お知らせ

空き家の相続登記

相続した一戸建ては空き家ですが、相続登記は必要ですか?

Q
今月のご相談

 空き家となっていた一戸建てを、2025年10月に父親から相続しました。今後住む予定はなく、売却か解体を検討しています。空き家でも相続登記は必要ですか? また、相続登記をせず空き家のまま放置するとどうなりますか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 空き家であっても相続登記をする必要があります。相続登記をせず空き家のまま放置した場合の問題については、詳細解説をご確認ください。

A-2
詳細解説
1.相続登記

 2024年4月1日より、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければならなくなりました。これは法律で義務化されたため、一般的に「相続登記の義務化」といわれています。

 正当な理由がなく相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 今回のご相談のような空き家であっても、相続登記は原則として必要です。ただし、相続後(遅くとも3年以内)に空き家を解体される場合、建物の相続登記は不要ですが、取り壊した後の建物滅失登記(建物の取り壊しを法務局に申請する手続き)は必要となります。この建物滅失登記は、解体してから1ヶ月以内に行わなければならないため注意しましょう。

2.相続登記をせず空き家のまま放置した場合

 相続登記をせず空き家のまま放置すると、次のような問題が起こり得る可能性があります。

  • 罰則の対象に:
    上記1.のとおり、3年以内に相続登記をしないと過料が科される可能性があります。
  • 売却、賃貸などができない:
    登記名義が故人のままでは、契約行為が成立せず、買主、借主などとの取引が進みません。
  • 権利関係の複雑化:
    時間が経つと二次相続が発生し、相続人の数が増加します。これにより、登記に必要な関係者が増え、遺産分割協議が複雑化します。
  • 固定資産税の負担が不明確に:
    登記名義が故人のままだと、納税義務者が曖昧になり、延滞や督促の対象になることもあります。
  • 空き家対策特別措置法の対象に:
    管理が不十分な空き家は「特定空き家」に指定され、行政からの指導や強制解体の対象となる可能性があります。

 このような問題を回避するためにも、相続登記は早めに済ませ、空き家のまま放置しないことが重要です。相続登記を完了させることで、売却、賃貸といった今後の活用方針を柔軟に検討できるようになります。また、登記名義人が明確になることで、補助金の申請などの各種手続きもスムーズに行えます。

 相続登記に要する費用の一部を助成したり、空き家の解体費用の一部を補助したりする自治体もありますので、不動産の所在地の自治体に確認してはいかがでしょうか。

 相続登記の手続きには、戸籍謄本や遺産分割協議書、固定資産評価証明書等の書類が必要です。手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼することで、正確かつ迅速に進めることができます。また、不動産の売却や利活用を検討している場合は、不動産会社やコンサルタントに相談することで、資産価値を最大限に活かす方法を見つけることができるかもしれません。

 空き家だからと放置せず、早期に相続登記を行い、今後の方針を明確にすることが大切です。専門家の力を借りながら、安心・安全な資産管理を進めていきましょう。
 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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死亡保険金を他の相続人に分ける

死亡保険金を他の相続人に分けることはできますか?

Q
今月のご相談

 父が高齢になり、相続について話し合っています。母はすでに他界しており、相続人は私と兄の2名です。父は生命保険に1件加入しており、死亡保険金受取人は私になっています。

 父が所有する自宅の土地建物は、同居している兄が相続する予定ですが、兄は自宅の土地建物を相続すると相続税が払えないかもしれないとの理由で、死亡保険金を分けてほしいと言っています。分けた場合の税金への影響を教えてください。

【契約内容】
  • 契約者・保険料負担者:父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:私(子) 100%
  • 死亡保険金:5,000万円
A-1
ワンポイントアドバイス

 現在の契約形態のまま、ご相談者様が死亡保険金を受け取りお兄様にその一部を分けた場合は、ご相談者様からお兄様への贈与として扱われ、贈与税が課税されます。贈与税ではなく相続税としたい場合には、お父様がご存命の間にご相談者様とお兄様の両名を受取人に変更することで、相続税とすることが可能となります。

A-2
詳細解説
1.生命保険の死亡保険金受取人

 生命保険の死亡保険金受取人は、生命保険の契約申込時に契約者が指定します。

 また、保険期間中であれば途中で変更することができ、1名ではなく複数名を指定することができます。複数名指定する場合には、それぞれの受取割合を決めて指定します。

2.死亡保険金と相続税

 死亡保険金は、被保険者の生前中の契約に基づいて権利が約束されたものであるため、指定された受取人の固有の財産として扱われます。そのため、遺産分割の対象とはなりません。

 一方、相続税の計算においては、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金などは、本来の相続財産ではないものの課税の公平性から「みなし相続財産」として、課税の対象となります。

 ただし、相続人が受取人である場合など一定の要件に該当する場合には、遺族の生活保障を確保する目的から、一定の非課税枠が設けられています。

3.死亡保険金を分けたとき

 相続により死亡保険金受取人が受け取った保険金の全部または一部を、他の相続人へ渡す行為は、受取人固有の財産を無償で渡したことになることから、贈与として捉えられ、贈与税が課税されます。

 そのため、ご相談のケースでは、ご相談者様が受け取った死亡保険金をお兄様に分ける場合は、ご相談者様からお兄様への贈与となり、贈与税が課税されます。

4.ご相談のケースの場合

 上記のことを総合すると、現状のままであれば贈与税が課税されてしまいますが、お父様がご存命の間に死亡保険金受取人をご相談者様とお兄様の2名に変更することで、受け取る死亡保険金については、ともに相続税として課税の対象となり、また、一定の非課税枠を利用することができます。

 ただし、受取人を変更することによって、お父様が保有されている財産を引き継ぐ割合がどう変動するかをきちんと事前に検討しておく必要があるでしょう。法律上は固有の財産とはいえ、相続によって死亡保険金を受け取ることから、この死亡保険金も含めて相続財産と考える方は少なくありません。禍根を残さないように、お父様がご存命の間に話し合われてはいかがでしょうか。

 税金は、取引の流れによってかかる税目が異なる場合があります。お父様が存命の間にできる選択を、専門家に相談しながら実行していきましょう。
 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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