家と財産を守るための~不動産の相続対策 相続させない方が良い不動産
相続させない方が良い不動産があれば、教えてください。
不動産を多数所有していますが、相続させない方が良い不動産があれば、教えてください。
相続させない方が良い不動産として、相続税評価額が実勢価格を上回るもの、管理が困難なもの、値下がりが予想されるもの、などが考えられます。これらは相続に適さないため、生前に処分するなどの対策が望まれます。 相続税を計算する際の不動産の評価額(以下、相続税評価額)は、実際に取引される価格(以下、実勢価格)より低くなる場合が多く、相続税の計算をする上においては、現金を持っているよりもメリットがある資産と考えられています。
しかし、以下のような不動産は相続税を計算する上ではデメリットが多く、相続させない方が良いと一般的に考えられています。
- ○相続税評価額が実勢価格を上回っていると思われる不動産
- 住宅用地等としての需要が少なく、相続税評価額を下回る価格でしか売却できない地域の土地
- 個別要因による実勢価格の減少額が、相続税評価額を計算する上で減額できる額を大きく上回っている土地
- 道路や隣地との高低差が激しい土地
- 間口が狭い、不整形等により建築が困難な土地
- 過去に事故等(自殺・殺人事件等)があった又は近隣に嫌悪施設がある不動産
- 相続税評価額が実勢価格を大幅に上回っている次のような建物(主に鉄骨造又は鉄筋コンクリート造)
- バブル期等、建築費が高い時期に建てられた豪華な建物
- 規模の割に収入が少ない賃貸建物
- 利用が困難な建物(建物取壊しにより価値が上がる不動産)
- 地代が低額である昔からの貸地(底地)
- ○次の世代による管理が困難と思われる不動産
- 稼働率が低い賃貸不動産
- 大規模修繕等、建物のメンテナンスがほとんど行われていない不動産
- 遠方にある未利用不動産
- 建物が旧耐震基準である未利用又は賃貸不動産(取壊し予定の場合を除く)
- ○値下がりが予想される相続後売却予定の不動産
- バブル崩壊後値下がり続けて、上昇傾向がみられない売却予定の不動産
- 賃料水準の低下が著しい売却予定の賃貸不動産
- ○相続の争いの原因となりそうな不動産
- 全財産の中で大半の価値を占めている不動産
- 相続により取得することを嫌がられる不動産
これらの不動産を所有されている方は、早期の売却を検討されると良いでしょう。
ただし、“相続させない方が良い不動産”は、買い手からみると“買わない方が良い不動産”に該当しますので、売却できない又は売却にかなりの時間を要する可能性があります。
売却検討の際、売却が困難であるとすぐに諦めるのではなく、“相続させない方が良い不動産”を“相続させても良い不動産”に転換できるよう、実行可能な対策を講じていただくと良いでしょう。
なお、売却益を期待して購入した山林は、現在のところ売却を含め有効な対策が見つからない状況であり、“相続させるしかない不動産”といえます。このような状況にならないよう、不動産投資を行う前に、当事務所へご相談ください。
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万一に備えるための~保険の相続対策 二次相続を見据えた生命保険の活用
いくら対策を施しても、想定どおりにいかないのが世の常です。何かを利用するときは、メリットデメリットをきちんと理解して納得することが肝要です。
夫の相続対策を検討している中で、保険会社から次の提案を受けました。これはその次の相続(二次相続)も見据えて、妻である私も生命保険に加入した方がよいというものでした。この提案はどのような効果があるのでしょうか?
現在、私は医療保険(死亡保障なし)に加入していますが、死亡保障の保険には加入していません。
- <家族構成>
- 夫80歳、妻70歳、子2人(独立して別生計)
- <提案内容>
- ①次の保険に加入
- 保険種類・・・一時払終身保険 1,000万円
- 契約形態
契約者(保険料負担者)…夫
被保険者…妻
死亡保険金受取人…夫
- ②夫が妻より先に死亡(相続発生)
①の契約内容を変更
- 契約者…夫→妻
- 死亡保険金受取人…夫→子
- ①次の保険に加入
この提案内容どおりいけば、ご主人の相続時、あなたの相続時、各々相続税を軽減できる可能性がみられます。ただし、この可能性には“前提”があります。“前提”どおりにいかなかった場合の問題点も理解しておかれるとよいでしょう。
今回の提案内容に基づいた保険の課税関係や、メリットとデメリットは、それぞれ次のとおりです。
夫の相続(一次相続):
- 「生命保険契約に関する権利」として、夫の相続財産となる。
- 相続発生時の解約返戻金相当額が相続税の課税対象となる。
妻の相続(二次相続):
- 死亡保険金が、妻の相続財産とみなされる。
- 死亡保険金のうち、非課税限度額を超える部分について相続税の課税対象となる。
- 非課税限度額とは、“生命保険の非課税(500万円×法定相続人の数)”で計算した金額。
法定相続人とは、相続を放棄した人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
ご相談のケースで子2人が相続人であれば、「500万円×2人=1,000万円」が非課税限度額となります。
このプランの有用性は、主に次のとおりです。
- 夫が一時払終身保険の保険料負担者となることで、妻自らが保険料を負担することなく、妻の相続時の資金と相続税計算上の非課税限度額が確保できる。
- 一次相続発生時、解約返戻金相当額が払い込んだ保険料を下回っていれば、現金で保有しているよりも夫の相続財産の評価額が下がる。つまり、相続税の対象となる金額が減ることで、相続税が軽減できる。
ただし、このプランどおりにいかなかった場合、注意が必要です。例えば、次の点です。
- 妻が夫より先に亡くなった場合、夫が受け取る死亡保険金は相続税ではなく、所得税が課税される。つまり、想定どおりのメリットを享受できないことになる。
- 内部環境や外部環境の変化により解約しなければならなくなった場合、経過期間によっては返戻金が払込保険料を下回り、元本割れすることがある。
将来の相続を考えたとき、その次の相続まで考える必要があるのかどうかは、対象者の財産の保有状況、家族構成等を考慮に入れる必要があります。さらに、想定どおりにいかなかった場合の問題点を洗い出し、リカバリーについてもあわせて検討されておかれるとよいでしょう。相続対策に関することは、当事務所へご相談ください。
<参考条文等> 相法3、12、財産評価基本通達214 他
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