お知らせ

死後離縁

今回は相談事例を通じて、死後離縁について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 私の父(養父)が先日亡くなりました。私は母の再婚に伴う代諾養子縁組により、父の養子となりましたが、昔からずっと父方の親族から暴言や皮肉を言われてきました。以前までは父が守ってくれていましたが、父が亡くなった今、嫌がらせや暴言がエスカレートし、私は精神的に参ってしまいました。私は父方の親族と親族関係を終了させたいと思っていますが、何か良い方法はありませんでしょうか。

 また、母は父の遺産はすべて私に相続してほしいと言っておりますが、上記問題解決のため何かしらの対応をしたとしても、相続関係に影響はありませんでしょうか。法的にどのような扱いになるのかご教示いただけますと幸いです。

A-1
ワンポイントアドバイス

 「死後離縁」という手続きを行うことにより、お父様との離縁が成立すれば父方との親族関係を終了させることができます(民法729条)。ただし、死後離縁が認められるためには家庭裁判所の許可が必要となります(民法811条6項)。遺産を相続しながら扶養義務や祭祀を免れるためといった、明らかに不純な理由の場合、許可審判はされないので注意が必要です。

 なお、死後離縁をした場合でも、すでに生じた相続における相続人の地位に影響はなく、遺産を相続することができます。

A-2
詳細解説
1.「死後離縁」の手続きについて

  1. ① 養子であるご本人が、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
  2. (※)養子が15歳未満の場合は、法定代理人が申立てを行うことになります。
  3. ② 家庭裁判所による許可審判の確定後、「審判書謄本」と「確定証明書」を持参し、市区町村役場に養子離縁の届出を行います。
  4. (※)「確定証明書」は、審判をした家庭裁判所に申請書を提出することで交付を受けられます。
  5. (※)家庭裁判所の審判に不服があれば、審判結果の連絡を受けてから2週間以内であれば不服申立てをすることが可能です。
2.離縁後の養子の氏について

 原則、縁組前の氏に戻ることになりますが、離縁の日から3ヶ月以内に市区町村役場に届け出ることにより、引き続き縁組中の氏を称することができます。

 ただし、「縁組の日から7年を経過して以降の離縁の場合」という要件があるので、養子縁組の日から7年経過前の離縁の場合は、復氏することが原則となるので注意が必要です。

  1. (※)7年経過前の離縁の場合でも、家庭裁判所による「氏の変更」に関する許可審判がされれば、縁組中の氏に変更することは可能です。判断基準としては、「やむを得ない事由(氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合)」があるかどうかが基準となります。

 「死後離縁」は家庭裁判所や役所への届出、証明書類の取得など煩雑で時間のかかる手続きが多くあります。そのため、専門家に相談の上、進めていただくことをお勧めします。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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相続財産の寄附と税金 気をつけたいポイントは?

故人の遺志を尊重して相続財産を寄附する場合に、気をつけたいポイントを教えてください。

Q
今月のご相談

 妻が他界しました。私たち夫婦には子供がおらず、相続人は私と甥姪たち(夫の兄、姉の子)です。遺言書はありませんが、生前に自分が亡くなった際は、財産の一部を社会に役立つ団体等に寄附したいと申しておりました。
 妻の財産を寄附したい場合には、手続きや税金などについてどのような取扱いになるのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 正式な遺言書がないと、奥様の遺志をそのまま実現することはできません。ご相談者様が奥様の遺志を尊重するには、ご相談者様が相続をした上で、寄附の手続きをとることになります。この場合の相続時の寄附について、方法や税金の取扱いなど、気をつけたいポイントを以下にご紹介します。

A-2
詳細解説
1.遺言がない場合の寄附について

 ご本人が亡くなったあとに財産を寄附したいと考えていた場合でも、正式な遺言書がないと、その遺志を実現することはできません。

 「どこに、何を、どれくらい寄附するか」という内容を、遺言書という形で残しておくことが必要です。

 今回のご相談では、奥様が遺言書を残していなかったとのことですので、奥様の遺志で寄附することはできません。

 このような場合は、まず相続の手続きを行い、財産を相続したあとで、相続人の判断で寄附をすることになります。

 たとえご本人が生前に「寄附したい」と周囲に話していたとしても、相続人にその意思がなければ、寄附は行われません。

2.相続税がかからない場合も

 相続した財産を寄附すると、条件を満たせばその寄附分について相続税がかからない(非課税となる)ことがあります。

非課税になるための主な条件:

  1. 寄附した財産が、相続や遺贈で受け取ったそのままの財産であること
    ※現金に換えてから寄附した場合は対象外ですのでご注意ください
  2. 相続税の申告期限(相続日から10ヶ月後の応答日)までに寄附すること
  3. 寄附先が、国や地方公共団体、または教育・科学などの分野で社会に大きく貢献していると認められた特定の公益法人等であること

非課税対象となる寄附先の例:

  • 日本赤十字社
  • 財団法人日本ユニセフ協会
  • 国境なき医師団
  • 公益法人がん研究会
  • 国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン
  • 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

その他にも、学校法人や公益団体などが非課税の対象になることがあります。寄附を考えている団体が対象かどうか、事前に確認することをおすすめします。

3.所得税や住民税も確認を

 相続人が財産を受け取ったあとに寄附する場合は、「寄附金控除」という制度が使えるかもしれません。これは、寄附した金額の一部が所得税や住民税の計算で控除される制度です。

 寄附の内容等によって、受けられる所得控除や税額控除が変わります。また、対象となる範囲も異なりますので、どういった寄附であったら、どういった控除が受けられるかの詳細は、寄附先として検討している団体のホームページなどでご確認ください。

 なお、寄附をした財産が不動産や株式の場合には、寄附=譲渡として譲渡所得となり、税金がかかることがあります。ただし、この場合に一定の条件を満たして期限内に手続きをすれば、税金がかからない特例もあります。

 ご自身が亡くなったあとに確実に財産を寄附するには、遺言書が必要です。また、寄附名目であれば、財産の種類や寄附先に関係なく相続税等が非課税となる訳ではありません。特に相続人が寄附をする場合には、限られた期間の中で、相手方や財産の選定をした上で実行しなければなりません。慎重かつ迅速に行いましょう。

 相続と寄附と税金の関係について詳しくお知りになりたい方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき」など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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