、解釈をめぐるトラブルを引き起こしかねないため、配慮が必要です。どのような条件を付けるか、トラブルの元にならないような遺言作成のためにも、専門家に相談するとよいでしょう。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
分譲マンションの相続税評価額は高くなったのか?

分譲マンションの相続税評価額が高くなったと聞きました。今後は分譲マンションを購入しない方がよいのでしょうか?

Q
今月のご相談

 現在、戸建てに住んでいますが、高齢になり自宅の維持も難しくなってきました。
 今後のことも考え、住み替えを検討しています。ある程度利便性の良いところと考えると分譲マンションが多いのですが、分譲マンションの相続税評価額が高くなったと聞き、購入を躊躇しています。分譲マンションであれば必ず相続税評価額は高くなってしまうのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続税を計算する際に用いる財産の相続税評価額のうち、居住用の分譲マンション所有に係る相続税評価額の評価方法が改正されました。特に高層階に影響があるといわれる改正ですが、分譲マンションであれば必ず相続税評価額が高くなったとはいい切れません。

A-2
詳細解説
1.従来の居住用の分譲マンションの相続税評価

 相続税法では、相続等により取得した財産の価額(相続税評価額)は、特段に定めるものを除き、「当該財産の取得の時における時価」によるものとされています。この時価による相続税評価額は、通常、財産評価基本通達の定めに従って算定します。

 たとえば、居住用の分譲マンション1室は、従来より以下の算式により相続税評価額を計算します。

居住用の分譲マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
=区分所有建物の価額(①)+敷地(敷地権)の価額(②)
  1. ①区分所有建物の価額
    =建物の固定資産税評価額×1.0
  2. ②敷地(敷地権)の価額
    =敷地全体の価額(注)×敷地権の割合
  1. (注)路線価方式又は倍率方式により算定した評価額

 上記のとおり土地については、敷地権の割合で按分して算定されるため、敷地面積あたりの戸数が多いマンションは、一戸建て住宅より「相続税評価額」と「時価」との乖離が生じやすいといわれています。

 実際、財産評価基本通達改正のためのパブリック・コメント内で示された「御意見に対する国税庁の考え方」の中で、「相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離は、いわゆるタワーマンションに限らず、中低層も含め居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)全体について平均して2倍以上の乖離が生じており」と述べていることからも、お分かりいただけるかと思います。

 とりわけ戸数が多く高層階ほど時価が高くなるタワーマンションではその傾向が顕著で、富裕層が相続税対策のために高額なタワーマンションの高層階を購入する、いわゆる“タワマン節税”という言葉も一般的です。

2.財産評価基本通達の改正

 このタワマン節税に関する最高裁判決で国側勝訴が確定となり、これにあわせて、令和5年度税制改正大綱の中で評価の適正化の検討が示されました。その後有識者会議を経て、国税庁はパブリック・コメントを出しました。

 最終的な改正内容としては、上記1.で求めた相続税評価額が市場価格理論値の6割に満たない場合には、6割の水準まで評価額を引き上げるものとなり、2024年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産について適用されます。

 つまり、6割に満たない場合に改正前よりも評価額が上がるのであって、必ずしも分譲マンションすべての評価額が上がるとまではいい切れません。

 また、評価額が上がったとしても6割程度まででおさまると考えれば、QOLも考慮に入れつつ、分譲マンションへの住み替えも候補の1つとして、継続してご検討されてはいかがでしょうか。

 なお、国税庁のサイトでは、改正後の評価額が算定できる計算ツールを用意しています。

 今回のご相談は今後の購入ですが、もしすでに所有されている場合には、どの程度の評価額になるのかこの計算ツールをご利用いただくのもよいでしょう。

 相続税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
相法22、e-GOV パブリック・コメント「「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見募集の結果について」

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