お知らせ

被保険者と保険金受取人が同時に亡くなった場合

被保険者である父と受取人の長女が同時に亡くなりました。この場合、保険金受取人は誰になるのでしょうか。

Q
今月のご相談

 父と長女が交通事故で同時に亡くなりました。父は長女を受取人とする生命保険に加入していましたが、誰が死亡保険金を受け取ることになるのでしょうか?

【契約内容】
  • 契約者(保険料負担者):父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:長女
  • 保険金額:3,000万円
  • 特記事項:約款での別段の定めなし
A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談の場合、保険金受取人はご長女様の相続人である、旦那様(E)とそのお子様(F、G)の3人となります。保険金は、それぞれ均等に1,000万円ずつ受け取ることになります。

A-2
詳細解説
1.死亡保険金の受取人は誰になる?

 生命保険契約では、保険事故発生前に指定されていた保険金受取人が死亡した場合、契約者は当該受取人を再指定することができます。ただし今回のケースのように、契約者と保険金受取人が同時に死亡している場合は、再指定をすることができません。

 このように、再指定をしないで死亡した場合には、約款等で別段の定めがある場合を除き、保険金受取人として指定されていた方の相続人が、当該保険金を受け取ることになります。この場合に、保険金受取人が複数であるときは、約款等で定められている場合を除き、均等に受け取ります。

 今回のケースは約款等で別段の定めがないため、それぞれ一般的な取扱いとなります。つまり、保険金受取人は、保険金受取人として指定されていたご長女様の相続人である旦那様(E)と、お子様(F、G)となります。また、受け取る保険金額は、それぞれ均等に1,000万円ずつです。

2.死亡保険金の非課税規定の適用可否

 死亡保険金の非課税規定が適用されるのは、お父様の相続人が取得した死亡保険金に限られます。

 したがって今回のケースでは、代襲相続により、ご長女様のお子様(F、G)がお父様の相続人となるため、非課税規定が適用されます。ご長女様の旦那様(E)はお父様の相続人ではないため、非課税規定は適用されません。

【お父様の相続人】
お母様(B)、ご相談者様(D)、ご長女様のお子様(F、G) 計4人
【死亡保険金の非課税規定の適用を受ける人】
ご長女様のお子様(F、G) 計2人
3.計算式

【非課税限度額】
500万円×4人(法定相続人の数 B、D、F、G)=2,000万円

【相続人となる受取人の保険金合計】
1,000万円(F分)+1,000万円(G分)=2,000万円

【F、Gの非課税財産控除額】
2,000万円×1,000万円/(1,000万円+1,000万円)=1,000万円

【各人が受け取る死亡保険金の相続税課税価格】
ご長女様の旦那様(E):1,000万円-0=1,000万円(受け取った死亡保険金がそのまま課税価格になる)
ご長女様のお子様(F、G):1,000万円-1,000万円=0円

 今回のケースでは、約款での別段の定めがないものとした保険でした。保険によっては、受取順位や受取分が約款で別途定められている場合があります。死亡保険金請求の前に、該当契約の約款を確認するか、保険会社に問い合わせをしましょう。

 なお、いつお亡くなりになるかは誰にもわかりません。保険金受取人を指定する場合には、仮にその人がお亡くなりになった場合に、代わりに誰が受け取ることになるのかまで想定しておくことも肝要でしょう。

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 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 オリンピックで金メダルを獲れば、一生が保証されるという
 国があるのに比べて、日本では大手企業のスポンサーがつく、
 ごく一部の選手以外は一生安泰とはいえないのが実状です。

 そんな中、卓球やアーチェリーなど、マイナーな競技の選手まで、
 スポーツ支援、選手育成に一役買っているのが、
 子供服メーカーのミキハウス(三起商行)です。

 開催間近のパリ五輪では在籍中、8人が内定しています。
 また、元プロ野球選手の桜井俊貴投手や
 モータスポーツの野田樹潤選手などにも支援の幅を広げ、
 従来の枠組みにとらわれず活動を続けている事でも有名です。

 ミキハウスの創業者 木村皓一氏は、
 家業である婦人服メーカーの跡取りでありながら、
 独自の道を歩き始めます。

 同じ婦人服だと、商売敵になるのでまずいと思い、
 子供服にターゲットを絞ります。
 既に、ベビー、幼稚園、小学校低学年、
 それぞれの年代のブランドがあったのですが、
 ベビーと幼稚園の間の年代(1~3才)の子供服が
 ないことに目をつけたのです。

