お知らせ

 海洋堂の創業者 宮脇修氏が、今月16日にお亡くなりになられました。
 模型製作という未知の分野に手を伸ばし、
 多くの子供たちに、喜びや夢を与えてくれたことに感謝しなければなりません。

 ほとんどの起業家は、初めて経験することばかりの中、
 失敗や工夫を重ねて、その日一日を乗り切ることに一生懸命です。
 このコラムは、先人が経験したそのような体験を、
 自分自身を含めビジネスを始める方の、
 ノウハウとして蓄積できないかと思い始めたものです。

 先人の体験記の多くは、日本の高度成長期のものであり、
 令和の時代では、ハラスメント、長時間労働といった問題で、
 美化して語ることができないことも多くなっています。
 これからは、新しい発想力とそれを具現化する力が、
 益々必要となってくるくるのではないでしょうか。

 昔、子供達の憩いの場、駄菓子屋や玩具屋では、
 仕事熱心(?)で、子供好きな店主たちが、
 あれこれと知恵をひねり、子供を集めていました。

 フィギュアなど模型製作の海洋堂の宮脇修氏も、
 同じ気質を持ち合わせていたようです。
 創業当時は小さな模型店を営んでいましたが、
 店では子供たちの声が絶えなかったようです。

 戦艦のプラモデルを悠々と浮かべて遊ぶ場所がないと聞けば、
 店にプールを作り、そこで遊べるようにしたり。
 スロットカーがブームになった時には、
 廃工場を借りて、レーシング場を作って楽しませていたそうです。

 このように、店主が品揃えや売り方、客寄せの方法まで、
 お客の動向を観察して、試行錯誤を行っていました。
 上手くいく事もあれば、目論み違いすることも当然あります、
 その結果、店には売れ筋商品と売れ残った「ガラクタ」が混在していました。 

 現在では、繁盛している店の品揃えや販売方法が
 より洗練され、規格化されて、店舗として運営されるようになっています。
 結果、スーパーやショッピングセンター、専門店、どこに出かけても、
 売れ筋商品しか店頭に並ばなくなってしまいました。

 2011年7月高知県四万十町に「海洋堂ホビー館」をオープンさせました。
 高知県中心部から車や電車を使って2時間もかかる、
 辺ぴな場所に登場したのは、模型の博物館です。

 四万十川の中流域にある山村地帯に、突如現れる派手なデザインの建物。
 廃校の体育館を改装した博物館の中には高さ10メートルの帆船や、
 精巧な動物の食玩など、1万点以上が並べられています。

 年々、都市部と郊外、地方の地域格差が広がっています。
 土地の価格で比べると、郊外の一等地が都市部の路地裏並み、
 地方のそれは、都市部の何十分の一になっています。

 都市部に店舗を構えても家賃も高騰し、時代にミスマッチしたもの、
 マニア向けの商品など、相当数の販売が見込めないものは、
 維持することは困難になりました。

 しかし、発想を変えてみれば、都市部では「ガラクタ」扱いであっても、
 家賃が何分の一、何十分の一の地域では、
 充分ビジネスとして成り立つ可能性を持っているのです。

 特異性や希少性、専門性のニーズを探って品揃えを行えば、
 儲けの何割にも相当する家賃を払って必死に売上を稼ぐより、
 少ない売上でも効率よく利益が残ればオッケーなのです。

相続された事業用負債の保証

今回は相談事例を通じて、相続された事業用負債の保証手続きについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 母が亡くなり、母名義の賃貸物件と母が負担していたアパートローンを姉が引き継ぐこととなりました。私は母のアパートローンの契約時には、公証役場に行って連帯保証契約をしましたが、今後、姉の連帯保証をする場合、また公証役場に行く必要があるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 すでにされている保証契約を相続人が負担する債務に移すのみである場合には、既存の保証契約で相続人の負担する債務を担保する旨の書面による承諾は必要となりますが、再度公証役場に行く必要はありません。

