お知らせ

 歌舞伎界をこれまでと違った視点で描いた「国宝」が、
 空前の大ヒットとなっています。
 梨園にゆかりのない実力派の若手俳優が主演を演じているのも
 影響してか、余波がいろいろなところに広がっているそうです。

 ロケ地が「聖地」となり、ファンが聖地巡礼に押し寄せたり、
 初めて歌舞伎を見ようと訪れる若者が増えています。
 滋賀県内では2ヶ所がロケ地となったことから、
 県は急遽ロケ地マップを作ったところ、全く足りず6回増刷となりました。

 城崎温泉近くの出石永楽館は、近畿最古の芝居小屋として有名で、
 片岡愛之助さんが座長を務める公演が行われることでも知られています。
 映画の公開後、若い女性の一人客が目立ち始めて、
 8月の来場者は前年の8倍になったそうです。

 時代劇は、歌舞伎の影響を受けて生まれ、特に時代劇の定番である、
 「チャンバラ」は、歌舞伎の演目から取り入れられたといわれています。
 歌舞伎は、古くからの大衆芸能のひとつであるでありますが、
 その歴史は脈々と続き、日本の伝統芸能となっています。

 明治になり外国文化が入ってくるまで、
 歌舞伎は日本の大衆芸能として絶大な人気を誇っていました。
 「アイドル」や「スター」も生まれたそうですから、
 映画スターに熱をあげる、現代のファンとなんら変わりがないといえます。

 大正に入ってから、歌舞伎を支え続けているのが、
 映画、演劇興行を行う、松竹です。
 一昨年に建て替えられた歌舞伎座を有し、主な上演場所とするほか、
 各地での興行も一手に取り仕切っています。

 創業者 大谷竹次郎氏は、興行相撲で、お茶やタバコの販売、
 貸し座布団商売を行う父の下に生まれます。
 父は、商売の場所を劇場に移し、その後売店の経営を始めます。
 19歳のときに、父から権利を引継いだのを契機に、
 次々と京都の劇場を手に入れます。

 大阪に進出して、上方興行界を支配したかと思うと、
 さらに、東京に進出して大手劇場を買収し、
 歌舞伎座も大正2年に手に入れることとなります。
 映画の時代に移り、松竹も軸足をそちらに移しますが、
 歌舞伎の興行については、独占的な窓口となっています。

 大衆芸能と称されるものの多くが、一時のブームとして消えていく中で、
 このように長い間、歌舞伎が受け継がれていけたのは、
 大きなスポンサーの後ろ盾があったことが大きいといえます。

 加えて、「○○屋」というスポンサーのブランドとなる、
 ブランドをつけてもらうことなり、
 役者ごとの個性を引き立たせることができたのです。
 時代劇が、その時々の観客に受けが良いようアレンジされすぎて、
 形骸化してしまったのとは対照的です。

認知症の疑いがある方でも遺言作成は可能か

今回は相談事例を通じて、認知症が疑われる人の遺言作成に関する留意点について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 最近、父の物忘れがひどくなってきており、同じ話を何度も繰り返すようになっています。
 認知症の診断は受けていませんが、昔に比べて明らかに様子が違います。父とは同居しており、住んでいる家(父名義の不動産)を私が相続したいと考えています。ただ、兄弟とは仲が悪く、遺産分割で揉める可能性があります。遺言を書いてもらいたいのですが、父の今の状態で有効な遺言は作れるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 認知症の疑いがある方でも、遺言能力(意思能力)を有している限り、遺言を作成することは可能です。遺言能力とは、遺言者が自身の財産状況や相続関係を理解し、遺言内容を合理的に判断できる能力を指し、民法第963条及び第961条に基づく遺言の有効性の前提条件とされています。加えて、民法第3条の2では、「法律行為の当時に意思能力を有しない者がした法律行為は、無効とする」と規定しており、遺言もこの意思能力の有無によって有効・無効が判断されることになります。

A-2
詳細解説

 実務上、遺言能力の有無が争われた場合には、医学的診断結果、遺言内容の複雑性、動機の合理性、作成の経緯などが総合的に評価されます。たとえば、同居している子に不動産を相続させたいという動機は生活実態に即しており合理性が認められやすく、内容も単純であれば、遺言能力が肯定される可能性は高まります。