 当時は女性向けのファッション誌が創刊された時期でもあり、
 ファッションに対して関心が強くなってきている時期だったので、
 子供向けの高級ブランドを目指すことに決めます。
 といっても、先立つものも売る相手もありません。
 当てもなく、サンプルを持ち九州へ営業に出かけるのですが、
 当然門前払いの日が続きます。
 起死回生にとセールストークを見直して小倉の小売店に飛び込むと、
 見事的中、取引を取り付けることが出来たのです。

 その後、順調に取引は増えるのですが、
 お金がないため商売を大きく出来ない。
 作ったものは、すぐに売り切れが出る程ですが、
 なかなか生産が間に合わないのです。
 そのうちに、同業者がマネをして、大量に作って売り捌いてしまうのです。

 小売店への卸売りは、順調に伸びてきましたが、
 ひとつの壁が立ちはだかります。
 ミキハウスでは、早くから「トータルコーディネート」
 を目指して商品作りをしていたのですが、
 お店が欲しいものだけが店頭に並び、メーカーの立場では限界でした。

 京都のショッピングビルの一角のテナントを皮切りに、
 自らの手で店造りから、商品陳列まで企画できる、
 小売業へ進出することにするのです。
 これが80年代の一大ブームを起こすきっかけとなり、
 ミキハウスは急成長することになるのです。

 木村氏が歩んできたのは、起業家の王道といえるような
 道筋のように思えます。
 お金も信用も無い最初の頃は、自らが小売店へ足を運び売り歩く、
 労力をかけてお金を稼ぐようなものです。

 信用がついてくると、小売店の方から買いに来てくれるようになるので、
 注文をとりに回らなくてよくなる代わりに、
 商品の開発と生産に力を入れるようになります。

 同業者が同じような商品を作り出すと、
 差別化のため、独自のブランドイメージを作らないといけなくなります。
 そこでは、独自の店舗や広告で、
 ブランドをアピールすることにお金をかけることになるのです。

 起業を「一か八か」の博打のように思っていらっしゃる方には、
 お気の毒なお話ですが、小さな事業を大きくするには、
 いくつものステップを踏んでいかなくてはなりません。
 気持ちが焦るがあまり、ひとつでもステップを飛ばしてしまうと、
 取り返しがつかない、大やけどを負うことになります。
 たまに才能とタイミングに恵まれる幸運な人が登場するので、
 目を奪われがちですが、事業もスポーツも根本は同じ、
 一つ一つステップを登っていくことです。

戸籍証明書等の広域交付制度

今回は相談事例を通じて、戸籍証明書等の広域交付制度について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 父が亡くなりました。相続の手続きには、父の出生から死亡までの戸籍謄本が必要と聞きました。父は生前、転勤が多く本籍地を何度も変更していたようで、戸籍の収集が大変だと思っていたところ、戸籍証明書等の広域交付制度を利用することで収集の負担を軽減できると聞きました。制度について詳しく教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 2024年(令和6年)3月1日より、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行されました。これにより、ご相談者様の最寄りの役所で、全国各地の戸籍をまとめて請求することが可能となりました。

 改正前は、各市区町村で個別にシステムを構築していたため、本籍地のあった市区町村に個別に請求する必要がありました。今回の改正により、市区町村役場が法務省(戸籍情報連携システム)と連携を図ることで、1ヶ所の役場(本籍地ではない、かつ最寄りの市区町村役場)への申請で、お父様の本籍地であった各市区町村役場に保管されている戸籍の請求を行うことができるようになりました。

A-2
詳細解説

 上記のような便利な制度ではありますが、注意点もいくつかあります。

  1. 必ず窓口に請求者本人が出向く必要があります。郵送や代理人では請求できません。
  2. 請求できる範囲は、本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)のみです。
    兄弟姉妹や叔父叔母・甥姪の戸籍の請求においては、この制度は利用できません。
  3. 顔写真付きの身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)の提示が必要となります。お持ちでない場合は、この制度は利用できません。
  4. コンピュータ化(※)されていない一部の戸籍は、市区町村間のネットワークで共有できず、取得することができません。
    (※)1994年(平成6年)の法改正に伴い、それまで紙に手書きやタイプで記録されていた戸籍を磁気ディスクに記録し、調製できるようになりました。これを戸籍の「コンピュータ化」「電算化」といいます。
  5. 制度を利用し請求できるのは、全部事項証明書といわれる戸籍「謄」本です。一部事項証明書や個人事項証明書といった戸籍「抄」本の請求はできません。