A-2
詳細解説

 通常、法人や個人事業主が事業用の融資を受ける際には保証人が必要となりますが、その事業に関与していないにもかかわらず、親戚や友人が安易に保証人になってしまい、その結果多額の債務を負うといった事態が生じています。
 そのような事態を防ぐため、2020年の民法改正により、【公証人による保証意思確認手続】が新設されました。

 この手続では、保証人になろうとする方が公証役場に出向き、公証人による保証意思の確認がされた後、公証人が保証意思宣明公正証書を作成します。
 その際、公証人は、保証人が主債務の具体的な内容を理解しているか、保証契約のリスクを充分に理解した上で保証契約を締結する意思があるか等を確認します。

 アパートローンは「事業のために負担した貸金等債務」にあたるため、新たに保証契約を締結する場合には、公証人による保証意思確認手続がなければ契約は無効となります(民法465条の6)。しかし、主債務(アパートローン)が主債務者の死亡により相続人に包括承継された場合は、保証契約は包括承継された債務に対して有効であり、新たに保証契約を締結するものではないため、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 なお、ご相談の事例はお姉様がアパートローンを引き継がれるということですので、ご相談者様を含む他の相続人が法定相続分に応じて承継した債務について、お姉様が免責的債務引受をすると考えられます。

 免責的債務引受によりお姉様が負担することとなる債務に保証契約を移すことができますが、保証人であるご相談者様の書面による承諾が必要となります(民法472条の4)。この場合、新たな保証契約ではありませんので、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 公証人による保証意思確認手続が必要な場合かどうかの判断に迷われる場合は、弁護士や司法書士にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
名義預金と指摘されないために

名義預金だと指摘されないためには、どのような点に注意したらよいですか?

Q
今月のご相談

 孫がこの春に就職します。
 お祝いとして孫名義の口座を作って、そこにいくらかのお金を振り込もうと思います。
 孫名義であっても、私の財産として相続税がかかってきてしまう話を聞いています。
 どのような点に注意すれば、そのような指摘を受けなくてすむのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様は、いわゆる「名義預金」といわれる財産となるのを懸念されていると思われます。このような名義預金と指摘されないためには、その預金がお孫様のものだということを明確にしておくことが大切です。どのような点に注意すべきかは、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.被相続人名義以外の財産

 誰の名義かにかかわらず、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。
 例えば、被相続人の配偶者や子、孫などの名義の預貯金(いわゆる「名義預金」)や、株式、証券投資信託の受益証券などの財産であっても、被相続人が資金を捻出していたことや管理状況等から、被相続人の財産と認められるものは、被相続人の財産として、相続税の申告の際に含める必要があります。

2.名義預金と指摘されないために注意すべきポイント

 名義預金と指摘されないために注意すべきポイントを、3つご紹介します。

■通帳や印鑑、キャッシュカードなどの保管管理は誰が行っていますか?

 通常は、名義人本人が通帳、印鑑、カードなどを保管し、本人が必要とするときにいつでも解約、引出が可能です。

 一方、名義人本人ではなく亡くなった人が通帳等を保管しており、預金の引出などを亡くなった人が自由にできるような場合は、どうでしょう。これを名義人本人の財産だといえるでしょうか?

 このような場合で名義預金と認定されないためには、なぜ亡くなった人が子や孫名義の口座の通帳等を保管し、自由に使えるようにしていたのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■亡くなった人の届出印と同一の届出印になっていませんか?

 名義人本人が口座開設を行った場合には、通常は自分の印鑑で届け出をします。もし亡くなった人と同一の印鑑で口座開設を行っていれば、印鑑は亡くなった人が管理し、預金の引出などを自由にできる状態であった、というように想定されます。

 したがって、なぜ同一の印鑑で届け出を行ったのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■過去に贈与を受けた事実はありますか?

 贈与は、あげる側の「あげましょう」という意思ともらう側の「もらいましょう」という意思、両者の合意があって初めて成立します。もらう側がその事実を知らなければ、贈与は成立しません。

 名義人は、その預金口座の存在を知っていますか? 贈与税の申告は行われていますか?

