お知らせ

限定承認と生命保険

相続の限定承認をした場合でも、死亡保険金は受け取れますか?

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなりました。生前の父は多額の借金を抱えていたため、相続を放棄しようと考えていたところ、知人から限定承認を勧められました。限定承認とは、どのような制度なのでしょうか?
 また、父は私が受取人の生命保険に加入していたため、受け取りの手続きをしたいと思っていますが、限定承認をした場合でも死亡保険金を受け取ることはできますか?

【父の資産と負債】
  • 資産:1,000万円
  • 負債:4,000万円
【生命保険の契約内容】
  • 契約者(保険料負担者):父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:私
A-1
ワンポイントアドバイス

 限定承認をした場合でも、死亡保険金を受け取ることは可能です。限定承認の詳しい内容は、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.相続財産の引き継ぎ

 相続財産の引き継ぎは、大きく分けて「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの方法があります。

  1. ①単純承認
    プラスの財産(資産)もマイナスの財産(負債)もすべて引き継ぐ方法
  2. ②限定承認
    引き継ぐ資産を限度として負債を引き継ぐ方法
  3. ③相続放棄
    プラスの財産(資産)・マイナスの財産(負債)のいずれも全く引き継がない方法

 今回のご相談の資産と負債の額でそれぞれの方法を示すと、以下の図のとおりとなります。

2.限定承認をした場合、死亡保険金は受け取れるのか

 民法では、受け取った死亡保険金は相続によって取得したものではなく、死亡保険金受取人の固有の財産とされています。
 そのため、ご相談のケースにおいて、ご相談者様が限定承認をしたとしても、保険金受取人として死亡保険金を受け取ることができます。これは相続放棄をしたとしても、同様です。

3.死亡保険金の取扱い

 受け取った死亡保険金は、相続税法上ではみなし相続財産となります。相続人は受け取った死亡保険金について、一定の非課税制度を適用することができます。
 相続を放棄した場合には相続人とはなりませんので、当該非課税制度を適用できませんが、限定承認であれば相続人としての地位はありますので、適用することができます。

 なお、限定承認や相続放棄については、申立期限が決まっているなど一定の約束事があります。
 保険金だけでなく課税関係の問題もありますので、相続財産の引き継ぎ方法でお悩みの場合には、当事務所へお気軽にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 サントリーとのコラボレーションによって生まれた「伊右衛門」
 そのネーミングのもととなった、福寿園は200年を超える、
 老舗の製茶メーカーです。
 そんな永い歴史を持つ企業が積み上げてきた
 「続ける経営」の智恵とはどのようなものでしょう。
 
 飲料の多様化により茶葉自体の消費は減り続けており、
 同社では、お茶の新しい楽しみ方を提案しています。
 京都市などに体験施設を運営していて、来年3月には本社工場近くに、
 お茶文化を体験できるテーマパークのオープンを目指しています。
 
 お土産や観光地での、「お茶」のイメージとは裏腹に、
 ずいぶん永い間、京都の製茶メーカーは他の産地や
 外国からの輸入に押されがちでした。
 
 創業者 福井伊右衛門氏の名前からとった「伊右衛門」のヒットは、
 ペットボトルのお茶という今までには無い形で
 京都の「お茶」のイメージを復活できたのではないでしょうか。
 このことは、京都に1000社以上残る老舗企業にとっても、
 元気づけられるものでもあります。
 
 右肩上がりで成長を続ける、ベンチャー企業の経営者でも、
 「老舗」という言葉には弱いものがあります。
 たとえ売上高が勝っていても、歴史と言う壁には、
 どうしても太刀打ちできないからです。
 
 老舗には、看板商品と言うものが存在します。
 「…屋」といえば○○、千枚漬けといえば○○…といった風に、
 何代にもわたって販売し続けることが出来る商品をもっており、
 言い換えれば、ロングセラーがあるからこそ
 老舗として成り得るのではないでしょうか。
 
 ある商品がヒットしたからといって、
 すべてがロングセラーとなるわけではありません。
 ロングセラーとなるには、類似商品が続々と登場するなか、
 他の商品を寄せ付けない品質を持っていなければなりません。
 製法、材料、技術に関して、自社でないと作れない商品を持つこと、
 それが「老舗」への第一歩となるのです。
 