 1ヶ所への請求で済むことから、申請者の手間や負担を軽減できる反面、平日に時間を確保できない方や、役所へ足を運ぶことが困難な方は利用が難しい制度です。

 また、兄弟姉妹などが法定相続人になる場合、この制度の利用で取得できる戸籍は、直系の第一順位(直系卑属)、第二順位(直系尊属)の相続人がいないことが証明できる範囲に限ります。一度の請求で相続の手続きに必要な範囲の取得はできませんので、ご注意ください。

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相続と財産債務調書

財産債務調書の提出要否の判断基準である財産の価額に、相続により取得した財産の価額も含めるのですか?

Q
今月のご相談

 2023年1月に父が亡くなり、同年9月に相続により財産を5億円程度取得しました。この財産を含めると2023年末の段階での財産の価額の合計は10億円を超えるのですが、私は財産債務調書を提出しなければならないのでしょうか。なお、日本の居住者で確定申告書は毎年提出していますが、所得は年1,500万円程度のため、これまで財産債務調書を提出したことはありません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続開始年である2023年分の財産債務調書の提出義務の判定において、財産の価額の合計額からその相続等により取得した財産の価額の合計額を除外することができます。そのため、除外して判定した場合には、2023年分は提出する必要がありません。

A-2
詳細解説
1.財産債務調書の提出義務者

 次の①又は②に該当する場合には、一定の事項を記載した財産債務調書を、その年の翌年6月30日までに税務署へ提出しなければなりません。

①所得税の確定申告書を提出する必要がある方又は所得税の還付申告書(一定の還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の有価証券等を有する場合
②居住者の方で、その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する場合
2.相続開始年の場合

 相続開始年(相続の開始の日の属する年)の年分の財産債務調書については、その相続又は遺贈(以下、相続等)により取得した財産又は債務(相続財産債務)を記載しないで提出することができます。この場合において、相続開始年の年分の財産債務調書の提出義務については、上記1の財産の価額の合計額からその相続等により取得した財産の価額の合計額を除外して判定します。

 除外するか否かは選択できます。

3.ご相談の場合

 ご相談のケースを上記1①と②の条件にあてはめますと、以下のとおりです。

  • ①の場合
    所得1,500万円程度<2,000万円
    となるため、この時点で①の条件から外れます。
  • ②の場合
    (a) 相続財産を含めた場合
     財産の価額の合計額≧10億円
    となるため、提出義務が生じます。
    (b) 相続財産を含めない場合
     財産の価額の合計額<10億円
    となるため、提出義務は生じません。
    いずれにするかは、選択が可能です。

 なお、相続開始年の翌年分(2024年分)からは、上記2のような選択はできず、必ず含めることとなります。その点はご注意ください。

 今回のご相談は、相続開始年中に遺産分割が調っているケースですが、未分割の場合の取扱いなど、詳細な内容がお知りになりたい場合には、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
国税庁「財産債務調書制度(FAQ)(令和5年4月)」など

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 1980年代、レンタルレコード店の開業が始まりとされる、
 TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ。
 CDやDVDのレンタルが先細りとなる中、
 図書館を運営したことでも話題になりましたが、
 書店チェーンとしても独自の戦略で攻勢を強めています。

 この4月、旗艦店である渋谷ツタヤを24年ぶりにリニューアルオープンしました。
 そこでは、DVDなどのソフトレンタルはなく、
 アニメや漫画とコラボしたグッズの販売やトレカの対戦ラウンジなど、
 コンテンツの発信拠点として変貌しています。
 
 音楽好きの若者や、少ない小遣いで最大限に欲求を満たそうとする学生の支持で、
 レンタルレコード店は街中に一気に広がりました。
 駅前近くの雑居ビルの上部階に店を構え、
 穴場的な雰囲気のスタイルが主流でしたが、
 その一つが、現在のTSUTAYAであったのです。

 サラリーマンをしていた増田宗昭氏が、噂を聞きつけて大阪の枚方市で
 レンタルレコード店をオープンしたのは82年のことでした。
 姉が喫茶店を始めるというので、それなら今流行のレンタルレコード店を
 一緒にしてはどうかと提案したのがきっかけでした。