 贈与を行う場合には、必ずもらう側(子や孫)へも通知しましょう。

 以上の点に注意していただきながら、お孫様に対する資金贈与をご検討いただければと思います。

 

 名義預金を含めた相続税に関する相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集

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 昨年は2024年問題として、
 物流業界の労働時間制限による起きる問題が話題となっていました。
 年が変わった今年も、2025年問題としていくつか挙げられています。
 代表的なものには、団塊の世代が後期高齢者となる、
 医療や介護の影響ですが、その他にも気になるものがあります。

 そのひとつが、ビデオ・テープが再生機器の生産終了や
 テープ自体の経年劣化に伴い、
 映像の再生やダビングが困難になるとされるものです。

 テープ自体の寿命は20年程とされており。
 昭和生まれの方々が、
 子供の成長や自身の記念に撮りためた記録が観られなくなると、
 デジタル化のため専門業者への持ち込みが増えているそうです。

 風前の灯とされるビデオ・テープ、発売当時の規格をめぐる熾烈な争い。
 製品の開発に一歩先に出たソニーの「ベータ」に、
 巻き返しを図るビクターの「VHS」の猛攻勢はすさまじいものでした。

 当時のビクターは業界8位の中堅メーカーにしか過ぎず。
 技術力の高さはソニーがダントツで、
 かなり水をあけられる形で松下が入り、次にビクターがついてくる。

 「そんな会社が、家庭用ビデオを作れるとは到底思えない」
 と言うのが世間での評価でした。

 また、社内でも新しいビデオ開発には見切りをつけ、
 業務用ビデオの改良・販売をおこなっていくことに方針転換したのでした。
 「他社に先を越されれば、
 ビデオ事業にかかわる社員、協力工場すべてが仕事を失うことになる」

 当時の事業部長がこう決意したことから、
 本格的に家庭用のビデオ開発に取り掛かることになります。
 それは、本社には黙って「秘密開発部隊」としてスタートしたのです。

 一度も黒字を出したことのない部門、
 業務用ビデオを売り歩き、自らの給与を稼ぎながら、開発を進めていきます。
 また、理由をつけ、売れる見込みのない業務用ビデオを生産し続け、
 事業に携わる人々の首を繋ぎます。

 在庫は溜まりにたまり、月商の7、8ヶ月にもなりました。
 本社からの借入金は年商をはるかに超え30億円以上に…
 金利は6、7パーセントだったので、
 通常の会社なら既に倒産していてもおかしくない状況でした。

 ソニーに遅れること、1年5ヵ月後
 ビクターは家庭用ビデオを発売することが出来ました。
 対抗策として、ビクターが取ったのは、技術を他社に公開することでした。
 日立、松下をはじめとするVHS規格に賛同する企業に、
 試作品を貸し出し、生産ラインまで公開することとしたのです。

 その結果、VHSが家庭用ビデオ規格の主導権を握ることとなったことは、
 歴史が証明するとおりです。

相続した市街化区域内の広い土地

相続した市街化区域内の広い土地について、相続税評価額を減額できる方法はありますか?

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなり、私と母が父の財産を相続しました。父名義の自宅(実家)の土地面積は800㎡と広いため、相続税が高くなるのではないかと心配しています。知人から、土地面積が広ければそれだけ相続税評価額は高くなるが、一方で広い土地の場合には、相続税評価額を減額できる方法もあると聞きました。そのような方法はあるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 「地積規模の大きな宅地の評価」という評価方法を適用できれば、相続財産としての評価額を抑えることが可能となります。

A-2
詳細解説
1.適用対象となる宅地の評価額

 「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地の評価額は、たとえば路線価地域の場合であれば、以下の算式で計算されます。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)
2.地積規模の大きな宅地の評価

 この評価は、大きな土地を複数の区画に分け、戸建用地として開発分譲することを想定しているため、土地面積が大きいことで生ずる価値の減少(減価)を評価額に反映させる手法で、上記の算式の規模格差補正率に織り込まれています。

