お知らせ

 今回は相談事例を通じて、不在者財産管理人についてご紹介します。

 

 先日、母が他界しました。父は5年前にすでに亡くなっており、相続人は私と妹の2人だけです。母の相続財産は、自宅土地建物(評価額約2,000万円)と預貯金約2,000万円です。遺言書はありませんでした。私は以前から母の自宅に同居しており、今後もここに住み続けたいので、自宅土地建物は私が相続したいと思っています。不動産の登記名義を変更するには相続人全員による遺産分割協議が必要と聞きましたが、妹は10年程前から行方不明で連絡も取れず、協議をすることができません。どうしたらよいでしょうか?

 本件の場合、家庭裁判所に妹様の不在者財産管理人の選任を申立て、選任された管理人と遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人とは、不在者(妹様)に代わって財産を管理する人のことです。不在者が財産管理人を置いていない場合には、利害関係人は不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に請求することができます(民法25条)。
 本件では、妹様が行方不明のため遺産分割協議ができないという利害関係がありますから、選任の申立てをすることができます。不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、本人に代わって遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人には、利害関係のない親族等、または弁護士、司法書士等の専門家が選任されます。選任の申立て時に候補者を立てることができますが、必ずその候補者が選ばれるわけではありません。利害関係がある、財産が複雑、高額等の事情があれば専門家が選任される可能性が高いです。

 なお、専門家が選任された場合、毎月の報酬や、遺産分割協議に係る報酬等が発生します。これらの報酬は不在者の財産から支払われます。また、不在者財産管理人の職務は、遺産分割協議が整っても終わらず、不在者が見つかったとき、亡くなったとき、財産が無くなったとき等まで続く点に注意が必要です。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 土地の分割協議をするにあたり、何か注意しておいた方がよいことはありますか?

 父の名義で下の図のような土地(合計900㎡)を所有しております。この度父が亡くなり、この土地をどのように分割しようか相続人3名(A、B、C)で遺産分割協議中です。分割協議にあたり、何か注意しておいた方がよいことなど、アドバイスを頂けませんか?

 土地の相続税評価は、誰がどのように相続するかにより、評価額が大きく変わる場合があります。

 土地の評価は、1.地目ごと、2.利用単位ごと、3.取得者ごと、に1つの土地として評価することになっています。したがって、必ずしも地番ごと(1筆ごと)に評価することにはなりません。
 今回評価しなければならない土地について当てはめて考えてみますと、

  1. 地目ごと
     3筆ともに地目は宅地であるため、全体を1つの土地として評価します。
  2. 利用単位ごと
     3筆ともに空き地(未利用地)であるため、全体を1つの土地として評価します。
  3. 取得者ごと
     1人の相続人が3筆すべて相続する場合や3筆すべてを共有で相続する場合には、全体を1つの土地として評価します。

 21番地は相続人A、22番地は相続人B、23番地は相続人Cが相続する、という場合には、取得者ごとに相続することになっていますので、3筆を別々に評価します。

 そこで、全体で評価する場合と別々に評価する場合とで、評価額がどのように変わるのか次で計算してみましょう。

 上記の通り、評価額の差額が16,428,000円も生じる結果となりました。適用される税率が20%の場合では、300万円程度納付する相続税額に差額が生じます。

 ただし、利用の単位が同じ土地について取得者を分けて相続する場合には、その分割の合理性に配慮しなければなりません。例えば、下図のように高い路線価に面した部分のみをAが、その他をBが相続したような場合には、「不合理分割」と判定され、取得者ごとに別々に評価することは認められません。相続した部分が、それぞれ独立して有効利用可能かどうかが判断のポイントとなります。

 評価額の高い低いの判断のみでは分割協議はまとまりませんが、分割協議の内容によって納付する相続税額が大きく異なる結果となりますので、十分に検討する必要があるでしょう。


<まとめ>

  • 土地の評価は、地番ごとではなく利用の単位ごとに評価します。
  • 土地の取得の方法(取得者を分けるなど)を工夫すれば、評価額が大きく下がる可能性があります。
  • 不当に評価が下がるような不合理な分割をした場合には、その土地を取得者ごとに評価することは認められません。

<根拠条文> 財産評価基本通達7、7-2

 

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