 オープン当初からの思いもよらない繁盛ぶりに驚いたのは、
 誰より本人の方でした。
 そんな気持ちに酔いしれているのも束の間、
 すぐに不安が頭をよぎります。

 こんなに儲かる商売なら、すぐにみんなが手を出すはずだ、
 今のようなちっぽけな店なら、ライバルが出てきたらひとたまりも無い。
 本気でビジネスをしようと考えた増田氏は会社を辞め、
 今の店から見て、駅の反対側に店を出すことを決意します。

 いざ計画してみると、本格的な店を作るとなると
 6000万円位お金が必要なことがわかります。
 不足する資金は銀行から借りることになるのですが、
 ここで自らの事業計画と資金の返済方法を見つめなおすことになるのです。

 成長の見込みはあるけれども、海のものとも山のものともわからない商売、
 仮に売上がゼロであっても、人件費や家賃の支払いが出来て、
 返済も出来るにはどうしたらいいかを考えます。
 店の立地、周辺の客層、品揃え、販促方法など綿密に調査したのです、
 サラリーマン時代に店舗の開発をしていたことが役に立つことになります。

 その原点には、「売上がゼロでも維持できる体制」と、
 「やってダメならいつでもやめることが出来る会社であること」だと述べています。
 スタートが順調であればあるほど、ずっと右肩上がりが続くと過信して、
 回収の目処も無く事業拡大に投資する経営者が多い中、
 着実に足元を固めることは大切なことです。

 儲かるビジネスであればあるほど、その旨みを嗅ぎ付けて
 続々とライバルが現れてくることは覚悟しないといけません。
 すると、儲けはどんどん減少して、外の商売と変わらなくなってしまうのです、
 事業拡大に投資するには、そこの所を理解しておかないといけません。

アスベストの事前調査

相続した実家を解体する前に、アスベスト分析調査は必ず行わなければいけませんか?

Q
今月のご相談

 築古の実家(戸建住宅、床面積100㎡)を相続しました。私は家族と持家に住んでおり、今後、居住予定もないため、解体し更地にした上で売却しようと考えています。仲介業者を通じて解体見積を依頼したところ、内訳項目にアスベスト分析調査が盛り込まれており、建物の解体前に事前調査が必要となる旨の説明を受けました。この調査は必ず行わなければならないのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 一定の要件に該当する建築物の解体工事等を行う施工業者は、アスベスト分析調査の結果を、都道府県等に報告することが義務付けられています。今回の解体工事が報告の対象となることから、事前調査が必要と判断されたものと思われます。

A-2
詳細解説
1.アスベスト分析調査

 令和4年4月1日より、一定の要件に該当する建築物(建築物設備を含む)の解体工事等を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づくアスベスト含有建材の調査結果を、都道府県等に報告することが義務付けられました。

 当該解体工事が報告の対象となる「解体部分の床面積が80㎡以上の建築物の解体工事」に該当することから、事前調査が必要と判断されたものと思われます。

 また、令和5年10月1日より、事前調査の実施は一定の要件を満たす有資格者のみが行うことになっており、これらの費用は通常、建物所有者が負担することになります。

2.アスベストとは

 アスベスト(石綿)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹き付けアスベストなどの除去等において、所要の措置を行わないとアスベストが飛散して人が吸入してしまう恐れがあります。(※)厚生労働省HPアスベスト(石綿)に関するQ&Aより抜粋

3.人体への影響

 戸建住宅においては、屋根材、壁材、天井材等のスレートボードやトイレのタイル、天井の吸音材等にアスベストが使用されている可能性があります。
 これら建材に使用されたアスベストの繊維が何らかの事情で空気中に漂い、その繊維を吸引し続けることで肺の組織にダメージを与え、肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

 人体への悪影響を及ぼすアスベストの使用については、大気汚染防止法、労働安全衛生法、建築基準法、宅地建物取引業法等の法令で規制されています。建材へのアスベストの使用は、昭和50年より規制が始まり、その後、段階的に規制が強化され、平成18年には原則として製造・使用等が禁止されました。段階的に規制強化された経緯から、建築年が古い建物に使われた建材ほどアスベストの含有率は高い傾向にあります。

4.除去工事と費用

 分析調査の結果、アスベストの含有が確認されると、解体前にアスベストの種類に応じて除去工事を行う必要があります。民間建築物に対するアスベスト除去工事等に関して、国(国土交通省)は、補助制度を創設しています。補助金制度がある地方公共団体ではこれらを活用することができますので、ご実家が所在する地方公共団体に確認されることをお勧めします。なお、補助対象となるアスベストは、吹き付けアスベスト・アスベスト含有吹き付けロックウールに限られています。