 なお、減価の要因となる主だったものとして、敷地内に設ける道路部分や上下水道等の整備費用等が挙げられます。

 戸建用地を想定した宅地であることから、路線価地域においては、普通商業・併用住宅地域及び普通住宅地域に所在するものが適用対象となっています。

3.地積規模の大きな宅地とは

 地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏に該当する地域)においては500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。なお、次の(1)~(4)のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

(1)市街化調整区域に所在する宅地(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)

(2)都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地

(3)指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地

(4)財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

 今回ご相談の対象地が、三大都市圏の市街化区域に所在し、かつ、上記(1)~(4)のいずれにも該当しないのであれば、「地積規模の大きな宅地の評価」の評価手法を適用して、土地の評価額を下げることが可能となります。

 評価手法の適用にあたっては、規模格差補正の他、間口や奥行等の土地の形状、道路との接道状況、高低差や斜面等の有無、といった土地各々の個別的要因による減価補正も行われることから、専門的な知識に基づく煩雑な計算処理が求められます。
 また、適用する各係数等によって減額幅も変動しますので、ご注意ください。

 「地積規模の大きな宅地の評価」についてご不明な点は、当事務所へお気軽にお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

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受け取った死亡保険金の非課税金額

受け取った死亡保険金の非課税金額はいくらになりますか?

Q
今月のご相談

 先日、夫が亡くなりました。家族は私の他に、子どもが2人いますが、次男は今回相続の放棄をしています。そのため相続人は私、長男の2人です。夫は生前に生命保険に加入しており、保険金は一定額まで相続税がかからないと聞いています。実際に受け取った以下の死亡保険金について、相続税がかからない金額を教えてください。
 なお、すべての生命保険について、契約者・保険料負担者・被保険者ともに夫(被相続人)です。

【生命保険A】
  • 死亡保険金額:2,000万円
  • 死亡保険金受取人:私
【生命保険B】
  • 死亡保険金額:1,000万円
  • 死亡保険金受取人:長男
【生命保険C】
  • 死亡保険金額:1,000万円
  • 死亡保険金受取人:次男
A-1
ワンポイントアドバイス

 相続税がかからない金額は、奥様が1,000万円、ご長男様が500万円となります。計算方法等は、詳細解説をご確認ください。

A-2
詳細解説
1.死亡保険金の非課税制度

 被保険者、保険料負担者が被相続人である場合の死亡保険金は、相続財産とみなして相続税がかかります。

 その一方で、その死亡保険金の受取人が相続人である場合には、相続税がかからない制度(以下、非課税制度)が設けられています。

2.非課税限度額の計算方法

 死亡保険金全額が相続税の非課税となるわけではなく、限度額(以下、非課税限度額)が設けられています。

 非課税限度額は、以下のように計算されます。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

 この場合の法定相続人の数については、仮に相続を放棄した人がいる場合は、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数です。ただし、相続を放棄した人は相続人とはならないため、実際の非課税制度は適用できません。

3.ご相談の場合の非課税限度額

 今回のケースでの非課税限度額は、以下のとおりです。

非課税限度額 = 500万円 × 3人 = 1,500万円

 法定相続人の数は、奥様、ご長男様、ご次男様の3人です。ご次男様は相続を放棄されているため相続人ではありませんが、上記2.のとおり、この放棄はなかったものとして計算します。

 また、非課税限度額1,500万円に対して、実際の保険金の総額は4,000万円です。ただし、ご次男様は相続を放棄されているため、非課税制度の対象とはなりません。そのため、奥様とご長男様が取得した保険金の合計額3,000万円が対象となります。