 「打ち上げ花火のように、パッとあがって、サッと消える。」
 創業後そんなに経たない会社では、こんなリスクを負っても、
 将来のため挑戦しないとならないことがあります。
 逆に50年、100年…と社歴を重ねてきた会社には、
 同じようにリスクをかけた行動は、慎むべきことです。
 
 京都には「身の程」をわきまえた、商売を続けている
 老舗がたくさんあります。
 観光に来られた事がある方なら、よくご存知でしょうが、
 京都には和菓子の老舗が市内のいたるところに、点在しています。
 気候の良い季節の休日となれば、店の前に長蛇の行列が出来る
 お店も少なくありません。
 
 グルメ雑誌にも頻繁に紹介され、人ごとながら、
 オーナーの懐具合が気になるほどの繁盛振りでも、
 そのお店は、決して大きな工場を構えたり、繁華街に出店したりはしません。
 その日一日の、販売量を決めそれ以上に作ることはしないのです。

 「たくさん儲ける事より、永く儲けること」
 「自分一代でなく、代々続けること」
 「自分ひとりでなく、社員、仕入先が潤うこと」
 そこには「投資家」という存在が入ってくる余地がありません。
 「老舗」を見習い、「続ける経営」を見直してみてはいかがでしょう。

相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立て

今回は相談事例を通じて、相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立てについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 同居していた兄が亡くなりました。兄は独身で子供はおらず、親はすでに亡くなっています。兄弟は私一人ですが、私は相続放棄をしています。自宅に兄の財産があるのですが、処分してもよいでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続放棄をしても、その放棄の時に被相続人の財産を現に占有している時は、他の相続人又は「相続財産清算人」に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない(民法第940条)とされていますので、ご相談者様が勝手に処分することはできません。

 また今回のケースでは、ご相談者様が被相続人(お兄様)の財産を処分した場合、被相続人の相続の単純承認事由に該当すると考えられますので、ご注意ください。

A-2
詳細解説

 相続人がいない場合、利害関係人は家庭裁判所に「相続財産清算人」選任の請求をすることができます(民法第952条1項)。

 この利害関係人には、被相続人の債権者だけでなく、被相続人の財産を管理している者が含まれますので、ご相談者様が「相続財産清算人」選任の申立てをすることができます。

 「相続財産清算人」とは、相続人の代わりに被相続人の財産(債権・債務)を清算する人のことで、被相続人の相続財産を適切に管理し、残余財産があった場合、国庫へ帰属させる役割があります。なお、相続財産清算人は2023年4月1日の民法改正前は、相続財産管理人として規定されていました。

 ご相談者様にて「相続財産清算人」選任の申立てを行い、選任された「相続財産清算人」にご相談者様の保存する被相続人の財産を引き渡すことができれば、財産管理義務はなくなります。

 「相続財産清算人」の申立てには、裁判所の判断が必要であったり、必要な書類が煩雑であったりするため、お近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。

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契約者貸付金とみなし相続財産

父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。これはどのように取り扱えばよいのでしょうか。

Q
今月のご相談

 父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。明細を確認したところ、死亡保険金1,000万円に対して契約者貸付金250万円があり、控除した残額750万円が振り込まれています。これは相続税の計算上、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
 なお、保険契約者、保険料負担者、被保険者ともに父であり、死亡保険金受取人は私(父の子)です。また、相続人は母と私の2人で、相続の放棄はしていません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談のケースにおいて、相続税の計算上、みなし相続財産となるのは750万円です。死亡保険金に係る非課税限度額は1,000万円となるため、他にみなし相続財産がなければ、750万円全額相続税がかかりません。なお、契約者貸付金は被相続人の債務とはなりません。

A-2
詳細解説
1.契約者貸付金等がある場合の保険金

 保険金の額から契約者貸付金等の額が控除されて支払われる場合には、相続税の計算上、その保険契約者が誰かによって、それぞれ次のように取り扱われます。

  • 保険契約者=被相続人
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する保険金及び当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する債務はいずれもなかったものとする
  • 保険契約者=被相続人以外
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する部分については、保険契約者が当該相当する部分の保険金を取得したものとする
2.ご相談の場合

 ご相談の場合、保険契約者=被相続人であるため、死亡保険金1,000万円から契約者貸付金250万円を控除した残額750万円がみなし相続財産となります。

 また、相談者様は、相続人であり相続の放棄もしていないことから、死亡保険金に係る非課税制度が適用できます。

 具体的には、次の金額が非課税限度額となるため、他に死亡保険金に係るみなし相続財産がなければ、750万円全額について適用することができ、結果として相続税の対象とはなりません。