 アスベスト除去費用は、使用されている場所や量により変動しますが、通常の解体費用とは別に、数十万~数百万円単位で追加負担となる事例も見受けられます。売却活動前に事前調査でアスベスト含有の有無を確認し、正確な解体費用を把握されることをお勧めします。

 今回のご相談のように、いざ相続財産を売却しようとしたときに、相続人が想像していなかった費用負担が発生してしまう場合があります。被相続人が存命のうちに財産の整理をしておき、こういった費用の発生の可能性を事前に知っておくと、存命のうちに財産の処分をしたり、遺産分割協議のときに考慮することができたり、など相続後の相続人の費用負担が軽減できる対策を講じることができる場合があります。

 相続対策に関することは、当事務所へご相談ください。

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遺留分対策のための生命保険

遺留分対策として、生命保険の追加加入は効果があるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 私は会社を経営していましたが、昨年75歳で区切りをつけ代表取締役を長男に譲り退任しました。同時に私の相続について検討しました。想定される相続人と資産内容、相続財産の配分は下記のとおりです。

【想定される相続人】
  • 妻(同じ会社の取締役)
  • 子2人(長男:会社を承継、長女:結婚後、遠方に居住、会社とは無関係)
【資産内容】
総額 25,500万円
(内訳)
  • 預貯金:6,000万円
  • 不動産:会社に賃貸している土地建物 11,000万円
    自宅 土地建物 4,000万円
  • 自社株:3,000万円
  • 生命保険:死亡保険金 1,500万円
【相続財産の配分】
  • 長男
    会社を継いでくれた長男にすべての財産を相続させたいと思い、その意思を反映させた公正証書遺言を作成しました。
    妻は遺言の内容に賛同してくれています。
    遺言作成時にサポートしてもらった弁護士から遺留分およびその割合について説明され、長女から遺留分の請求があったときには、応じる必要があることは理解しています。
  • 長女
    長女には長年にわたって現金贈与や孫の学費を支援するなど、十分与えてきた経緯があります。そのため、相続では長女に財産を配分するつもりはありません。

  • 妻も十分な資産を保有しているため、妻への配分は考えていません。

 このように考えていたところ、先日、付き合いのある生命保険会社の担当者から、遺留分への対策に生命保険が有効ということで、一時払終身保険(一時払保険料3,000万円、死亡保険金3,360万円)の提案がありました。納税資金等のために、死亡保険金受取人を長男に指定した生命保険はすでに加入済みです。さらに追加加入する効果はあるのでしょうか?

【契約内容】
  • 保険種類:終身保険
  • 契約者(保険料負担者):私
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:長男
A-1
ワンポイントアドバイス

 死亡保険金は原則、遺留分算定の対象外とされているため、今回新たに生命保険に加入することで遺留分算定の基礎となる財産総額が減少し、ご長女様が請求できる遺留分が少なくなります。その結果、ご長男様へ確実に渡せる財産が増えることになります。

A-2
詳細解説
1.遺留分とは

 遺留分とは、被相続人の財産に対し一定範囲の相続人(兄弟姉妹を除く)が、最低限取得できる権利として保障されている分です。遺留分を侵害する遺言の場合、遺留分の権利を主張されたときには応じる必要があります。

2.遺留分対策として生命保険の新規加入は有効なのか

 遺留分の対策として、生命保険に新たに加入することが有効かどうかについて説明します。

 死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則、遺留分算定の対象外とされています。そのため、現預金を一時払終身保険の保険料に充当することで現預金が減り、遺留分算定の基礎となる財産総額が減少します。

 その結果、ご長女様が請求できる遺留分が少なくなります。また、死亡保険金は受取人となるご長男様の固有財産と扱われますので、ご長男様に確実に渡せる財産となります。

(※)相続税の計算においては、みなし相続財産として相続税の対象になります。

3.具体的な効果の試算

 ご相談者様の資産内容で具体的に効果を試算すると、次のとおり、ご長女様の遺留分が減ります。

(※)遺留分の割合は、相続人の構成により異なります。

  遺留分算定基礎となる対象財産総額(A) 遺留分総額(B)=(A)×1/2 ご長女様の遺留分((B)×1/2)÷子の数
現状 24,000万円 12,000万円 3,000万円
生命保険追加後 21,000万円 10,500万円 2,625万円

