高齢者が契約する一時払終身保険は、相続税対策としてどのような効果があるのでしょうか。
父(78歳)が銀行から相続税対策として生命保険を勧められ、よく理解しないまま契約手続きの約束をしてしまいました。現在、父は既往症があり生命保険に加入していません。今回、高齢者でも健康状態の告知なく加入できるといわれ契約することにしたようです。父の理解が乏しいため、契約手続きに長男である私も同席する予定です。相続が発生したときに相続税が非課税になると説明を受けたようですが、私もよくわかりません。
一般的に相続税対策としてどのような効果が期待できるのか、また、契約前に確認しておくことなどを教えてください。想定する父の法定相続人は、母(配偶者)、私(長男)、弟(次男)の3人です。
- 保険種類:一時払終身保険(円建て)
- 契約者:父
- 被保険者:父
- 死亡保険金受取人:私(長男)、弟(次男)
- 保険金額:1,500万円
- 一時払保険料:1,495万円
預金を一時払終身保険の保険料に一括して充当することで資産が生命保険に変わり、上手く設計すれば相続税の非課税枠が適用できます。お父様の資産が多く、他に加入する生命保険がない場合、非課税枠の確保は相続税対策として有効と考えられます。また、契約前に確認しておくことについては詳細解説をご参照ください。
亡くなった人が契約者、被保険者となっている生命保険で相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の計算上、みなし相続財産として相続税の対象となりますが、受け取る金額が「500万円×法定相続人の数」までは非課税(非課税枠)として扱われます。
今回の提案プランは、お父様が他に生命保険に加入していないことを前提に、想定されるお父様の法定相続人の数にあわせて非課税枠分の1,500万円で設定されたものと考えられます。
一般的に、下記の背景が明確なケースであれば、生命保険の非課税枠確保は相続税対策として有効と考えられます。
- お父様の資産が多く、保有状況から相続税の対象となることが見込まれる
- 他に非課税枠が適用できる生命保険に加入していない
契約にあたっては、主に次の点に注意、確認しておきましょう。
- 生命保険は預金と比べて流動性が低く、途中解約時の返戻金は払い込んだ保険料より少ないことが多いため、経過ごとに返戻金がどれくらいになるか確認しておく
- 契約手続き時に渡される「注意喚起情報」の内容をしっかり確認する
- 預金を保険料に充当することでお父様の手元資金が減るため、生活設計に支障がないか十分に検討しておく
- 保険会社の健全性を示す指標を確認しておく
- 契約手続き後にお父様の意思が急に変わったときに備え、クーリングオフの流れを確認しておく
- 法改正により期待した税対策効果が得られない可能性や、経済情勢や金利変動によって、相対的に生命保険の資産価値が下がる可能性についても理解しておく
また、おそらく今回のプランでは考慮済かと思われますが、次の点にも留意しましょう。
- 非課税枠を適用したい場合には、保険金受取人は相続人となる人(=非課税枠を適用できる人)になっているか確認すること
- 民法上、保険金は相続時の遺産分割の対象とならないため、誰を受取人とするか慎重に検討すること
高齢者の生命保険契約においては、理解不十分なまま手続きを済ませ、後日、取り消したい等のトラブルが多いといわれています。トラブルを避けるためにも、お父様の意思を確認し、同席するご家族の方も契約内容を一緒に確認していただくことをお勧めします。
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