 お2人が取得した保険金の合計額が非課税限度額を超えているため、以下の算式で計算した金額がお2人それぞれの非課税金額となります。

非課税限度額 × その相続人が取得した保険金の合計額 / 各相続人が取得した保険金の合計額
4.各相続人の非課税金額

 上記計算式に基づく各相続人の非課税金額は、以下のとおりです。

【奥様の非課税金額】

1,500万円 × 2,000万円 /(2,000万円+1,000万円)= 1,000万円

【ご長男様の非課税金額】

1,500万円 × 1,000万円 /(2,000万円+1,000万円)= 500万円

【ご次男様の非課税金額】

0円
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 世の中の景気はおおむね順調で、就職は売り手市場、
 インバウンドの訪日外国人のおかげで不動産はバブル状態。
 加えて、人手不足なども影響して多方面で値上げラッシュです、
 少し前に「不況」だったこと、誰もが忘れかけてしまいそうになっていますね。

 好況に沸いている時は、誰もがその儲かった利益をもっと膨らませようと、
 不動産や株式などの利殖に走ります。
 逆に、景気が悪くなると本業に回帰して、儲かっている分野にお金を集中させて
 堅実に利益を生み出す事を考えます。
 ビジネスを長く続けていくコツは、この切り替えを上手することです。
 誘惑が付き物のビジネスの世界、誰もが失敗を経験しています。

 今や押すに押されぬ、大手食品スーパーのひとつ、
 ライフの創業者 清水信次氏も苦い経験をしています。
 戦後の闇屋から商売を始め、バナナやパイナップルの貿易で成功した
 資金を基にスーパーの道に進むのですが、
 スーパー開業時の資金不足や、オイルショック当時の融資差し止めなど
 いくつもの困難を乗り越えてきました。

 その中で、経営が順調であるが故の失敗があります。
 日本全体が活況に沸いていた「あの」80年代。
 会社が上場したのを契機に、自らが信頼を置く人物に
 社長の席を譲り経営を任せたのでした。 
 大証から東証、一部から二部へと右肩上がりの経営に
 いつの頃からか歯車が狂ってきました。

 当時、話に乗らないものは「バカ」と揶揄されるくらい
 当たり前の事だった「財テク」に、どっぷりと浸かってしまっていたのです。
 メインバンクから何十億という借金をして、同業者の株券を買い占め、
 また、中国進出と称して、物流センターへの事業に投資していたのです。

 その事を知り、本業からどんどんかけ離れていく社長へ問い詰めると、
 返ってきた答えはこうでした。
 「コンニャクや豆腐、大根を売って、一円二円の利益を争っている時代ではない」
 「お客さんに細かい注文をつけられ、小言を言われているようでは、
 今の時代はやっていけない、今は頭で金儲けする時代だ」

 その投資の実績からしても、社長の言い分の方が正しく映りました。
 やむを得ず、特別動議で社長を解任して、自らが社長席に戻ることにしたのです。
 この決断をしたのは、まだバブル景気の真っ最中であったので、
 本業に軸足を向ける余裕があったことが幸いでした。
 投資が続いていれば、今は無き大手スーパーの二の舞となっていた事でしょう。

 この10年の、景気の浮き沈みが現しているように、
 景気の波というのは、ある日突然「サッと」惹いてしまうのです。
 「利殖」の儲けというのは、その時限りのものでしかありません、
 どんなに儲かっていても、ずっと続く保証など無いのです。
 長期安定して利益を生み出し生き残ることが、
 本来のビジネスの姿であることを肝に命じておきましょう。

不動産登記名義人となる外国居住者の国内連絡先の登記について

今回は相談事例を通じて、海外に住む人が日本国内の不動産を相続した場合の国内連絡先の登記について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 私の父が亡くなりました。父の相続人は母と兄と私です。
 長男である兄が不動産を相続する予定ですが、兄は現在、アメリカに住んでいます。どの住所で登記がされるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 お兄様が不動産の所有者となる場合、外国に居住をされているため、外国の住所で登記がされます。このとき、住民票の代わりとして、在留証明書を添付します。

A-2
詳細解説

 不動産の所有者となる方が国内に住所がない場合には、国内における連絡先となる者の氏名・住所等の国内連絡先事項を申請情報として提供する必要があります(国内連絡先となる者がないときは、その旨を申請情報とすることもできます)。