500万円 × 2 = 1,000万円

 このように、死亡保険金は非課税限度額いっぱい掛けていたとしても、契約者貸付金があることから差し引かれた金額がみなし相続財産となり、非課税限度額を有効活用しきれていません。

 仮に契約者貸付金でない金融機関からの借入であった場合には、死亡保険金から控除されることもなく非課税限度額を有効活用した上で、借入金は被相続人の債務として、他の相続財産から控除することができました。

 

 ただし、借入金の利率やその他を総合的に検討する必要があるため、相続税の計算の有利不利だけの検討は危険です。相続や相続税の計算については、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
相続税法基本通達3-9など

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 温暖化で紅葉を楽しむのは少し先となりそうですが、
 既に国内外の観光客で溢れかえっている、こちら京都です。
 路線バスにスーツケースなどの大型手荷物持ち込みを減らそうと、
 専用コインロッカーを用意したり、
 中心部へマイカーの侵入を規制するため、
 駐車場を入庫禁止や予約制にして、混雑緩和に躍起です。

 嵐山は、春は桜、秋は紅葉と、風景が美しい場所であると共に、
 近くに、東映太秦映画村や松竹京都撮影所が存在し、
 時代劇撮影のメッカでもあります。
 皆様は、嵐山にあるお寺の山門や、竹林の風景を無意識に目にしているのです。

 そのような時代劇ですが、灯火は消えつつあります。
 京都で撮影される連続時代劇が少なくなり、
 地元では、長い歴史の中で培われたノウハウを絶やすまいと、
 復活の声が待ち望まれています。

 時代劇は、歌舞伎の影響を受けて生まれ、特に時代劇の定番である、
 「チャンバラ」は、歌舞伎の演目から取り入れられたといわれています。
 歌舞伎は、古くからの大衆芸能のひとつであるでありますが、
 その歴史は脈々と続き、日本の伝統芸能となっています。

 明治になり外国文化が入ってくるまで、
 歌舞伎は日本の大衆芸能として絶大な人気を誇っていました。
 「アイドル」や「スター」も生まれたそうですから、
 映画スターに熱をあげる、現代のファンとなんら変わりがないといえます。

 大正に入ってから、歌舞伎を支え続けているのが、
 映画、演劇興行を行う、松竹です。
 現在は建て替え中で閉館していますが、歌舞伎座を有し主な上演場所とするほか、
 各地での興行も一手に取り仕切っています。

 創業者 大谷竹次郎氏は、興行相撲で、お茶やタバコの販売、
 貸し座布団商売を行う父の下に生まれます。
 父は、商売の場所を劇場に移し、その後売店の経営を始めます。
 19歳のときに、父から権利を引継いだのを契機に、
 次々と京都の劇場を手に入れます。

 大阪に進出して、上方興行界を支配したかと思うと、
 さらに、東京に進出して大手劇場を買収し、
 歌舞伎座も大正2年に手に入れることとなります。
 映画の時代に移り、松竹も軸足をそちらに移しますが、
 歌舞伎の興行については、独占的な窓口となっています。

 大衆芸能と称されるものの多くが、一時のブームとして消えていく中で、
 このように長い間、歌舞伎が受け継がれていけたのは、
 大きなスポンサーの後ろ盾があったことが大きいといえます。

 加えて、「○○屋」というスポンサーのブランドとなる、
 ブランドをつけてもらうことなり、
 役者ごとの個性を引き立たせることができたのです。
 時代劇が、その時々の観客に受けが良いようアレンジされすぎて、
 形骸化してしまったのとは対照的です。

事前に売却した方がよい不動産

築年数が古く収益力が弱い不動産を所有していますが、事前に売却した方がよいでしょうか。

Q
今月のご相談

 親の代から所有してきた古い長屋があります。現金より不動産で資産を持っている方が相続税を抑えられると言われているため、そのまま所有していますが、築年数が古く収益力が弱いため、このまま所有し続け、子どもたちに相続させるべきか悩んでいます。

A-1
ワンポイントアドバイス

 まずは、長屋の「相続税評価額」と「市場価格」について確認されるとよいでしょう。相続税評価額が市場価格を上回る場合は、長屋を相続させると、お子様の相続税の負担が重くなりますので、事前に売却することをお勧めします。

