お知らせ

 今回は相談事例を通じて、相続した土地の抵当権を抹消するための、清算人の選任申立についてご紹介します。

 今般、父から土地を相続しました。相続登記は完了して私への名義変更は済ませたのですが、祖父がこの土地を所有していた頃に設定された、ある会社が抵当権者となった古い抵当権が残っていました。抵当権の抹消の依頼をするため、その会社の登記事項証明書を取得したところ、登記記録に破産宣告、20年前に破産終結との記載のある消滅した会社でした。
 この抵当権を抹消したいのですが、どうすればよいでしょうか。

 解散、清算結了した会社が抵当権者であり、抵当権抹消の登記義務のみが履行されていない状態の場合は、解散・清算結了した会社に清算人として記載されている者と共同して抵当権抹消登記申請が可能です。しかし、破産終結した会社は代表者がいない状態となっています(※)ので、このような共同での登記申請ができないということになります。
 そのため、会社法に基づいて裁判所に対して当該会社の清算人選任申立をし、裁判所に抵当権抹消の登記義務者として、あなたと共同して登記申請の当事者となる清算人(代表者)の選任決定(会社法478条2項)をしてもらう必要があります。

 その清算人選任申立をすることができるのは、利害関係人に限られていますが、あなたと破産会社は抵当権設定者と抵当権者の関係に立つので、その点において利害関係があり、自ら裁判所へ清算人選任申立ができる、ということになります。なお、申立をする裁判所は、破産会社の本店を管轄する地方裁判所になります。(会社法868条1項)

 裁判所により清算人が選任されれば、抵当権抹消登記申請をする当事者が揃うので、抵当権抹消の合意(や弁済)が破産終結前にあった場合には、抵当権抹消登記申請の手続きに進むこととなります。

 ご注意いただきたいのは、あなたの意向としては、当該申立により選任された清算人と共同して抵当権抹消登記申請をすることとなりますが、当該清算人は会社の代表者として選任され活動するため、必ずしもあなたの意向どおり抹消登記の手続きが進む保証はないということです。例えば、清算人の調査などにより、抵当権の被担保債権が弁済されていないことが判明した場合など、抵当権抹消のために弁済を請求するなどの可能性を否定することはできません。

 このようになる可能性を低減させるため、ご相談のような場合には、お近くの司法書士や弁護士等の専門家へご相談をされることをお薦めします。

(※)取締役は破産により当然取締役の地位を失うのであって、同時破産廃止決定があったからといって、すでに委任関係の終了した従前の取締役が商法417条1項本文(現:会社法478条1項)により、当然清算人となるとは解し難くこのような場合には商法417条2項(現:会社法478条2項)に則り、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任すべきものである。(最判昭和43・3・15民集22・3・625)

 

 

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