 上記試算は、ご相談者様の資産内容のみで算定していますが、実際に遺留分を算定するときには一定の生前贈与分が含まれます。

 そのため、詳細な遺留分算定の際には、ご長女様への生前贈与のうち遺留分の計算に入れる可能性があるものを検討する必要も出てくるでしょう。

4.生命保険に追加加入する際の注意点

 死亡保険金が遺留分算定の対象とならないのは原則に基づく考えであり、他の相続人との間に著しく不公平が生じるケースと認められると、原則とは異なり、死亡保険金が遺留分算定の基礎に加算される結果となった過去の最高裁判例もあります。

 ご長女様にこれまで渡してきた総額によって、不公平と考えられる可能性もありますので、確実に期待できる効果と断言できるものではありません。

 また、今後の生活設計や不測の事態によっては、まとまった流動資金が必要になることもあります。新たに契約した生命保険を解約すると、返戻金が払い込んだ保険料を下回る場合もありますのでご注意ください。個別事情をふまえて、注意点を確認した上で検討されることをお勧めします。

 相続対策で悩まれた場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。

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 スマホが普及し、常に小型コンピュータを持ち歩きできるようになりました。
 電波が届く場所なら…必要なアプリをタップして操作すれば、
 わからないことや難しいことは、
 いとも簡単に「答え」を見つけられる時代になりました。

 電卓が登場する以前、簡単な足し算なら暗算は出来ても、
 掛け算や、割り勘の計算など、そろばんの経験者でないと、
 計算でさえ難しくなるとお手上げでした。

 皆さんは、「関数電卓」というものをご存知でしょうか。
 数学や科学で使う難しい関数計算機能を豊富に備えた高性能な電卓で、
 海外ではサイエンティフィック(科学)電卓と呼ばれています。

 パソコンが登場してくるまで、
 関数電卓はコンピュータの計算機能を凝縮したようなもので、
 マンパワーでは何時間も係るような計算が、
 ボタンひとつで答えが解り、大変重宝されたものでした。

 日本では、主に大学で利用されていますが、
 世界では中学や高校の授業に使われることも多く、
 アメリカでは試験での利用も許されているそうです。

 海外の教育現場では、複雑な計算は機械に任せ、
 問題解決する能力を高めることに力点をおいた授業が増えているそうです。

 そんな関数電卓は、海外向けが全体の9割を占める商品となっていて、
 カシオ計算機では、欧米に比べ普及率の低い
 東南アジアやアフリカ向けの販売に力を向けていてるそうです。

 同社の創業者 樫尾忠雄氏が事業を始めたのは、
 先の大戦後の不況にあえいでいた46年(昭和21年)のことです。
 小さな町工場であるがうえに、下請け仕事に頼るばかりで、
 日々を一生懸命働き、食いつないでいくのがやっとでした。

 見かねた兄弟が、力を貸したいと言ってきて、
 4人で工場を切り盛りすることになります。
 そして、このまま下請け仕事を続けるだけではいけないと、
 自社商品を開発することに意見がまとまります。

 とは言っても、材料も不足していたし、技術力もなかったため、
 手軽に開発できそうな、家庭様の電熱器や自転車の発電ランプなど、
 手当たり次第に作っていったのでした。

 どれも最初は売れるものの、世の中が落ち着いていくにつれ、
 売れ行きが鈍っていきます。
 大手の真似したような商品を作っていても、生き残れないという思いから、
 奇想天外な商品を作ろうと一致団結したのです。

 しかし道のりは、予想していたとおり険しいものでした。
 新しい計算機の開発に挑戦することにしたものの、
 お金もなく、設備も乏しい中で試行錯誤が続きます。
 開発から3年経った54年、機械式の計算機が主流であった当時、
 リレー式の計算機の完成にこぎつけたのでした。

 こうして、カシオ計算機が誕生し、電卓を先駆けに、
 数多くのヒット商品を生み出すことになります。
 第一に、より多くの人に喜んでもらえること、
 第二に、新しいマーケットを創造すること、
 今も変らない基本理念が、新しい商品を生み出します。