A-2
詳細解説
1.相続税評価額

 市街地にある土地建物の相続税評価額を計算する際、土地は(相続税)路線価、建物は固定資産税評価額を利用します。

 土地の相続税評価額を計算する際に利用する路線価は、市場価格の80%程度とされており、加えて貸家建付地として評価減されるため、評価額は低く抑えられます。

 また貸家の建物は、固定資産税評価額から借家権割合に応じた部分が評価減されます。そのため、現金より不動産で資産を持っている方が相続税は抑えられると言われており、不動産が相続対策として利用される所以です。

2.市場価格

 対して、貸家の市場価格は、貸家から発生する賃料と投資家の期待利回りから形成されます。例えば、貸家の年収が500万円、投資家の期待利回りを10%とすると、市場価格は5,000万円になります。

【計算例】 年収500万円÷10%=5,000万円

 そのため、①賃料が減ることや、②築年数の経過や修繕不安により投資家の判断が厳しくなり、期待利回りが高くなれば市場価格は減少します。

  1. ① 賃料が450万円に減った場合
    年収450万円÷10%=4,500万円
  2. ② 築年数の経過や修繕不安により投資家の判断が厳しく、期待利回りが高くなった場合
    年収500万円÷15%≒3,333万円

 今回ご相談を受けた長屋は、築年数が古く収益力が弱いとのことですので、市場価格が低いことが予想され、相続税評価額の方が高い可能性がありそうです。相続税評価額が市場価格を上回る場合、相続対策になっていません。

相続税評価額 < 市場価格 ⇒ この場合、相続対策になっている。
相続税評価額 > 市場価格 ⇒ この場合、相続対策になっていない。

 もし、相続税評価額が市場価格を上回っている場合は、長屋を相続されると、お子様の相続税の負担は重くなりますので、事前に売却することをお勧めします。

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保険料負担者が異なる保険金と弔慰金の受け取りと税金

亡くなった夫が会社で加入していた生命保険に係る死亡保険金と弔慰金の受け取りについて、税務上の取扱いを教えてください。

Q
今月のご相談

 先日、夫が亡くなったため、夫の勤務先で加入していた生命保険について手続きの案内をもらいました。会社が保険料を負担する福利厚生の契約に夫本人が任意で上乗せをして、給与天引きで保険料を支払っていたことがわかりました。会社が保険料を負担していた部分からおりる死亡保険金は、会社の規程により退職金払い、会社からは別途、弔慰金が支払われると説明を受けました。死亡保険金や弔慰金の税金の取扱いについて教えてください。

【契約内容】
  • 保険種類:団体定期保険
  • 契約者:会社
  • 被保険者:夫
  • 保険料負担者:会社、夫
  • 死亡保険金受取人:私
A-1
ワンポイントアドバイス

 死亡保険金は、保険料を誰が負担していたかによって税務上の取扱いが異なります。また弔慰金についても、条件によって税務上の取扱いが異なります。具体的な内容は詳細解説をご確認ください。

A-2
詳細解説

 具体的な税務上の取扱いは、それぞれ次のとおりです。

1.会社が保険料を負担していた部分の死亡保険金

 従業員が加入する生命保険の保険料を雇用主が負担していた契約において、支払われる死亡保険金は退職手当金等として取り扱う旨が会社で定められている場合は、相続人が受け取る死亡保険金は退職手当金として取り扱われます。

 退職手当金は、みなし相続財産として相続税の対象になります。また、相続人が受け取る退職手当金は「500万円×法定相続人の数」を限度に、非課税の適用を受けることができます。

 なお、同じように雇用主が保険料を負担していた生命保険で、今回のケースとは異なり会社が退職金として支給する取り決めがない場合は、保険料は従業員が負担したものとみなし、下記2.と同様に生命保険として取り扱われます。

2.旦那様が保険料を負担していた上乗せ部分の死亡保険金

 旦那様が保険料を負担していた部分から支払われる死亡保険金は、個人が契約する生命保険と同様に保険料負担者、被保険者、死亡保険金受取人の関係をもとに税務上の取扱いを判断します。

 今回のケースでは、保険料負担者と被保険者が共に旦那様であるため、支払われる死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象となります。また、相続人が受け取る死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」を限度額として、非課税の適用を受けることができます。上記1.の退職金の非課税枠とは別に適用します。

3.会社から支払われる弔慰金

 下記の金額までは相続税の対象となりませんが、超える部分は退職手当金等として相続税の対象となります。

(1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
被相続人の死亡当時の普通給与(※)の3年分に相当する額