 しかし、これらの条件を満たしていても、認知症の周辺症状(妄想、せん妄、感情の不安定さなど)が強く現れている場合には、意思能力が否定され、遺言が無効と判断される可能性もあります。認知症は進行性の疾患であり、今後さらに認知能力が低下することが予想されるため、遺言の作成はできるだけ早期に行うことが望ましいといえます。

 その際には、公正証書遺言の作成が有効であると考えられます。公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思能力を確認した上で、証人2名の立会いのもとで作成されるため、形式的・実質的な信頼性が高く、後日その有効性が争われるリスクを大きく低減できます。また、原本は公証役場に保管され、家庭裁判所の検認も不要であるため、相続開始後の手続きが円滑に進みます。特に認知症の疑いがある場合には、公証人による意思能力の確認が第三者の証明となるため、遺言の有効性がある程度担保されます。

 加えて、たとえ有効な遺言が存在していても、作成の経緯や背景、その内容によっては遺留分侵害額請求(民法第1046条以下)や、不当利得返還請求などの法的争いに発展する可能性があります。そのため、単に遺言を作成するだけでなく、内容や作成方法にも工夫があるとよいでしょう。

 具体的には、公正証書遺言にして専門家(行政書士・司法書士・弁護士等)に関与してもらうことで、遺言作成に必要な情報の収集や、法的観点からの助言を受けることができ、より実情に則した内容の遺言を作成することができます。また、遺言書の中に「付言事項」を設け、遺言の動機や家族への感謝の言葉を添えることも対策としてよいかと思われます。

 以上のことから、自宅を相続するための方法として遺言は有効な手段ですが、無効となるリスクもあることを理解した上で、公正証書遺言の活用、専門家(行政書士・司法書士・弁護士等)への依頼といった対応を行うと、よりよいかと思われます。

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3年過ぎても分割できない場合

相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したのですが、3年経とうとする現在も未分割のままです。どうしたらよいですか。

Q
今月のご相談

 父が亡くなり、相続人は、子である私と兄の2人です。遺産分割でもめており、当初の相続税の申告は未分割で行いました。その際、分割後に小規模宅地等の特例の適用を受けようと「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したのですが、それから3年経とうとする現在も遺産に関する裁判中で、未分割のままです。申告期限から3年を経過した後であっても、分割した際に小規模宅地等の特例を適用したい場合は、どうしたらよいですか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 一定の書類を期限内に提出することで、3年経過後であっても小規模宅地等の特例を適用することができます。

A-2
詳細解説
1.相続税の申告納付

 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に行います。また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。

 この場合、未分割であれば、各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。

2.申告期限後3年以内の分割見込書

 上記1.のとおり、未分割であっても申告納付することとなりますが、この場合において、分割しないと適用できない次の特例について、申告書の提出期限後3年以内に分割する見込みであることを記載した書類(申告期限後3年以内の分割見込書)を、上記1.の申告書と併せて提出することで、申告書の提出期限後3年以内に分割した際に、当該特例を適用することができます。

  • 配偶者の相続税の軽減
  • 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例)
  • 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例
  • 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
3.遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請

 上記2.の手続きを行った後、その申告期限後3年を経過する日後に上記2.の特例を適用したい場合には、上記1の申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することで、3年経過した後の分割であっても、当該特例を適用することができます。

4.ご相談のケース

 ご相談のケースは、上記2.の手続きが済んでおり、次は上記3.の手続きを行うことによって、特例の適用が可能となります。

 期限内に手続きを行わないと、特例の適用を受けることはできません。ご注意ください。

 なお、上記3.の手続きの際には、申請書にやむを得ない事由に応じて以下の書類を添付する必要があります。

  • ①相続又は遺贈に関し訴えの提起がなされていることを証する書類
  • ②相続又は遺贈に関し和解、調停又は審判の申立てがされていることを証する書類
  • ③相続又は遺贈に関し遺産分割の禁止、相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されていることを証する書類
  • ④①から③までの書類以外の書類で、財産の分割がされなかった場合における、その事情の明細を記載した書類

 上記のような書類の準備も必要となるため、余裕をもって準備しましょう。

 上記2.の手続きは、相続税の申告と同時に提出するため提出もれは少ないのですが、上記3.の手続きは「3年経過」ということで忘れてしまいがちです。特例の適用が受けられないと、最終的な相続税額がかなり変わります。未分割の状態が続いている場合には、期限内に忘れず提出をしましょう。

<参考>
国税庁HP「B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」、「B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」など

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