相続に伴う根抵当権に関する手続き

今回は相談事例を通じて、相続に伴う根抵当権に関する手続きについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 個人で事業を行っていた父が亡くなりました。財産を調査したところ、事業において生じた金融機関への債務が残っており、その債務について不動産に根抵当権を設定していることが判明しました。この根抵当権について、何か手続きが必要なのでしょうか。

 今後は私が事業を引き継ぐ予定のため、根抵当権を継続して使用したいと考えています。その場合の手続きに期限はあるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 根抵当権の元本確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との「合意」により定めた相続人が、相続の開始後に負担する債務を担保します(民法398条の8第2項)。また、この「合意」(指定債務者の合意)について、相続の開始後6ヶ月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(同条第4項)。

A-2
詳細解説

 ご相談者様が継続して金融機関と取引をし、本件根抵当権でその債務を担保していく場合、債務者の相続の登記と指定債務者の合意の登記の手続きが必要になり、この登記は相続開始日から6ヶ月以内に申請する必要があります。

 債務者変更の手続きをせずに相続開始日から6ヶ月を超えてしまった場合、根抵当権は元本が確定し、お父様がお亡くなりになった時点の債務のみを担保することとなります。

 ご相談者様と金融機関との取引で今後発生する債務を担保するには、新たに根抵当権を設定する必要があります。新たな根抵当権の設定は根抵当権の変更よりも登録免許税が高くなりますので、ご注意ください。

 具体的な手続きについては、金融機関または司法書士にご相談ください。

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遺産の未分割と相続税の申告

遺産分割でもめていて、誰がどの遺産を取得するかが決まりません。遺産分割が決まるまで相続税は申告しなくてもよいですか?

Q
今月のご相談

 半年前に母が亡くなり、相続人は母の子である、私と弟と妹の3人です。
 母の遺産について相続人間で意見が分かれ、まとまりそうにありません。母が生前お付き合いのあった金融機関の担当者からは、相続税の申告が必要だと思うと言われていますが、このように遺産分割協議が調っていない状況なので、相続税の申告はしなくてもよいですか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 遺産分割協議が調っていない、いわゆる未分割の状態であっても、相続税の申告は必要です。

A-2
詳細解説
1.相続税の申告をしなければならない人

 相続税の申告は、相続などにより取得した財産(一定の生前贈与財産を含む)と、相続時精算課税制度の適用を受けて贈与を受けた財産の合計額が、次の遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要となる手続です。

遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(※)
※ 相続の放棄があってもなかったものとします。
※ 養子がいる場合には、数に制限があります。

 そして相続税の申告により納税が必要となった場合には、納税しなければなりません。

2.相続税の申告・納付期限

 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に行います。また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。期限の延長が可能な例外はありますが、「遺産分割協議が調わない」という理由はこの例外にはあたらず、延長できません。したがって、いくら遺産分割協議が調っていなくても、10ヶ月の期限内に、相続税の申告書の提出及び納税を行わなければなりません。

 この場合、遺産分割協議が調っていないことにより、各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。

 申告期限においてお母様の遺産を一銭も相続していなくても、ご自分の法定相続分(1/3)に相当する財産に対する相続税は納めなければなりません。そして、その相続税を期限までに納められない場合には、国から「延滞税」という利息を請求されてしまう点にも注意しましょう。

 なお、一旦相続税の申告や納税を行った後で、遺産分割協議が調ったことで当初の申告税額と異なることとなった場合には、実際に分割した財産の額に基づき申告や納税の手続を行うことができます。特に当初の申告税額よりも少なくなる場合には還付を受けることができますが、この手続には期限(分割があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内)がありますので、ご注意ください。

3.遺産分割協議が調わないと受けられない特例

 相続税では、配偶者の税額の軽減が受けられる特例や、宅地等の評価減が受けられる特例など、税の軽減の特例や納税の特例がいくつか設けられています。しかし、いずれの特例も遺産分割協議においてその取得者が決まっていない場合には、適用を受けることができません。

 つまり、遺産分割協議の不調は、納期限までの納税資金準備を困難にするだけでなく、特例を受けることができないため、納付税額も多額になります。まさに悪循環です。

 相続税が課税される可能性のある方は、まず「10ヶ月」という期限を意識して手続を進めましょう。

 将来の相続時に遺産分割協議が調わないと予想される場合には、遺言書を作成しておくことにより、このような事態を避けることができます。遺されるご家族のために、生前からできる対策を講じておくことも大切でしょう。

<参考>
国税庁タックスアンサー「No.4205 相続税の申告と納税」「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」など

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