(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
被相続人の死亡当時の普通給与(※)の半年分に相当する額

(※)俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額

 上記1.~3.に加え、旦那様が所有していた財産総額によって相続税が発生するか否か、および税額も変わります。相続税に関する不明な点は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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 あまりに便利になりすぎ、止まる事はないと思っていた、
 電気、水道やガスなどのインフラ。
 ここ数年、地震や台風、大雪などで災害に巻き込まれると、
 案外簡単に「ストップ」するものだと痛感させられます。

 特に冬場では、生死にかかわることもありますから、
 非常時でも暖房器具は使えるように備えておく必要があります。
 最近の災害発生時では、カセットコンロが重宝され、
 非常時備品として推奨している自治体もあります。

 近年は地震の活動期に入っているといわれ、
 地震だけでなく大きな災害が、毎年のように発生していいます。
 「油断大敵」、「備えあれば憂い無し」の言葉を肝に銘じて、
 身近なことから対策を守っていきたいものです。

 イワタニの創業者 岩谷直治氏がガスと巡り合ったのは、
 彼がまだ運送会社で丁稚奉公していた時でした。
 その後に戦争景気や敗戦後の都市整備につれ、
 産業ガスやプロパンガスの需要が大きく膨らむことになるのですが、
 岩谷氏は2つの経験をすることになります。
 
 運送会社の主人は、鋼板の切断や溶接に使われる酸素ガスが、
 造船などの重工業の発展につれ需要が増えること見込み、
 商売としては敬遠されがちだった
 酸素ガスの運搬を一手に引き受けたのでした。
 
 岩谷氏は悟りました…
 「他人のやらないことをするのが商売のコツである」
 
 また、プロパンガスは石油採掘現場や精製工場で発生する厄介者扱いで、
 長年大気中に放出されていたのです。
 「プロパンガスをイタリアでは缶詰にして売っている」と、
 ヨーロッパでのガス事情を耳にして。
 
 岩谷氏は閃きました…
 「自分が求めていた、大衆に奉仕できる事業」
 
 世間では、プロパンガスの事を「ロシアのパン」と言われて、
 食べるパンと勘違いされていた程だったのです。
 そんな中、岩谷氏が目を付けたのが都市部から離れた温泉地の旅館でした。
 
 「毎日何十人、何百人の宿泊客のために一斉に食事を用意するには、
 プロパンガスが役に立つはず」
 最初に、候補に挙がったのは、本社のある大阪に近い有馬温泉でした。
 見事に気難しい旅館の板長の審判をクリアーすることができ、
 宮津、城崎、白浜、そして全国の旅館へ広めていったのです。
 
 岩谷氏の最終目標はプロパンガスを
 一般家庭の主婦に認めてもらうことでした。
 その理由は、薪による家事の重労働からの開放と、
 煙から健康を守ることだったのです。

 普及の足がかりに選んだのは岩谷氏の故郷である島根県でした。
 しかし、島根県は保守的な土地柄であり、
 おまけにプロパンガスのライバルである木炭の有数な産地であったのですが、
 岩谷氏は故郷の地縁をうまく生かし、
 ライバルであった木炭商の転業を成功させたのです。
 
 こうして、イワタニのプロパンガスは一気に、
 全国の家庭に広がっていくことになります。
 その後のヒット商品、カセットコンロは都市ガスの引かれた家庭でも
 利用され、アウトドアには欠かせないアイテムとなっています。

口約束で貸した土地に建てた小屋の撤去

今回は相談事例を通じて、口約束で貸した駐車場に建てた小屋の撤去について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 先日亡くなった母から相続した不動産(空き地)についての相談です。
 この空き地は母が生前に駐車場として第三者に無償で貸し出していたものなのですが、最近になって見に行ったところ、プレハブ小屋が建っていました。そこで、私から借主に抗議したのですが、借主曰く、元々口約束で母から「この空き地は自由に使ってよい」といわれていたとのことです。
 もっとも、私自身は母からそのようなことは聞いていませんし、母がいなくなったことをいいことに好き放題しているだけではないかと思っています。借主にプレハブ小屋を撤去させる方法はないでしょうか。

 なお、母は空き地を貸し出すにあたっては、特に契約書は作っていなかったようですし、また、いつまで貸すといった話も聞いていません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 お母様と借主との間で契約書は作成されていないとのことですが、契約は口頭の合意でも成立することから、本件では上記空き地(以下、「本件不動産」といいます。)を対象に駐車場としての利用を目的とした使用貸借契約(民法第593条)が成立していると考えられます。