 この制度は、令和6年4月1日以降にする登記について、適用されています。

 また添付情報として、国内連絡先事項を証する情報、国内連絡先となる者の承諾情報及び国内連絡先となる者の印鑑証明書(又は電子署名及び電子証明書)を提供する必要があります。

 なお、国内連絡先事項は登記されますが、その内容は以下のとおりです。

(1)ア 国内連絡先となる者(一人に限る。)の氏名又は名称並びに国内の住所又は国内の営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地及び名称

イ 国内連絡先となる者が会社法人等番号を有する法人であるときは、当該法人の会社法人等番号

(2)国内連絡先となる者がないときは、その旨

 また国内連絡先は、親族でなければならないという規定はありません。

参考:
法務省「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

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弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2024年12月28日(土曜日)~2025年1月5日(日曜日)

土地の分割と評価単位

土地を分割して相続しようと思うのですが、分割のしかたによって、評価額は変わるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 父の名義で下の図のような土地(合計900㎡)を所有しております。この度父が亡くなり、この土地をどのように分割しようか相続人3名(A、B、C)で遺産分割協議中です。分割のしかたによって、相続税の計算上、相続財産としての評価額は変わるのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様がご懸念のとおり、相続税の計算上、誰がどのように相続するかによって、土地の評価額が変わる場合があります。

A-2
詳細解説
1.土地の評価単位

 土地の評価は、①地目ごと、②利用単位ごと、③取得者ごと、に1つの土地として評価することになっています。したがって、必ずしも地番ごと(1筆ごと)に評価することにはなりません。

 ご相談の土地について当てはめて考えてみますと、次のとおりです。

①地目ごと
3筆ともに地目は宅地であるため、全体を1つの土地として評価
②利用単位ごと
3筆ともに空き地(未利用地)であるため、全体を1つの土地として評価
③取得者ごと
1人の相続人が3筆すべて相続する場合や3筆すべてを共有で相続する場合には、全体を1つの土地として評価

 仮に21番地は相続人A、22番地は相続人B、23番地は相続人Cがそれぞれ相続する、という場合には、取得者ごとに相続することになるため、3筆を別々に評価します。

2.評価額の計算

 ご相談のケースで、仮に①全体を1つの土地として評価した場合と、②3筆別々に評価した場合とで、評価額がいくらになるか計算してみましょう。

①全体で評価

200千円×0.91(※)+100千円×0.91(※)×0.02(※)×15m÷30m=182,910円

182,910円×900m=164,619,000円

②別々で評価

21番地:

200千円×1.00(※)=200,000円

200,000円×300㎡=60,000,000円

22番地:

200千円×1.00(※)=200,000円

200,000円×300㎡=60,000,000円

23番地:

100千円×1.00(※)=100,000円

100,000円×300㎡=30,000,000円

合計:150,000,000円

(※)普通住宅地区…奥行価格補正率0.91(40m以上44m未満)・1.00(20m以上24m未満)、二方路線影響加算率0.02

 上記のとおり、評価額の差額が14,619,000円も生じる結果となりました。適用される税率が20%の場合では、納付する相続税額に300万円弱の差が生じます。

3.不合理分割の場合

 ただし、利用の単位が同じ土地について取得者を分けて相続する場合には、その分割の合理性に配慮しなければなりません。例えば、下図のように高い路線価に面した部分のみをAが、その他をBが相続したような場合には、「不合理分割」と判定され、取得者ごとに別々に評価することは認められません。相続した部分が、それぞれ独立して有効利用できるか否かが判断のポイントとなります。

 評価額の高い低いの判断のみでは分割協議はまとまりませんが、分割協議の内容によって納付する相続税額が大きく異なる結果となります。十分に検討する必要があるでしょう。

 相続税の計算における土地の評価については、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
国税庁HP「二方路線影響加算の方法」、財基通7、7-2など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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