お知らせ

文書作成日:2020/11/20

 借地権の設定範囲が具体的に特定されていない土地を相続しました。どのように対処すればよいのでしょうか?

 一筆の土地の一部に借地権が設定されている土地を相続しました。引継いだ借地権設定契約書には借地面積の記載はありましたが、具体的な範囲等は特定されていませんでした。この借地権設定契約書は平成元年に締結されたものです。
 今後、どのように対処すればよいのでしょうか?

 借地人との間で、一筆の土地のどの部分に借地権が設定されているか、確認及び特定する必要があります。また、土地の図面等に借地権設定の範囲を具体的に明示した上で、覚書等の書面を取り交わすことをお勧めします。

1.土地の一部を賃貸した場合

  「一筆の土地」とは「土地登記簿上の一個の土地」をいい、「借地権」とは「建物を建てるために地代を払って他人から土地を借りる権利」をいいます。

 一筆の土地全部を賃貸してそこに借地人の建物が建てられる場合は、当該土地そのものが借地権設定の範囲となるため、特段の問題は生じません。しかし、ご相談のような一筆の土地の一部を賃貸した場合は、当該土地のどの部分に借地権が設定されているのかを特定する必要があります。

2.借地権設定範囲の特定

 借地権設定範囲の特定は、建築当時の建物図面や設計図書等の資料で確認したり、客観的に建物の利用に必要な範囲を考慮したりした上で現況の利用状況も鑑みて判断することになります。

 その他に、建物と一体と考えられるような庭や附属建物等の敷地も借地権設定の範囲として考慮する必要があります。また、上記の内容に加え、建ぺい率等の建築基準法の規制を考慮して算出した面積と当該契約書上の借地面積とで相違があれば、それらも勘案し判断する必要があります。

 借地面積の相違が生じた場合には、借地人が支払う地代等にも影響しかねないため、借地人との間で諸条件を明確にし、かつ、借地権設定範囲を具体的に明示した土地の図面等を添付の上で、覚書等の書面を取り交わすことをお勧めします。

3.借地権設定範囲が特定できた後の注意点

 借地権設定範囲が特定できた後に注意すべき項目としては、借地権設定契約が平成4年8月1日より前に締結された契約か否かを確認する必要があります。なぜなら、平成4年8月1日より前に締結された契約か否かで、借地契約の当初の存続期間・更新後の存続期間について適用される法律が異なり、ルールに違いが生じるためです。

4.ご相談のケース

 ご相談の案件は、借地権設定契約日が平成元年とのことですので、借地法(旧借地法)が適用されることになります。

 旧借地法では、堅固建物(鉄筋・鉄骨コンクリート造、石造等)か非堅固建物(木造等)かによって借地契約の当初存続期間及び更新後の存続期間が異なります。仮に借地期間を定めなかった場合、堅固建物の当初の存続期間が60年であるのに対し、非堅固建物は30年となります。また、更新後の存続期間についても堅固建物の存続期間が30年であるのに対し、非堅固建物は20年となります。

 建物が堅固な建物か非堅固な建物かは、借地権設定契約書に定められていますが、建物の種類・構造等の定めがないときは、一般的に非堅固な建物所有の借地契約とみなされます。

 一方、現行の借地借家法は、旧借地法と異なり借地上の建物が堅固な建物か否かによって区別したルールは定められていません。同様に借地期間を定めなかった場合、借地契約の当初の存続期間は30年で、更新後の存続期間は20年となります(次以降の更新後の存続期間は10年)。

 上記以外の他に、建物が朽廃・滅失した場合や更新の拒絶に関して対応が異なるため注意が必要となります。

 旧借地法及び借地借家法ともに借主を保護するための法律であることは共通しますが、旧借地法の方が借主側に有利な内容項目が多いため、今回の見直しを機に借地人に対して、借地借家法に則った契約への変更を打診されるのもよいと考えられます。また、将来、借地権が設定されている土地(底地)を第三者へ売却することが想定される場合には、土地家屋調査士等の専門家に相談の上、借地権の範囲に符合するよう境界標等を設け分筆し、別個独立した土地に分けておくことも有用な対処法となります。

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文書作成日:2020/11/05

 限定承認をしたときの生命保険金の受け取りと相続税の課税について教えてください。

 夫が亡くなりました。生前の夫は多額の借金を抱えていたので、相続を放棄しようと考えていたところ、知人から限定承認を勧められました。限定承認とはどのような制度なのでしょうか。
 また、夫は私が受取人の生命保険に加入していたので、受け取りの手続きをしたいと思っていますが、限定承認をした場合でも受け取ることはできますか?

  • 夫の資産:1,000万円
  • 夫の負債:4,000万円
  • 生命保険の契約内容:
  • 契約者(保険料負担者)=夫
  • 被保険者=夫
  • 死亡保険金受取人=配偶者(私)

 ご相談のケースで、ご主人の相続でご相談者が限定承認をした場合、生命保険金を受け取ることは可能です。

1.相続財産を引き継ぐ方法

 相続財産の引き継ぐ方法は、大きく「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つに分かれます。

  • 単純承認
    夫のプラスの財産(資産)もマイナスの財産(負債)もすべて引き継ぎます。
  • 限定承認
    引き継ぐ資産を限度として負債を引き継ぐ方法です。
  • 相続放棄
    夫の資産・負債いずれも全く引き継がない方法です。

2.限定承認と生命保険について

 民法では、受け取った死亡保険金は相続によって取得したものではなく、死亡保険金受取人の固有の財産とされています。

 そのため、ご相談のケースにおいて、ご相談者が限定承認したとしても、相続放棄をしたとしても、保険金受取人として保険金を受け取ることはできます。

 また、死亡保険金は、相続税法上ではみなし相続財産となります。相続人は受け取った死亡保険金について、一定の非課税制度を適用することができます。

 相続を放棄した場合には相続人とはなりませんので、当該非課税制度を適用できませんが、限定承認であれば相続人としての地位はありますので、適用することができます。

 なお、限定承認や相続放棄については、申立期限が決まっているなど一定の約束事があります。また、保険金だけでない課税関係の問題もありますので、相続財産の引継方法についてのお悩みは、当事務所へお気軽にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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