 そして、使用貸借契約の目的物につき、契約により定まった方法に従い使用しなければならないところ(同法第594条3項)、仮に相談者様の述べるとおり、本件不動産を駐車場として借主に貸し出していた場合、借主が本件不動産上にプレハブ小屋を建てることは、用法順守義務違反にあたります。

A-2
詳細解説

 この場合、相続により貸主の地位を相続した相談者様において、用法順守義務違反を理由に、本契約を解除の上、プレハブ小屋の収去及び本件不動産の明渡しを求めることが考えられます。

 他方で、借主の述べるとおり、使用期間の定めがなく、借主において相談者様のお母様から本件不動産を「自由に使ってよい」といわれていた場合にも、本契約は目的を定めない使用貸借契約となるため、貸主において自由に解約することができます(同法第598条2項)。

 そのため、相談者様はいつでも本契約を解除の上、プレハブ小屋の収去及び本件土地明渡しを求めることが可能だと考えられます。

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まだ役員ではない後継予定者と事業承継税制の適用

2025年5月の役員改選で役員に就任する予定ですが、事業承継税制の特例措置は適用できますか?

Q
今月のご相談

 相続対策を兼ねて、息子の社長就任にあわせて、私が所有している会社(非上場)の株式を贈与しようと思います。
 「事業承継税制」を利用すればこの贈与に係る贈与税が免除されるようですが、まだ息子は会社の役員とはなっておらず、来期の役員改選(2025年5月)でまずは専務に就任させる予定です。その後、事前の計画の提出を行い、特例措置の適用を受けたいと考えていますが、問題ないでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 「事業承継税制」の受贈者要件として、贈与日まで3年以上会社の役員である必要があります。特例措置に係る贈与の適用期限は2027年12月31日となっており、2025年5月の役員改選での役員就任では、この要件を満たすことはできません。遅くとも2024年中の役員就任が必要です。

A-2
詳細解説
1.事業承継税制とは

 事業承継税制とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(いわゆる「円滑化法」)」に基づく認定を受け、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度をいいます。

 事業承継税制は、大きく、非上場会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」に分かれます。

 ご相談のケースは、非上場会社の株式ですから、法人版事業承継税制を指します。

 法人版事業承継税制には以下2つの措置があり、主な相違点は下表のとおりです。

●特例措置と一般措置の主な相違点
  特例措置 一般措置
事前の計画策定等 特例承継計画の提出
[2018年(平成30年)4月1日から2026年(令和8年)3月31日まで]
不要
適用期限 次の期間の贈与・相続等
[2018年(平成30年)1月1日から2027年(令和9年)12月31日まで]
なし
対象株数 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 贈与:100%
相続:80%
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 あり なし
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から18歳以上の者への贈与 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
出典:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和6年6月)」
2.贈与税の納税猶予及び免除に係る受贈者の要件

 法人版事業承継税制について、贈与税の納税猶予及び免除を適用するには、様々な要件を満たす必要があり、後継者である受贈者の要件もそのうちの1つです。

 たとえば後継者である受贈者の主な要件として、以下が挙げられます。

  • 贈与の時において、会社の代表権を有していること
  • 贈与の日において、18歳以上であること
  • 贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
  • 贈与の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • 贈与の時において、後継者の有する議決権数が、次のイ又はロに該当すること(特例措置の場合)
    イ 後継者が1人の場合
    後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
    ロ 後継者が2人又は3人の場合
    総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
3.ご相談のケース

 上記2.のとおり、受贈者の要件に「贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること」があります。

 ご相談のケースでは、ご子息はまだ役員とはなっておらず、来期の役員改選(2025年5月)で専務に就任予定とのこと。上記1.のとおり、事業承継税制の特例措置には適用期限が設けられており、2025年の役員改選時での役員就任は、「贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること」の要件を満たすことはできず、特例措置の適用を受けることはできません。

 そのため、特例措置の適用を受けたい場合には、遅くとも年内(2024年中)に役員に就任する必要があります。

 なお、一般措置であれば現状適用期限が設けられていないため、2025年の役員改選時での役員就任であっても、適用できる可能性は考えられます。一般措置の適用も検討されてはいかがでしょうか。

 事業承継税制に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「事業承継税制特集

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