お知らせ

遺産分割協議ができない場合の相続登記

今回は相談事例を通じて、遺産分割協議ができない場合の相続登記の方法について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 私の父は10年前に亡くなりました。相続人は私と母と姉の3名で、遺産は自宅の不動産と預貯金100万円でした。父の遺産はすべて私が引き継ぎたいと思っています。
 しかし、亡くなった当時から現在まで、不動産の名義変更をすることなく、不動産の名義は父のままとなっています。

 相続登記義務化が始まったと聞き、早急に対応をしたいのですが、私の母は認知症のため、遺産分割協議をするには後見人の選任が必要といわれました。後見人を選任するには費用も時間もかかると聞きましたので、どうしたらよいか悩んでいます。相続登記の義務違反とならないための方法はありますでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 令和6年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続した人は、3年以内に登記をしなければなりません(不動産登記法76条の2)。しかし、ご相談の事例のように、相続人の中に認知症の方がいらっしゃる場合等には、遺産分割協議ができずに相続登記ができないといったことが考えられます。

A-2
詳細解説

 ご相談の場合、1つ目の方法として、ご相談者様とお姉様は「相続人申告登記」(不動産登記法76条の3)という手続きをとることで、義務を果たすことができます。ただし、お母様は、この手続きをすることができない状況と思われます。

 2つ目の方法として、「法定相続分での相続登記」をすることで相続登記の義務を果たすことができます。

 ご相談の場合、お母様が2分の1、ご相談者様とお姉様が4分の1の法定相続分となりますので、その内容で相続登記(所有権移転登記)をすることになります。この手続きは、相続人の1人からでも手続きができるため、お母様が認知症であっても登記をすることが可能です。

 ただし、ご相談者様のご希望である、ご相談者様がおひとりで所有者となる登記は、この時点ではできません。後日、お母様の成年後見人が選ばれ、成年後見人とご相談者様、お姉様との話し合いがまとまり、遺産分割協議が整った場合に、「所有権更正登記」をして、遺産分割協議のとおりの内容に「更正」することができます。

 従来から、法定相続分での登記の後、遺産分割の登記をすることは可能でしたが、令和5年4月1日より登記手続き方法が簡略化されました。

 例えば、ご相談者様が単独で不動産を取得するという内容の遺産分割協議が行われた場合、従来は、不動産を取得する方だけでなく、不動産を取得しない他の相続人の協力(登記申請書または委任状への実印の押印、印鑑証明書の提出)が必要でしたが、現在は、不動産を取得する方(ご相談者様)からのみの申請でよいということとなりました(令和5年3月28日法務省民二第538号通達)。

 また、登録免許税についても、従来は不動産の固定資産税評価額の0.4%により算出されましたが、不動産の個数1個につき1,000円となり、金銭的な負担も軽減されました。

 具体的なご事情により、どの方法を選択された方がよいかは異なりますので、詳細はお近くの専門家(司法書士)にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
まだ間に合う? 贈与税がかからない孫への教育資金の一括贈与

小学校へ入学する孫に、教育資金の一括贈与を2026年中に行おうと思います。教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は適用できますか?

Q
今月のご相談

 孫の小学校入学を機に、教育資金の一括贈与を検討しています。
 一度に渡しても一定額までであれば贈与税が非課税となる、と聞いています。これが今年(2026年)の3月末までと聞いていましたが、令和8年度税制改正で延長はされますか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 令和8年度税制改正の大綱によれば、現行の適用期限である2026年3月31日について、延長せずに終了することが記載されています。つまり、適用するには、2026年3月31日までに信託契約に関する手続きを終えておく必要があるでしょう。

A-2
詳細解説
1.教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは

 教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、子や孫などの教育資金に充てるために父母あるいは祖父母から一定の方法で資金の贈与を受けた場合に、1,500万円を限度(学校等以外の支払は500万円が上限)として贈与税がかからない制度です。

 主な特徴は、以下のとおりです。

① 金融機関等との一定の契約に基づく贈与であること
(具体的には、教育資金口座の開設等を行った上で、教育資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等に提出等するなど所定の手続きが必要となります)
②受贈者について、上記①の契約締結日において年齢が30歳未満、かつ、前年の合計所得金額が1,000万円以下であること
③非課税として認められるには、支払に充てた領収書等を金融機関等に提出する必要があること
④非課税として認められる支払使途は、学校等に対して直接支払われる一定のもの、学校等以外の者に支払われる教育を受けるための一定のものに限られていること
⑤年齢が30歳に達したなど、契約期間が終了した時点で残額がある場合には、その残額は贈与税の対象となること
⑥契約期間中に贈与者が死亡した場合で残額がある場合には、一定の場合を除き、相続税の対象となること
2.令和8年度税制改正の大綱

 上記1の制度(以下、本制度)は、2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」によれば、「延長せずに終了することとし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用できる」と記載されています。
 つまり、本制度の適用期限である、2026年3月31日をもって本制度が廃止されることとなります。この場合、適用期限までに拠出された金銭等については(つまり、同日までに契約締結をしていれば)、4月1日以降も本制度が適用できます。

 自由民主党から公表されている「令和8年度与党税制改正大綱」によれば、制度を延長しない理由として「これまでの利用実態や格差固定化の懸念、教育費の無償化や負担軽減の進展、NISAの拡充等も踏まえ」と述べられています。

 また、この廃止により確保された税収については、「高校教育等の振興方策の財源に充てる」とも記載されています。

 ちなみに、財務省の試算による本制度の減収見込額は、「令和8年度税制改正の大綱」によれば、170億円とされており、廃止されることでこの減収効果が将来的に消失するものと見込まれています。

 なお、家族などの扶養関係にある人同士で、生活に必要なお金や物をその都度渡した場合、それが普通に必要な範囲であれば、贈与税はかかりません。この点も考慮に入れながら、本制度の適用期限が迫っていることから、早急に利用を検討されるとよいでしょう。

 贈与税について詳しくお知りになりたい方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」「No.4405 贈与税がかからない場合
財務省HP「令和8年度税制改正の大綱
自由民主党HP「令和8年度与党税制改正大綱(PDF)

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
ページトップに戻る