お知らせ

 今回は相談事例を通じて、特別の寄与についてご紹介します。

 相続法の改正で、相続人ではない人へも何らかの財産の分配がなされる可能性があると聞きました。どのような制度でしょうか?

 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として設けられた、特別の寄与という制度です。以下、詳細解説をご覧ください。

 改正法により新設された特別の寄与は、主として、被相続人の療養看護や介護に努めた、子(相続人)の配偶者などを救済するための規定で、以下のように定められました。

改正法第1050条(以下は、条文の正確な引用ではありません)

1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続放棄者、相続欠格者、被排除者を除く)(以下「特別寄与者」と表示)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下「特別寄与料」と表示)の支払を請求することができる。

2 前項の特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わない時・・・は、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過した時、又は相続開始の時から1年を経過した時は、この限りでない。
 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から、遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に、法定相続分を乗じた額を負担する。

 なお、「相続人」の寄与分に関する現行法第904条の2に改正はありません。

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 住民票を実家に移しただけで、実家を相続したときに小規模宅地等の特例を適用できますか?

 10年前に父が亡くなりました。母は父の死後、自宅で一人暮らしをしています。
 一方、一人娘である私は20年前に結婚をして、10年ほど前から主人と共有名義の自宅に住んでいます。
 このままの状況で仮に母の相続が発生して私が実家を相続した場合、私は持ち家があるため小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。
 そこで、私の住民票を実家に移して“同居親族”となれば、小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのでしょうか?
 なお、住民票を実家に移しても、引き続き自宅に住み続けるつもりです。

 “同居親族”に該当するには、単に住民票を移すだけではなく、実際にお母様と同居しているという実態証明が必要です。今回のケースでは、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。

1.小規模宅地等の特例

 小規模宅地等の特例とは、被相続人の居住していた宅地等を相続したときに、一定の要件を満たした場合、宅地等の相続税評価額について、一定額を減額することができるという制度です。
 この小規模宅地等の特例は、被相続人が相続開始直前にどのような用途に利用していた宅地等か、また、相続(遺贈を含む。以下同じ。)により取得した者が誰か等によって、適用を受けるための要件や受けられる減額内容が異なります。

 ご相談の場合は、お母様が居住されているご自宅を相続したと仮定したケースであることから、「特定居住用宅地等」に該当するかどうか、の判断を行います。

2.ご相談のケースにおける「特定居住用宅地等」の要件

 被相続人が相続開始直前に居住していた宅地等について、被相続人の親族が相続により取得した場合、「特定居住用宅地等」に該当するか否の要件は、その取得者が誰かによって異なります。

 ご相談の場合は、被相続人の配偶者以外の親族が取得したケースです。

 この場合には、その取得者が相続開始直前から被相続人と同居していた親族(以下、同居親族)か否かによって、要件が大きく異なります。

 特にご相談のケースで重要なのは、ご相談者自身の持ち家がある、ということです。

 ご相談者も理解されているとおり、同居親族でない取得者が相続開始時点で自己の持ち家に居住していれば、「特定居住用宅地等」の要件を満たすことができません。またこれは、相続開始前3年以内に自己あるいは自己の配偶者等一定の関係者の持ち家に居住していた場合なども同様です。

 他方、同居親族の場合には、この持ち家の要件はありません。

 そのためご相談者は、住民票を実家に移して同居親族となろうとしているのだと思われます。

 しかし同居親族は、住民票に記載のある住所地が一緒、という形式的なものでは判断せず、取得者が実際どこに住んでいたのか、実態の証明が必要になります。

 よって、単に住民票を実家に移しただけでは同居親族に該当せず、このままでは小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。

 なお、実際にはお母様とご相談者が同居しており、住民票のみ移動できていないというケースの場合は、ご相談者がお母様の自宅に同居しているという実態が証明できれば、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

 「特定居住用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用ができれば、宅地等の相続税評価額を最大8割減額することができます。

 実際に適用を受けようとする場合には、上記以外にも様々な要件が存在しています。事前の対応を含めた相談は、当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 措法69の4、国税庁HP:「№4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

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